答え 企業に複数の労働組合がある場合には、全ての労働組合を平等に取り扱う必要があり、合理的な理由もなく、一方の労働組合に対してのみ組合事務所を貸与することは、他方の労働組合に対する不当労働行為(支配介入)に当たる場合があります。 解説 1 組合事務所の貸与 使用者が労働組合の運営のために経理上の援助を与えることは不当労働行為として禁止されていますが、最小限の広さの事務所の供与は除かれています(労働組合法第7条第3号)。 もっとも、使用者は、労働組合に対し、当然に会社の施設を組合事務所等として貸与しなければならないものではなく、貸与するかどうかは原則として使用者の判断に任されています。
2 中立保持義務と支配介入 使用者には、すべての場面で各労働組合に対し中立的な態度を保持し、その団結権を平等に尊重しなければならない義務(中立保持義務)があります。つまり、使用者は、それぞれの組合の活動や方針によって、一方の組合を好ましいものとしてその組織の強化を助けたり、他方の組合の弱体化を図るような行為をすることは許されません。 したがって、同一企業内に複数の労働組合が併存しており、既に一方の労働組合に対して組合事務所を貸与している場合には、いくら貸与するかどうかは使用者の判断に任されているとは言っても、貸与しない合理的な理由がない限り、他方の労働組合に対しても貸与しなければなりません。 判例でも、「使用者が、一方の組合に組合事務所等を貸与しておきながら、他方に対して一切貸与を拒否することは、そのように両組合に対する取り扱いを異にする合理的な理由が存在しない限り、他方の組合の活動力を低下させその弱体化を図ろうとする意図を推認させるものとして、労働組合法第7条第3号の不当労働行為事件に該当すると解するのが相当である」としています(判例1)。また、一方の組合の人数が少ないことが、貸与を拒否する正当な事由にはならないとする判例もあります(判例2)。ただし、使用者が貸与する組合事務所の大きさは、労働組合の規模などによって合理的に決められるべきでありますので、必ずしも既存の組合に貸与している事務所と同じ大きさでなければならないわけではないと考えられます。 判例○ 判例1:日産自動車事件(最高裁第一小法廷判決昭和62.5.8判時1247号131頁) ○ 判例2:全日本運輸関西地区生コン支部(灰孝小野田レミコン)事件(東京高判平成5.9.29労民集44巻4=5号789頁) |