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【労働判例の紹介】平成23(ワ)23020号 賃金請求事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成23(ワ)23020号 賃金請求事件

(東京地裁 平成25年10月24日判決)

○ 労働者性の有無は使用従属関係の有無によって判断されるところ、使用従属性の判断に当たっては、(1)指揮監督下の労働といえるか否かについて、仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無、代替性の有無等に照らして判断され、(2)報酬の労務対償性について、報酬が一定時間労務を提供していることに対する対価といえる場合には、使用従属性を補強するものとされ、(1)、(2)の観点のみでは判断できない場合には、(3)事業者性の有無、専属性の程度等が検討されるとされた事案

事件の概要

 原告であるX1からX22(以下「Xら」という。)は、高圧ガスの配送及び保安サービス業務を目的とするY社とLpガスボンベの配送及び保安サービスの業務に従事する配送員としての契約(以下、「本件契約」という。)を入社の際に締結した。
  XらはY社との間で本件契約を締結する際、「業務委託契約書」、「保安業務委託契約書」を作成し、平成15年10月26日以降には液化石油ガス容器配送業務を内容として、就業時間、月給22万円等を定めた「雇用契約書」を作成し、毎月、給与明細書を交付していた。また、Y社はXらの配送費売上げの中から、車両代、燃料代、車両修理費等の車両経費及び管理費を差し引き、これが22万円を超えるときは歩合給として月給に上乗せして支払う一方、22万円に達しないときは、その不足額を翌月以降の配送費売上げから差し引くなどをしていた。
  他にも、Y社は、平成21年1月以降、Xらに対し業務用携帯端末でLpガスボンベの配送先と配送本数を配信しており、一度配信された配送先については個別に配送を断ることはできなかった。
  本件は、XらがY社に対して、主位的請求として、雇用契約に基づく賃金(月給22万円)が未払いであるとしてその支払いを求め、予備的請求として、Y社がXらとY社間の契約の性質を曖昧にしたままXらと労働基準法上の保護を形骸化してきたなどとして、不法行為に基づく損害賠償を求めるなどした事案であるが、ここでは本件契約の性質の判断について記載する。

判決要旨

 東京地裁は、本件契約の性質について、以下のとおり判示した。

1 使用従属性の判断基準
   労働者とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者であり(労働契約法2条第1項、労働基準法9条)、労働者性の有無は使用従属性の有無によって判断される。使用従属性の判断にあたっては、(1)指揮監督下の労働といえるか否かについて、仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無、代替性の有無等に照らして判断され、(2)報酬の労務対償性について、報酬が一定時間労務を提供していることに対する対価といえる場合には、使用従属性を補強するものとされ、(1)、(2)の観点のみでは判断できない場合には、(3)事業者性の有無、専属性の程度等が検討される。

2 本件における使用従属性の判断
   Xらについては、仕事の依頼、業務指示等に対して、実際上諾否の自由があったとは認めがたく、一定程度業務遂行上の指揮監督を受け、勤務時間・勤務場所に関する拘束性も一定程度認められ、いったん配送先が配信されるとこれを断ることができないという点で代替性はないことからすると、少なくとも平成21年1月以降のXらの労働はY社の指揮監督下の労働であったということができ、また、報酬についても、一定時間労務を提供していることの対価であることが明確とはいえないが、Lpガスボンベの配送本数という労働の結果に応じて報酬が支払われるとはいえ、報酬について労務対償性が認められるところであり、Xらについてはその余の事業者性の有無や専属性の程度等を検討しても、使用者従属性が相当程度認められ、労働者性を否定することは相当ではない。

3 まとめ
   本件契約については、雇用契約書が交わされ、雇用契約であることを前提にした対価の支払方法が採られていることなどからすれば、本件契約の性質としては、雇用契約であることが推認されるところ、Xらの業務の実態という観点から、Xらの労働者性を検討しても、使用者専属性が相当程度認められるところであり、これらの諸事情を総合すると、本件契約の性質は雇用契約であると認めるのが相当である。

※本件は控訴された。

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1084(2014年4月1日)5~23頁

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