ふくしま住宅建築賞
ふくしま住宅建築賞の概要
(公社)福島県建築士会では、住まいに対する県民のニーズと社会的要請に応えるべく、地球環境にやさしく、地域の周辺環境に調和し、美しい景観の形成に寄与するとともに、安全で安心で快適な住まいづくりに貢献した方々を表彰することにより、ふくしまらしい住まいづくり並びに魅力あるまちづくりの意識の醸成を図ることを目的に、「ふくしま住宅建築賞」を実施しています。
第22回からは、「ふくしま型の住まいづくり」(※)に対する意識の醸成を図り、住まいの文化の向上に寄与しているものに対して、「福島県知事賞」を贈ることになりました。
※ふくしま型の住まいづくりとは
住まいに関わる地域の方々の協働による地域資源を生かした良質な住まいづくり
今回(第24回)の募集期間は終了しました。
詳しくは(公社)福島県建築士会のホームページをご覧ください。
表彰式の様子(第24回)
令和元年6月21日(金)に白河市の白河文化交流館「コミネス」において、「ふくしま住宅建築賞」(第24回)の表彰式が行われました。
加藤保浩県南建設事務所長から「福島県知事賞」を授与される設計者の本田正典氏
福島県知事賞受賞作品(第24回)
◆Hさんの家
設計者 : 本田 正典 氏
施工者 : 株式会社 斉藤材木店
技能者 : 大内 和男 氏
建築主 : 堀越 幸一 ・ 美保 氏
リビングよりデッキ-庭を眺める 西より玄関ポーチをみる
【講評】
田村市船引町。畑と緑に囲まれた小道を、車に揺られながら進むその奥に建物はあった。椹(サワラ)に包まれた平屋の住宅は陽の光でほのかに輝き、品があり美しい。無塗装ですと話した施工者は少し自慢げに見えた。シンプルかつ生活動線もよく整理された平面計画で、パブリックな部分とプライベートがきちんと区別されている。座ったときにちょうどいい高さの窓、椅子の高さや段差の設定など高さ方向の変化や、間接照明の柔らかな光など、図面では表現しづらいところに対してもきちんと計画がなされていた。また、設計者は小高い丘の上に建つ立地条件を見事に活かし都心から里帰りをされた施主へ豊かな時間の過ごし方を提案している。風景画を切り取ったようなリビングからの眺め、遠景に望む桜と磐越道、そよぐ風、風鈴の音、薪ストーブ、そして星を眺めるお風呂…その全ては都心では得られなかった最高の普通である。
【設計者コメント】
この家は夫婦で棲む家です。
夫の定年を期に夫の故郷に帰ってきました。高齢の両親の家の隣に建てました。ここは、小さな農村風景の中の少し高台にあります。その高低差と建物の雁行により、生活空間は庭へと繋がり、その先にある田畑や山も取り込み、プライベートで開放的な場所です。
室内も「広がり間取り」により、引き戸で使い勝手を変え、温度差の少ない家族との関わりを感じ生活する空間です。構造は伝統工法で、その美しい加工も出し、豊かな空間です。材料は近くにあるものをできるだけ使い、大工さん、建具屋さん、左官屋さんなど職人さんの手で造ってもらいました。それら浴室・流し台など手に馴染む温かいものですが、そこで住み手が、それを楽しみ、折り合いをつけて生活することが大切です。この家は、周りの環境や人との関わりの中で、人としての時間を感じ過ごす「本当の普通の家」で、住み手、造り手が、いっしょに造った家です。