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【労働判例の紹介】平成25(ネ)283号 損害賠償請求控訴事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成25(ネ)283号 損害賠償請求控訴事件

(仙台高裁 平成26年6月27日判決)

◯ 部下に過度の心理的負担をかけないよう配慮すべき注意義務の違反等があったとして、上司の不法行為責任を認め原判決を変更した事案

事件の概要

 Y社の営業所に勤務していたKが、連日の長時間労働のほか、上司である営業所長Zからの暴行や執拗な叱責、暴言などのいわゆるパワーハラスメントにより精神障害を発症し、平成21年10月7日に自殺に至ったことに対し、Kの両親Xらが、Y社には不法行為又は安全配慮義務違反に基づき、Zに対しては不法行為に基づき損害賠償等を請求したものである。

 一審は、Y社がKに対する安全配慮義務違反の不法行為に基づく損害賠償債務を負うことは容認したが、Zは権限の範囲内で期待される相応の行為を行っていたと評価することができ、また、ZがにK対し、業務上の指導として許容される範囲を逸脱し、違法なものであったと評価するに足りる行為をしたと認めるに足りる証拠はないとして、Zに対する請求については棄却した。

 これに対し、XらがZへの請求が棄却されたことを不服とし、また、Y社は同社に対する請求が容認されたことを不服として控訴した事案である。

判決要旨

  二審は、以下のとおり判示した。

  新人社員であったKは、本件自殺の5か月前から月100時間を超える恒常的な長時間にわたる時間外労働を余儀なくされ、このような中、Kは新人社員にまま見られるようなミスを繰り返してZから厳しい叱責を頻繁に受けていた。本件自殺の約3週間前には、解雇の可能性を認識させる一層厳しい叱責を受けており、総合的に見て、業務により相当程度の肉体的、心理的負荷を負っていたものと認められる。

 また、平成21年9月中旬頃には、情緒的に不安定な状態にあり、過剰飲酒をうかがわせる問題行動が現れており、すでに適応障害を発病していたと認められる。同年10月6日、午後出勤の前に飲酒をするという問題行動を再び起こし、Zより入社以来、最も厳しい叱責を受けるに至り、Kは正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害された状態となり、自殺に至ったと推認することができる。

 Zは使用者であるY社に代わって、労働者に対する業務上の指揮監督を行う権限を有していたと認められ、健康管理義務に基づき労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っていたというべきである。

 ZはKを就労させるにあたり、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないよう、Kの時間外労働を正確に報告し増員を要請することや、業務内容、配分を適切に調整するための措置をとる義務を負っていた点、また、指導に際しては、新卒社会人であったKに過度の心理的負担をかけないように配慮しなければならなかった点において、Zに注意義務違反があったと認められ、Kが本件自殺により死亡に至ったことについて、不法行為責任は免れないとし原判決を変更した。

 ※本件は確定した。

参考

 参考文献
  『労働判例』(産労総合研究所)No.1100(2014.12.15) 26頁~47頁
  『労働経済判例速報』(日本経済団体連合会)No.2222(2014.11.10) 3頁~23頁

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