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【労働判例の紹介】平成24(ワ)2075号 損害賠償請求事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成24(ワ)2075号 損害賠償請求事件

(大阪地裁 平成25年6月6日判決)

○ 上司からの原告Xに対する暴行や支配的行為は、業務上の指導や必要性などの観点から正当な理由は認められず、Xに対する不法行為を構成するとされ、上司の不法行為はY社の業務執行の一環であると認められた事案

事件の概要

 美容器具販売代理店を業とするY社の営業部に勤務していた原告Xが、直属の上司であるY1から、Xの借金の内容や返済状況の確認のためXの財布及び通帳の中身を点検されたり、胸部を拳で殴るなどの暴行を受けたり、「預かる」と称して運転免許証や携帯電話を提出させられるなどの支配的行為を受けたとして、Y1及びY社(以下、Yらという。)に対し損害賠償を求めた事案である。

判決要旨

 大阪地裁は以下のとおり判示し、Yらは損害賠償責任と使用者責任を負うと認めた。

 Yらは、Y1の行為は、金銭にルーズな性格から業務上の不始末を含め問題を多発させていたXに対する指導監督として正当であると主張する。しかし、そもそも使用者が従業員に対し所持品検査を行うことは、業務上の不正防止等、企業の経営維持にとって必要とされる場合であっても当然に適法視されるものではなく、それを必要とする合理的理由があって、就業規則等の根拠に基づき、一般的に妥当な方法と程度で、職場の従業員に対し画一的に実施されるなどの要件を満たすことが必要と解される。ましてや、使用者といえども、従業員の私的領域にわたる指揮監督権を有するものではないことは当然であって、たとえ私生活面での規律を正すことが業務の改善に資することが期待されるとしても、そのような目的で所持品検査を行うことが正当化される余地はない。
 Yらは、退職の意思を表明していたXから運転免許証や携帯電話を提出させたことは、引継業務させるべく出社を確保する必要から執った措置である旨主張するが、Xの財産権の対象である私物を占有することで生活への支障を生じさせて出社を確保するような措置は、およそ社会通念に照らして許容されるものとはいえない。
 Y1のXに対する一連の行為は、Xに対する業務上の指導や必要性などの観点から正当な理由があったとは認められず、Xに対する不法行為を構成するというべきであり、Y1は民法709条に基づく損害賠償責任を負う。いかにXの勤務状況に問題があるとしても、暴行やそれに準ずる粗暴で威嚇的な言動は、業務上の指導としての許容範囲を超えていることは明らかである。
 Y1のXに対する不法行為は、いずれも上司としての立場から部下に対する指導と出社を確保するという業務上の必要から行ったこと、Y社においては、これに限らず、机を叩くなどの粗暴な態様による業務指導や、自宅の鍵を提出させるなど従業員の私的領域にまで介入する行為が疑問視されることなく容認されていたことが認められ、これによれば、Y1の不法行為はY社の業務執行の一環と認めるのが相当であり、Y社は民法715条に基づき使用者責任を負う。

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1082(2014.3.1)81~87頁

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