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【労働判例の紹介】平成24(ワ)31625号 地位確認等請求事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成24(ワ)31625号 地位確認等請求事件

(東京地裁 平成25年11月21日判決)

◯ 暴言行為や業務命令拒否を理由とした懲戒解雇において、暴言行為については懲戒解雇に該当するとまでは認められず、業務命令拒否については処分として重きに失し、権利濫用として無効とされた事案

◯ 営業能力の欠如、業務運営の妨害及び業務命令拒否を理由とした普通解雇において、営業能力の欠如、業務運営の妨害については普通解雇事由に該当する具体的事実を認めることはできず、業務命令拒否については普通解雇事由に該当すると言えなくもないが、処分として重きに失し、権利濫用として無効とされた事案

事件の概要

 Xは平成23年9月、海外ソフトウエア開発業務を中心に事業を行うY社にIT業務推進部長として入社した。しかし、同年11月に、Y社取締役と口論になり大声で怒鳴るなど暴言行為を行ったことや、営業活動での言動や対応について複数の取引先からクレームを受けていたことから、Y社代表者はXの能力等を把握して適した業務を与えることを考え、Xに対し職務経歴書の提出を求めた。しかし、Xは入社時に履歴書を提出しているため、就業規則上提出する必要はないとこれを拒否した。その後、Y社代表者はXを、暴言行為や業務命令拒否を理由に懲戒解雇、さらには予備的に営業能力の欠如、業務運営の妨害及び業務命令拒否をもって普通解雇(以下両件解雇を併せて「本件解雇」とする。)とした。
 本件では、Xが本件解雇は無効であるとして労働契約上の地位の確認を求めると共に、賃金及び不法行為に基づく損害賠償金の支払いを求めた事案であるが、ここでは、本件解雇の有効性についてのみ記載する。

判決要旨

 東京地裁は以下のとおり判示した。

 まず、本件懲戒解雇の有効性に関してであるが、Xは業務遂行中にY社代表者やY社取締役に強い口調で自らの意見を述べることがあり、周囲のY社従業員に対して不安を感じさせたことが窺えるものの、Xの暴言行為が就業規則上の懲戒解雇事由に該当するとまでは認められない。また、Xが職務経歴書の提出を拒否したことにつき、Xはこれに応じる必要があったが、入社時に履歴書を提出していたことと、Y社代表者から賃金減額や解雇をちらつかせるようなメールが送られていたことから、Xの業務命令違反は強く非難されるべき行為ではない。職務経歴書の提出拒否をもって懲戒解雇とすることは処分として重きに失し、手続面等について検討するまでもなく、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできない。
 以上により、本件懲戒解雇は権利濫用として無効と認めるのが相当である。
 次に、本件普通解雇の有効性に関してであるが、Xの言動が主たる理由となって交渉や事業が頓挫したり、Y社に損害が生じたりしたことを認めるには足りないこと、また、各関係者からのクレームは明らかにXに非があるとまでは認められず、Xが担当した顧客の多くからクレームを受けたという具体的事実を認めるに足りないこと等から、Xの言動が普通解雇事由に該当するとは認められない。さらに、Xが職務経歴書を提出しなかった業務命令拒否については、普通解雇事由に該当すると言えなくもないが、労働者としての地位を喪失させる解雇とすることは重きに失し、客観的合理的理由を欠き、社会通念上、相当なものとして是認することはできない。
 以上により、本件普通解雇についても権利濫用として無効と認められるのが相当である。

  ※ 本件判決は確定した。

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1091)(2014.7.15)74~92頁

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