カラーユニバーサルデザインガイド 色覚の仕組みについて紹介します
カラーユニバーサルデザイン(CUD)ガイド
色覚の仕組み
トイレに入ろうとして、こんなマークを見つけたら、右と左どちらに入りますか? 女性は左へ、男性は右へ…と、とっさのことなので、間違えて入ってしまう人も多いのではないでしょうか。 このように私たちは、日常生活の情報を無意識のうちに色に頼って判断しています。しかし、ある人の色の見え方と別の人の色の見え方は同じではないのです。色を使って情報伝達する場合には、さまざまな人たちへの配慮が必要になります。
色のバリア
より多くの人が快適に暮らせる社会づくりのために「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」が重要なキーワードとして定着してきました。 そのおかげで、障がい者やお年寄り、妊婦、外国人、子どもなどがこれまで感じていた不便なことが、少しずつ解消されてきています。 しかし、そうした中で「色」のために不都合を感じている人たちのことは、見過ごされがちでした。「色盲」「色弱」「色覚障がい者」などと呼ばれてきた人たちです。 色の見え方が異なることへの理解を深め、できるだけ多くの人に正確な情報を伝える「カラーユニバーサルデザイン」で色のバリアをなくしましょう。
色覚の仕組み
光が物体を照らし、そこから反射した光を目で受けることで、私たちは物を見ています。物によって反射する光の波長は異なり、それがその物の色の違いになります。 人間の目の網膜には、暗いときだけ働く桿体と明るいところだけで働く錐体の、2種類の視細胞があります。 明るいところで働く錐体には、赤・緑・青の3種類あり、それぞれが異なる波長の光を感じる役割を担っています。そしてその錐体が受けた刺激が大脳に伝わり、色を認識するのです。
色覚の違いと呼称
光を感じる錐体は、血液型のように生まれつきタイプが決まっています。一番多いのが赤緑青の3種類の錐体を持つタイプ(C型)で、日本人男性の約95 %,女性の99 %以上を占めます(下図参照)。 次に多いのが緑の錐体が無かったり感じる波長が赤に似通ったタイプ(D型)、その次が赤の錐体が無かったり感じる波長が緑に似通ったタイプ(P型)です。C・D・P型の3タイプで、ほとんどを占めます(その他にT型とA型が知られています)。 このガイドでは、人数が多いC型を「一般色覚者」と呼び、C型以外の色覚の持ち主を(C型を基準とすれば色認識に弱い点があることから)「色弱者」と呼びます。
【図】色覚のタイプによる色の見え方(クリックで拡大表示)
色弱者は身近にいます
日本人男性全体の5%が色弱者です。この数字は少ないように思えますが、男性が20人集まれば1人は色弱者ということですから、学校の1クラスに1人はいる計算です。 この比率で計算すると日本全国で色弱者は約300万人になります。身体障害者手帳の交付を受けている障がい者の総数が約456万人ですから、いかに多いかが分かります。
色弱者が見過ごされてきたワケ
色弱者であることは、第三者からは分かりません。その特性を隠しておきたいと思う人も少なからずいます。そのため、もし色弱者に見分けにくい配色が製品や施設に使われていた場合、たとえ色の見分けにくさに不便を感じることがあっても、それをクレームとして指摘するのでなく、自分にも見分けられるふりをしたり、不便を我慢して容認したりする傾向がありました。
カラーユニバーサルデザインの必要性
色弱者にとっての障がい(バリア)は、一般色覚者だけを念頭において色分けされた情報です。そのバリアを作らない色づかいをすれば良いのですが、その際、色弱者用・一般色覚者用の情報提供をしても解決にはなりません。自分の色覚特性に関係なく共に使える「カラーユニバーサルデザイン」が必要です。 カラーユニバーサルデザインは決して、「一部の色弱者のためだけの特殊なデザインで、一般の人にはむしろ見にくいもの」ではありません。「利用者の視点に立って使いやすさを追求したデザイン」です。これは、全ての人に価値あるものです。
色弱者以外への配慮
このガイドでは主にP型とD型の色弱者(一般に「赤緑色覚異常」などと呼ばれる人々)を念頭に書いています。しかし、色弱者以外にも色で不自由な思いをしている人は多数います。 例えば白内障患者の場合、クリーム色のフィルター越しに見ているようになるので、黄色と青の見落としが起こったり、彩度が低下するので、薄暗い所で微妙な色の違いが分かりにくくなります。 また弱視者の場合、視力の低下に加え、色の見え方やコントラストの程度などに配慮が必要になります。明度差が小さいものは特に見にくいので、はっきりした色づかいが求められます。 一般色覚者でも照明条件や使用状況によっては見分けにくい配色となる場合があります。どんな場面で使われるのかを考慮した色づかいが求められます。
色弱者が見分けにくい配色の例
右図のように、一般色覚者には見分けやすくとも、色弱者には見分けにくい配色があります。一方、一般色覚者が見分けにくい配色でも色弱者は見分やすい色の組み合わせもあります。配色をする際には、それらの特徴を考慮しましょう。
※この色覚シミュレーション画像は強度の色弱者の色の見分けにくさを表したものであり、実際に見えている世界を再現したものではありません。また色の見え方には個人差があります。
[目次]
色覚の仕組み
※このガイドで紹介している画像は、印刷物を前提に制作しているため、モニターでは正確な色を再現できません。正しくカラー調整を行った出力機でPDFデータをプリントすることをおすすめします。
このガイドは、色覚の個人差を問わず、できるだけ多くの人に見やすい「カラーユニバーサルデザイン」の習得を目的に作られています。