【労働判例の紹介】平成24(ワ)1329号 労働契約上の地位確認等請求事件
平成24(ワ)1329号 労働契約上の地位確認等請求事件 |
(福岡地裁小倉支部 平成26年2月27日判決) |
◯ 契約期間を1年とする有期雇用で採用された教員の雇止めについて、労働契約の更新実績は一度もなかったものの、採用面接時の旧規程による説明等からすると、本件労働契約が少なくとも3年間は継続して雇用されると期待することに合理的な理由があると認めるのが相当とされた事案 事件の概要Y学園は短大等を運営する学校法人であり、Xは短大の講師として勤務した者である。 平成22年3月(以下、元号を省略する。)、Y学園とXは採用予定日を23年4月1日とする本件労働契約を締結した。同契約書には、雇用期間は23年4月1日から24年3月31日まで、契約の更新は勤務成績、態度及び業務上の必要性により判断する等の記載があった。 Y学園には契約職員に関する規程があり、X採用以前の旧規程では、契約職員のうち講師以上の大学教育職員の契約期間は3年、ただし、1年ごとの更新とする等の定めがあったが、その後この規程は改訂され、23年4月1日施行の新規程では、契約職員の雇用期間は当該事業年度の範囲内、雇用期間は、契約職員が希望し、かつ、雇用期間延長が必要と認められる場合に3年を限度に更新することがある等と定められた。Xの労働契約締結の際には旧規程により説明がなされ、新規程に関する説明はなかった。 24年3月19日、Y学園はXに対し「雇用契約終了の予告通知書」を交付し、同月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知した。 本件は、Xが、Y学園の行った雇止めは無効であるとして、労働契約上の地位の確認及び未払賃金の支払いを求めた事案である。 判決要旨福岡地裁小倉支部は以下のとおり判示し、XがY学園に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、未払賃金の支払いを命じた。 1 契約更新の期待への合理性について 期間の定めのある労働契約が、期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態になったとはいえない場合であっても、労働者において当該労働契約で定められた期間の満了時に当該労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある場合には、解雇権濫用法理が類推適用され、使用者による雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、当該契約の期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は、従前の労働契約が更新されたのと同様の関係となるものと解される。これを本件についてみると、更新の実績が一度もなかったものの、本件の労働契約が少なくとも3年は継続して雇用され、その間に2回更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めるのが相当である。 2 本件雇止めの有効性について Y学園の主張するXの健康状態の業務への影響、育児の業務への影響、事務処理上の問題について、いずれもY学園の業務に特段の支障が生じたとは認められず、本件雇止めには客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないといわざるを得ない。 ※本件は控訴された。 参考◆ 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1094)(2014.9.15)45~61頁 |
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