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【労働判例の紹介】平成24(行ウ)783号 不当労働行為救済命令取消請求事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成24(行ウ)783号 不当労働行為救済命令取消請求事件

(東京地裁 平成26年1月20日判決)

◯ 不誠実な対応について、その後の交渉での組合執行委員長の暴言等を理由に不当労働行為の存在理由が否定されるものではなく、組合に対し救済を与える利益又は必要性が失われたものとは認めることはできないとされた事案

事件の概要

 Y社は、X組合との労働協約、合意事項に反し、賞与又は昇給に関する団体交渉の申し入れをせず、査定に使用した資料等(以下「当該資料等」という。)の提示を行うことなく、平成21年(以下、元号を省略する。)の冬季賞与の支給、22年1月の昇給等を行った。
 22年1月26日、X組合がY社に団交を申し入れたが、Y社の都合により延期された。
 同年3月22日、X組合はY社に同年1月26日に延期された団交の実施について申し入れたが、Y社から日時変更の申し入れがあり、同年4月5日、団交の日時調整の打合せが行われた。
 Y社はその際にX組合の執行委員長A(以下「A」という。)が会社に対し屈辱的な発言をしたり、大声で何度も怒鳴ったりしたことにつき、打合せの段階でこのような態度を取られては誠実な団交は望めないと判断せざるを得ない旨、また、21年12月19日の団体交渉において、AがY社のC総務部長代理に対して侮辱的な発言が多くあったため、Aが改めた態度で団交を行うのであれば団交を実施する旨を通知した。
 その後の22年6月、8月に団交が実施されたが、Y社は、8月の団交におけるAの発言は、会社に対し恐怖心を与えるものであり、このような状況では、団交を行うことはできるはずがないとして、団交の実施は控える旨の通知書を交付した。
 同年8月24日、X組合は、労働協約及び団交における合意事項に反し、賞与及び昇給に係る団交の申入れ及び査定に使用した資料等の提示を行うことなく賞与等を支給したこと並びに組合による22年1月26日及び同年3月22日の団交申入れを拒否したこと等が不当労働行為に当たるとして、労働委員会に救済の申立てを行った。
 労働委員会は、Y社の対応が不当労働行為に当たるとして、誠実に対応することを命じ、これに対しY社が再審査を申し立てたが棄却(以下「本件命令」という。)された。

 本件は、Y社が本件命令を不服とし、Aの暴言等によって将来の団交により解決されるべきとの期待が実現困難になったと認められるのであり、本件団交を実現するためにはAが暴言等をやめる必要があるところ、これを改める態度は表明されていないことから、救済命令を発することによる救済の利益は失われたなどと主張し本件命令の取消しを求めた事案である。

判決要旨

 東京地裁は、次のとおり判示した。

1 21年の冬季賞与及び22年1月の昇給に係るY社の対応について
 21年の冬季賞与及び22年1月の昇給に係るY社の対応は、本件労働協約及び本件合意事項に反するものであり、誠実な対応であるとは認められないから、・・・不当労働行為に該当するというべきである。

2 救済の利益の存否について
 救済命令を発するためには、不当労働行為の存在が認定されることに加え、救済を受けることを正当とする利益又は救済を与えることを正当とする必要性、すなわち、救済の利益が救済命令を発する時点で存することが必要であると解される。
 Y社が本件において主として問題としているAの暴言等は、直接的には団体交渉における上記議題に関するものとまではいい難いし、時期的には22年8月の団体交渉において発せられたものであるから、Aの暴言等を理由にY社の不当労働行為の存在が否定されるものではない。
 また、今後の団体交渉においてY社が同種の行動を繰り返すおそれがないこと又はAが暴言等の不適切な態度を繰り返すおそれが高いことを具体的に裏付ける事情を認めるに足りる証拠はない。
 さらに、Aが職場の上司に暴行を加えた事実が認められるところではあるが、これに加え、Aの言動等の多くは、・・・Y社の一従業員の立場として行ったものと解されるから、本件において問題となる救済の利益の有無に直ちに影響を及ぼすものとはいい難いというべきである。

3 結論
 よって、本件命令を発する時点でX組合に救済を与える利益又は必要性が失われたものとは認めることはできないから、救済の利益が喪失した旨のY社の主張は理由がない。

  ※本件は控訴された。

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1093)(2014.9.1)44~56頁

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