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地球探検 アルゼンチン共和国 高山尚之隊員 7

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

地球探検

第7回 私の『衣食住』inオベラ -1- ~受け継がれる日本の食文化~

    豆腐は『買う物』―と思っていた。昔は、豆腐屋が、家々に売りに来ていた。今や、「2丁100円」で店頭に並んだり、こだわり豆腐が、高値で売られたり。しかし、日系人にとって、豆腐は家で『作る物』だった―。

    先日、いつもわけてもらう日系3世の家で、豆腐作りに初挑戦。一晩、水につけた大豆を、ミキサーにかけ、熱湯に入れる。布でこし、おからと豆乳に分ける。そして豆乳には、薬局で購入した「にがり」。本来は、微量を「おなかの調子を整える薬」として使うという。キロ単位で注文するので、驚かれるそうだ。にがりを加え熱していくと、少しずつかたまりが…。それを型に入れ、しばらく待つと、はい、「手作り豆腐」のできあがり!いっしょに作ったせいか、いつもより、さらにおいしい気が?

    アルゼンチンの一般家庭の食事は、主に西欧風。国内で米も生産され、細長いインディカ米や日本米に似たものなど多種類。キロ200円前後。こちらでは決して安くはない。でも、塩を少し入れて炊いた白ご飯、リゾットやマリネ風サラダなどの米料理が、食卓にのぼる家も多い。わが家でも毎日ガスで炊く。

    肉は安くてうまい。では、魚は?オベラの店には、いつ冷凍したのか見当もつかない状態の魚が少し。貝類は皆無。日常的に魚介類を食べる家は少ないそうで、肉と比べ値段はかなり割高。

    そんな中、隣の市に住む日系人が、2か月に1度、チリ産の生(なま)サーモンを配達してくれる。さしみで食べる。絶品!でも、たまに食べるさしみだけでは、さぞや和食が懐かしいのでは?いやいや、心配ご無用。八百屋の店先では、春にはたけのこ、冬には大根、白菜。しょうが、長ネギ、日本かぼちゃは一年中。野菜は何でも安い。秋にはアボカドを「わさび醤油で」が、わが家の定番。さらに豆腐以外にも、各日系人家庭ご自慢の「自家製」がいっぱい!納豆、こんにゃく、梅干、らっきょう漬。大福、水ようかん、かりんとう。庭先の畑には、ゴボウ、さといも、山芋、からし菜、ニラ、ゴーヤ、みょうが、オクラ、モロヘイヤ、まだまだある。その数の多さには驚く。いつもおすそわけいただく旬の野菜に感謝。「食べたいから、何でも自分で作るんだよ、昔っから。で、この前あげた、みそとしょうゆ、まだあるかい?」。にっこり笑うおばちゃんの顔に、遠い異国の地で生き抜いてきた力強さを感じた。

しぼり機 作業風景

おからと豆乳とに分ける作業風景。写真中央の「しぼり機」は日系人の仲間からゆずり受けたものだ。大豆をミキサーにかける以外は、すべて手作業。大豆5キロ分で、作業開始から、できあがりまで約3時間。

(日系社会シニア・ボランティア 日本語教育 高山 尚之)