《磐梯山・猪苗代湖周辺景観形成重点地域基本計画》

 

 

1 景観形成重点地域における景観形成に関する基本的かつ総合的な方針に関する事項

(1)重点地域の景観形成の基本目標

  磐梯山・猪苗代湖周辺景観形成重点地域(以下「重点地域」という。)の美しい景観の保全と創造を図るため、次の3つの基本目標を定める。

@ 山と湖への眺望に配慮した景観づくり

地域のシンボルである磐梯山及び猪苗代湖、檜原湖等への眺望の確保と保全を図ることを基本として、主要幹線道路沿道、観光・商業施設集積地等の視点場及びその周辺地域において、眺望に十分に配慮した景観形成を図るものとする。

A 豊かな緑を守り育てる景観づくり

磐梯山山麓の樹林、猪苗代湖湖岸の湖畔林、集落地の屋敷林等、重点地域の景観を特徴づける豊かな樹林及び緑地の保全・育成に努めるものとする。

B        国際的観光地にふさわしい魅力ある景観づくり

福島県を代表する景勝地として、内外から多くの来訪者があることから、優れた自然景観と調和した、国際的観光地にふさわしい魅力ある景観づくりを進めるものとする。

(2)重点地域の景観形成の基本方針

重点地域の景観構造と地域的なまとまりを踏まえ、猪苗代景観形成ゾーン、磐梯・河東景観形成ゾーン、裏磐梯景観形成ゾーンの3つのゾーンに区分し(別図略)、各ゾーンごとに景観形成の基本方針を定める。

@        猪苗代景観形成ゾーン

猪苗代景観形成ゾーンは、磐梯山と猪苗代湖への眺望景観を特色とする地域である。このゾーンにおいては、磐梯山及び猪苗代湖への眺望の確保と保全を図ることを基本とするとともに、その眺望景観と広々とした田園景観や地域の多様な樹林、緑地の保全に配慮した景観形成を図るものとする。

● 磐梯山の雄大な景観の保全

間近に全景を仰ぎ見ることのできる磐梯山への眺望の確保と保全に配慮した景観形成を図る。特に磐梯山山麓の傾斜地においては、樹林の保全、育成に努めるとともに、磐梯山の優美なスカイラインを損なうことのないよう行為の適切な誘導に努め、優れた自然景観の保全を図る。

● 広がりのある猪苗代湖の湖岸景観の保全

湖岸線の連続性の保全と湖岸の樹林の保全と育成に努め、猪苗代湖の広がりのある湖岸景観の保全を図る。

● 地域の骨格をつくる良好な沿道景観の形成

幹線道路である国道49号沿道、国道115号沿道では、磐梯山、猪苗代湖への眺望に配慮するとともに、沿道の樹木、緑地の保全、周辺の自然景観と調和する町並みづくりによって、良好な景観の形成を図る。

● 豊かな田園・集落地景観の保全と育成

平野部の田園、集落地では、集落を取巻く屋敷林と農地の保全と育成を図るとともに、そのたたずまいを活かした景観形成を図る。

● 長瀬川の水辺景観の保全

重要な水辺景観である長瀬川のふちどりを形成している河畔林の保全と育成を図るとともに、河川の自然環境の保全に努める。

● 国際的観光地にふさわしい景観デザインの推進

志田浜、三城潟等の観光・商業施設集積地では、磐梯山及び猪苗代湖への眺望の保全、周辺の樹林との調和に配慮しながら、国際的観光地にふさわしい全体として調和の取れた良質で魅力的な施設づくりによる景観形成を図る。

A 磐梯・河東景観形成ゾーン

磐梯・河東景観形成ゾーンは、磐梯山と猫魔ヶ岳への眺望景観を特色とする地域である。このゾーンにおいては、磐梯山、猫魔ヶ岳への眺望の保全を図ることを基本とするとともに、その眺望景観と沿道の田園景観や緑地の保全に配慮した景観形成を図るものとする。

● 磐梯山・猫魔ヶ岳の雄大な景観の保全

磐梯山、猫魔ヶ岳への眺望の確保と保全に配慮した景観形成を図る。

● 緑豊かな沿道景観の形成

国道49号沿道、県道会津若松・裏磐梯線沿道及び県道猪苗代・塩川線沿道では、沿道の樹木、緑地の保全による緑豊かな沿道景観の形成を図る。また、沿道景観を阻害する要素の改善に努めるとともに、背景となる樹林と調和する施設づくりによる景観の形成を図る。

● 国際的観光地にふさわしい景観デザインの推進

強清水等の観光・商業施設が立地する場所においては、磐梯山、猫魔ヶ岳への眺望及び周辺の樹林との調和に配慮しながら、良質で魅力ある施設づくりによる景観形成を図る。

B 裏磐梯景観形成ゾーン

裏磐梯景観形成ゾーンは、磐梯山と檜原湖への眺望景観を特色とする地域である。このゾーンにおいては、磐梯山及び檜原湖への眺望の確保と保全を図ることを基本とするとともに、その眺望景観と沿道における多様な樹林、緑地の保全に配慮した景観形成を図るものとする。

● 磐梯山の雄大な景観の保全

磐梯山への眺望の確保と保全に配慮した景観形成を図る。

● 檜原湖等の水辺景観の保全

檜原湖等への眺望の確保と湖岸線の保全を図るとともに、湖畔の樹林の保全と育成に努める。

● 緑豊かな沿道景観の形成

国道459号沿道、県道会津若松・裏磐梯線沿道及び県道米沢・猪苗代線沿道では、沿道の樹林の保全による緑豊かな景観の形成を図る。また、沿道景観を阻害する要素の改善に努めるとともに、背景となる樹林と調和する施設づくりによる景観形成を図る。

● 国際的観光地にふさわしい景観デザインの推進

檜原湖船着場、剣ヶ峯一帯、毘沙門沼周辺等の観光・商業施設集積地では、磐梯山及び檜原湖への眺望の保全、周辺の樹林との調和に配慮しながら、国際的観光地にふさわしい全体として調和のとれた良質で魅力的な施設づくりによる景観形成を図る。


2 景観形成重点地域における景観形成のための基準の策定に関する事項

景観形成基準の策定に当たっては、地域の優れた自然景観が重点地域の景観の骨格をなすという全体の秩序を基本とし、行為地と周辺との関わりに配慮しながら、各行為によって本地域の景観の大きな特色である眺望景観と緑や水辺の景観が損なわれることのないよう配慮するものとする。行為ごとの景観形成基準の基本的な考え方は、次の通りとする。

(1)建築物及び工作物の新築等

磐梯山、猪苗代湖、檜原湖等への眺望を妨げないよう配慮するものとする。また、地域の基調となっている自然景観等を大きく変化させる行為を避けるとともに、樹林及び樹木の保全に配慮した景観形成を図るものとする。特に、磐梯山の山麓の傾斜地は、視対象の一部を構成し、磐梯山全体の眺望にかかわることから、緑豊かな樹林の保全、育成に配慮するものとする。

さらに、観光・商業施設の集積地においては、国際的観光地にふさわしい質の高い景観デザインの展開に努めるものとする。

(2)土地の区画形質の変更

地域の優れた自然景観を大きく変化させることが予想される場所、又は磐梯山等への眺望を妨げることが予想される場所における土地の区画形質の変更は、できる限り避けるものとする。やむを得ず行う場合は、地形の改変と樹林及び樹木の伐採を最小限にとどめるとともに、行為地の積極的な緑化に努めるものとする。

また、法面及び擁壁の形状、素材等については、周辺の自然景観との調和に十分配慮するものとする。

(3)鉱物の掘採又は土石の類の採取

地域の優れた自然景観を大きく変化させることが予想される場所、又は磐梯山等への眺望を妨げることが予想される場所における掘採又は採取は、できる限り避けるものとする。やむを得ず行う場合は、遮へい等により目立たせない工夫等を行い、周辺の景観に与える違和感を最小限に抑えるよう努めるとともに、行為終了後、速やかに緑化等の修景措置に努めるものとする。

(4)屋外における物品の集積又は貯蔵

できる限り屋外における物品の集積は避けるものとする。やむを得ず行う場合は、地域の優れた自然景観を大きく変化させることが予想される場所、又は磐梯山等への眺望を妨げることが予想される場所における集積又は貯蔵は、避けるものとする。

また、集積地の周囲は、緑化による遮へい等により目立たせない工夫等を行い、周辺の景観に与える圧迫感や違和感を最小限に抑えるよう努めるものとする。

(5)木竹の伐採

本地域の自然景観の基調となっている磐梯山山麓等の樹林をはじめとして、長瀬川の河畔林、猪苗代湖の湖畔林、集落地における屋敷林、地域の目印となっている沿道の樹林及び樹木等の伐採は、できる限り避けて保存を図り、景観形成上の積極的な活用とその育成に努めるものとする。やむを得ず伐採する場合は、沿道を避け、その規模は必要最小限とするものとする。


3 景観形成重点地域における景観形成を推進するために必要な施策に関する事項

(1)県を主体とした景観形成事業の推進

@ 景観形成に資する公共事業の推進

県は、市町村その他関連行政機関との連携を図り、整合性のとれた景観形成に資する事業を推進するものとする。特に、道路、河川、公園、公共建築物等の公共施設の整備等に当たっては、本重点地域における景観形成基本方針及びゾーン別景観形成方針を踏まえるとともに、公共事業等景観形成指針等に基づき、地域の景観形成の先導的な役割を果たすよう努めるものとする。

また、本地域の優れた景観を眺望できる快適な視点場の整備、地域の景観に配慮した道づくり、地域の目印となっている樹木や歴史的な建築物等の保全、電線類の地中化等にも積極的に取り組むものとする。

A 他の制度の活用

磐梯朝日国立公園区域内においては、自然公園法に基づく国立公園審査指針及び国立公園管理計画によって行為の規制と誘導が行われていることから、今後ともその連携を図りながら景観形成を推進するものとする。猪苗代都市計画区域等においては、都市計画法に基づく景観に関連する制度との連携に努める。

さらに、屋外広告物条例に基づく第一種特別規制地域等の指定や広告景観整備地区の指定など、屋外広告物条例との連携に努めるものとする。

B 景観形成に対する支援等

本地域において地域に根ざした景観形成を積極的に推進するため、県は関係市町村における景観形成施策に対する支援及び地域住民、事業者の景観形成に資する取り組みに対する支援を行うものとする。

(2)身近な景観形成の推進

@ 市町村における景観形成施策の推進

市町村においては、本地域における景観形成の方針等を踏まえた地域的な取り組みと、地域住民等への意識啓発を含めた身近できめ細かな景観形成施策の推進が期待される。

特に、猪苗代都市計画区域における猪苗代駅周辺及び川桁駅周辺の用途地域においては、本重点地域の表磐梯・猪苗代景観形成ゾーンの景観形成の方針を踏まえ、背景となる自然景観と調和した町並み景観の形成が望まれる。また、恵日寺周辺においては、地域の歴史的な環境を活かした景観形成が期待される。

A 地域住民及び事業者による景観形成の推進

地域住民及び事業者は、景観形成を推進するための担い手として、それぞれの地域における身近な取り組みや企業活動を通して地域に根ざした景観形成に取り組むとともに、景観形成住民協定の締結をはじめとする景観形成に資する自主的なルールづくりが望まれる。

 

 

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