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【労働判例の紹介】平成25(ネ)4033号 割増賃金等請求控訴事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成25(ネ)4033号 割増賃金等請求控訴事件

(東京高裁 平成25年11月21日判決)

○ ICカードの履歴に残っている会社構内での滞留時間をもって、直ちに時間外労働を行ったと認めることはできないとされた事案

事件の概要

 Y社に雇用されていた新入社員Xが、ICカードの記録に基づき、始業前のラジオ体操や朝礼、日報の作成、電話対応、システム入力、実習の成果発表会などが時間外労働にあたると主張し、未払い賃金及び労働基準法第114条に基づく付加金の支払いを求めて訴えを提起した。
  一審では未払い賃金及び付加金の一部を容認したため、Y社が敗訴部分を不服とし控訴した事案である。

判決要旨

 【一審の要旨】
    ICカードの使用目的の一つが労働時間の管理にあり、Xの労働時間の認定に当たって基本的には信用性の高い証拠であるとし、朝礼やラジオ体操の時間のほか、日報の作成、電話対応、システム入力、実習の成果発表会などを労働時間と認定した。

 【二審の要旨】
    ICカードの使用履歴からはXの主張のとおりの会社構内滞留時間が認められるが、ICカードは施設管理のためのものであり、履歴上の滞留時間をもって直ちに時間外労働をしたとは認められるものではないとしたうえで、時間外労働の有無について以下のとおり検討を行い、Xの請求を一部容認した一審判決のうちY社敗訴部分を取り消した。

 1 日報の作成
    日報は実習の経過を示すもので会社の業務に直接関係しないこと、日報の提出期限はなく、実習スケジュールには実習メニューとは別に一定の日報作成の時間が取られていること、上司から「時間内に終わることも大切であるから簡潔に書くように」との指導を受けていたことなどから、Y社が残業を命じた根拠は認められない。

 2 電話対応、システム入力
    電話対応や顧客とのやり取りについてのコンピュータシステムへの入力は、電話相談実習の一環としてXの所属ではない課の業務であり、そのために残業が必要であったとは認められない。

 3 実習の成果発表会
    実習中の新人社員が自己啓発のために同僚や先輩社員に対し実習成果を発表する場として設定されたものであり、会社の業務として行われたものではなく、これに参加しないことによる制裁等があったとは認められないことから、Y社が業務として発表会への参加を指揮命令したものということはできない。

 4 朝礼、ラジオ体操
    始業前の朝礼、朝のラジオ体操への参加は任意であり、Xの主張を認めるに足りる証拠がない。

 5 結論
    Xが就業規則で定められた所定労働時間外に労務の提供をしたとの事実又は労務の提供を義務づけられていたとの事実を認めることはできないから、Xの時間外労働を理由とする未払い賃金の支払い請求の理由は認められない。

*本件は、上告された。
  

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1086(2014年5月1日)52~66頁

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