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【労働判例の紹介】平成24(行ウ)43号 不当労働行為救済命令取消請求事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成24(行ウ)43号 不当労働行為救済命令取消請求事件

(札幌地裁 平成26年5月16日判決)

◯ 能力や勤務成績等が劣っていることなどの合理的な理由がないにもかかわらず、勤続年数の長い社員が、ほぼ全社員が昇格している資格級位に昇格できない場合、他の社員との間で格差があり、差別に当たるとした事案

事件の概要

 甲は、昭和49年4月にX社に入社し、その従業員で結成された労働組合に加入後、平成4年11月に執行委員長に就任、現在に至っている。勤続8年で事務職C級(一般職の資格区分で最上位)となったが、その後は昇格していない。なお、甲にはこれまでに重大な非違行為はなく、懲戒処分を受けたこともない。

 X社における管理職への昇進・昇格の状況は、次のとおり。
(1) 勤続30年以上の8名(甲を除く)の社員は、いずれも管理職の地位にある。
(2) 勤続20年以上30年未満の2名の社員は、いずれも管理職の地位にある。
(3) 勤続10年以上20年未満の10名の社員は、1名を除き、いずれも管理職の地位にある。除いた1名は事務職C級だが係長の職位にある。
(4) 勤続10年未満の30名の社員のうち、12名は管理事務職D級、12名は管理事務職E級、1名は管理事務職F級、5名は事務職B級だが係長の職位にある。
(5) なお、勤続30年以上であって、かつ50歳代になるまで管理職に昇進することなく一般職のまま定年退職した社員は、労働組合の役員であった乙、丙の2名以外にはいない。

 労働組合は、X社が、甲を一般職員・事務職C級から昇進・昇格させなかったことなどが不当労働行為(不利益取扱、支配介入)に当たるとして、Y労働委員会に審査の申立てをしたところ、Y労働委員会は、甲を管理事務職D級(管理職の資格区分で最低位)に昇格させなかった行為は不利益取扱・支配介入に該当すると認め、請求に係る救済の一部を認める命令を出した。

 これに対しX社は、能力主義の観点から有用と思われる人材を管理職に登用してきた、このような事情は組合員であっても何ら異なることはないなどとして、救済部分の取消しを求めて提訴した。

判決要旨

 札幌地裁は、次のとおり判示して原告(X社)の請求を棄却した。

 管理事務職D級は管理職の中でも最低位の資格であって、組合員を兼ねることができ、残業手当も支給されること、勤続10年以上の職員のうち1名を除く全員が管理事務職D級以上になっていることなどに照らすと、事務職C級から管理事務職D級への昇格については、ある程度の年功的な取扱いがされていたと認めるのが相当である。

 上記の管理事務職D級の位置づけからすれば、能力や勤務成績等が劣っていることなどの合理的な理由がないにもかかわらず勤務年数が長い社員が管理事務職D級に昇格できない場合にあっては、他の社員との間で格差があり、差別に当たるものといわざるを得ない。

 会社は、どのような者を管理職に登用するかは経営上極めて重要な事項であり、広範な人事裁量に基づいて自由に判断すべきものであると主張するが、管理職であるという一事をもって使用者に広い人事裁量権が認められるということはできず、管理事務職D級の位置づけからすれば、X社の人事裁量権を踏まえてもなお不当労働行為の成立が否定されるものではない。

※ 本件判決(請求棄却)は確定した。

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1096(2014.10.15)5~18頁

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