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【労働判例の紹介】平成25(ワ)2363号 地位確認等請求事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成25(ワ)2363号 地位確認等請求事件

(東京地裁 平成26年11月26日判決)

◯ 本件変更により追加された就業規則は、労働条件の不利益変更に当たり、さらにその不利益の程度は大きいものである一方で、その変更の必要性及び相当性も認められず、合理的な変更ではないとされた事例

事件の概要

 Xは、平成11年2月(以下元号は省略する。)にY社と期限の定めのない雇用契約を締結した。その後、Xは21年5月に出産し、その後、産後休暇及び育児休暇を取得し、22年6月から復職したが、産婦人科医から「易疲労、体力低下、卵巣機能不全」との診断を受け、23年10月まで傷病休暇を取得した。その後、XはA医師に「うつ状態」と診断され、次いで24年12月20日まで療養休職 (以下「本件療養休職」という。)とされた。
 Xは、24年12月6日、うつ状態による治療中ではあるが、症状が改善したため就労が可能であるとの診断書(以下「本件診断書」という。)及び同日付情報提供書をY社に提出した。Y社は、本件療養休職が満了になる24年12月20日、Xに対し、「Xから提出された本件診断書及び本件情報提供書をはじめとする資料を精査した結果、Xが回復するに至ったと認められない」として、「昼間の眠気がとれないこと」及び「休職期間が満了するまでに問題なく職務が遂行できる健康状態に回復していないこと」というXの症状が、Y社の就業規則第25条第6項に規定する「休職期間満了時において休職事由が消滅せず、速やかに復職することが困難であると判断される時」に該当するとして、「雇用終了に関する通知」を交付し、本件雇用契約を終了した。
 なお、24年9月1日に変更(以下「本件変更」という。)されたY社の就業規則は、「療養休職したものが復職する場合の復職とは従来の業務を健康時と同様に通常業務遂行できる状態の勤務を行うことをさす。…」との条項 (就業規則第24条第3項)が定められた。この規定は、Xの本件療養休職中に本件変更によって追加されたものであった。
 本件訴訟は、本件変更が有効か、本件療養休職の満了時にXの休職事由が消滅したかの2点を争点とし、XがY社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、未払賃金及び遅延損害金を求めた事案である。

 ここでは、本件変更の有効性についてのみ記載する。

判決要旨

  東京地裁は以下のとおり判示し、XとY社の間において、本件就業規則第24条第3項がXを拘束せず、また、本件雇用契約が終了するものではないとした。

 就業規則第24条第3項は、従来規定されていない「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを、療養休職した業務外傷病者の復職の条件として追加するものであって、労働条件の不利益変更に当たることは明らかである。Y社において、従前から上記復職条件が業務外傷病者の復職条件として労使間の共通認識となっていたこと等を認めるに足りる証拠はなく、業務外傷病のうち特に精神疾患は、一般に再発の危険性が高く、完治も容易なものではないことからすれば、「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを復職の条件とする本件変更は、業務外傷病者の復職を著しく困難にするものであって、その不利益の程度は大きいものである一方で、本件変更の必要性及び内容の相当性を認めるに足りる事情は見当たらないことからすれば、本件変更が合理的なものと言うことはできず、労働契約法第10条の要件を満たしていると言うことはできない。したがって、本件就業規則が原告を拘束する旨の被告の主張を採用することはできない。

※本件は控訴された。

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)NO.1112(2015.7.1) 47頁~60頁

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