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中通り07(二本松市):二本松より愛をこめて(ハマナカアイヅ)

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年4月21日更新

 皆さんは、工芸品の「重み」を感じたことがありますか?

 何気なく日常生活の中に使っているコーヒーカップやお皿など、一見普通の日用雑貨でしかないかもしれないが、細かく見ていれば図案や構造はもちろん、ひびの一つまで匠の思いや窯元の情報などがしっかりと記されています。

 大堀相馬焼は、福島県浪江町の大堀地区一円で生産される焼き物です。走り駒の図案や青ひび、二重構造などといった特徴を持っており、歴史は深く、1690年の創業以来なんと324年もの歴史を誇っています。

 福島県の代表的な工芸品の現状を探るべく、私たち国際交流員は大堀相馬焼協同組合を取材し、会長の半谷さんが対応してくださいました。
大堀相馬焼の完成品・1 大堀相馬焼の完成品・2

 半谷会長の紹介によると、同じく「相馬焼」の名を冠した「相馬駒焼」は相馬藩主御用達の献上品だったのに対して、「大堀相馬焼」は庶民向けで親しまれたとのことです。

 しかし、大堀相馬焼協同組合は原発事故により避難を余儀なくされ、作陶ができなくなり、営業停止になりました。

 「ただの地震だったら、まだ状況を挽回できたかもしれない。しかし、原発事故の発生で我々の生活基盤そのものがなくなった。コミュニティを含めてすべてがなくなった。修繕のしようがない壊滅状態だった。」

 半谷会長が震災後経験した苦い思いを私たちに語りました。

  幸い、国や県内二本松市の協力を得て、二本松市内の工業団地に「陶芸の杜 おおぼり二本松工房」として再開しました。
陶芸の杜 おおぼり 二本松工房 浪江町から二本松市へ

 実は私もウィリアムくんも、以前仕事で通訳としてこの二本松工房に訪れたことがあり、ここで展示した陶器に魅せられていました。

 「正直、新しい工房が立ち上がるまで一番苦労した。国の援助で急ピッチに建てることができたことは本当に助かった。」

 半谷会長が工房の再開について、このように振り返った。

 この後、私達は大堀相馬焼(コーヒーカップ)の絵付け体験に挑戦しました。

 私は伝統を尊重し、大堀相馬焼の象徴の一つである「走り駒」(相馬藩の御神馬)の図案に挑戦しました。工房ではご丁寧に順番まで用意して頂いたので、久しく筆とは無縁の私でも難なく描けました(出来は悪いが)。
ご丁寧に順番まで明記されている 似てますか?

 一方、ウィリアムくんはニュージーランドの先住民であるマオリ族の模様を描き上げました。なるほど、和洋文化の融合ってわけですね。
ニュージーランド先住民・マオリ族の模様 できました!

 最後に、半谷会長に大堀相馬焼の現状と展望についてお聞きしました。その内容は、意外なものでした。

 半谷会長によると、新しい工房ができてから、日本全国から注文が殺到していました。それは震災復興に伴う「特需」だと分かりながら、各窯元の職人たちは全力で再生した大堀相馬焼を焼き続けました。ところで震災後の4年目となる今年になって、以前のように大口な注文は一気に減りました。

 「ずっと前から分かっていたことだから、これからは地道にやって行くしかない。」

 多少残念な思いをしたが、それよりも「地道にやっていく」という言葉に彼をはじめとする大堀相馬焼の職人たちの不屈な信念を感じました。

 その不屈な信念こそ、大堀相馬焼の「重み」だと思います。
半谷さんありがとうございました!

 二本松より愛をこめて、大堀相馬焼の職人たちは、今日も伝統を守り続けています。

(投稿者:徐)

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