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【労働判例の紹介】平成26(行コ)15号 公務外認定処分取消請求訴訟

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成26(行コ)15号 公務外認定処分取消請求事件

(東京高裁 平成26年4月22日判決)

◯ 公務のみならず日常生活にも存在する一般的危険が現実化した場合には、他に公務起因性を認める事情が存しない限り、「公務に内在しあるいは随伴する危険の現実化」には当たらないとした事案

事件の概要

 Aが薬剤師として勤務していた公立Y病院薬剤部では、勤務時間外に必要となる調剤等のために、6日に1回程度の頻度で勤務時間外出勤を割当てていた。
 Aは、休診日に、勤務時間外出勤として午前8時半頃出勤し、調剤等の業務に従事していたが、午後3時頃に薬局内トイレで倒れているところを発見され、その後死亡が確認された。死因は心筋梗塞による急性心不全であり、発症から死亡まで約1時間であった。
 薬局内トイレは、平日の勤務時間内であれば職員が約16分に1回程度使用するが、当日はAのみが使用していた。なお、Aは1日6、7本の喫煙習慣があり、職場健康診断では糖尿病が疑われる状態であり、半年前頃から妻Xや病院職員に対し狭心症と思われる自覚症状を訴えていた。
 公務員災害補償基金はAの死亡について「公務災害ではない」と認定したが、Xは「本件トイレは、休診日の出番制勤務時には高度に孤立・隔離され、Aが倒れていることの発見が遅れ、発症した心筋梗塞に対する治療が相当程度遅れるような客観的環境であり、そのために適切な治療を受ける機会を喪失したことが、公務に内在し随伴する危険の現実化といえる」と主張して、「公務災害ではない」とした認定の取消を求めて提訴した。

判決要旨

 第一審は、「Aの発見や治療の遅れは、本件トイレ以外の場所、自宅やその他のトイレ等においても発生する可能性があり、日常生活にも存する一般的危険というべきで公務に内在し随伴する危険とみることはできない」として公務起因性を否定した。
 第二審も一審判決を引用して維持したうえ、「公務のみならず日常生活に存在する一般的危険については、それが現実化したとしても、他に公務起因性を認める事情が存しない限り、公務に内在しあるいは随伴する危険の現実化には当たらないと解するのが相当である」としてXの請求を棄却した。

  ※本件は上告された。

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1090(2014.7.1)5~20頁

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