【労働判例の紹介】平成24(受)2231号 地位確認等請求事件
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平成24(受)2231号 地位確認等請求事件 |
(最高裁一小 平成26年10月23日判決) |
◯ 妊娠中の軽易業務への転換を「契機として」降格処分を行うことは、原則として男女雇用機会均等法に違反するとされた事案 事件の概要 被上告人(二審被控訴人、一審被告)であるY組合は組合員の出資によって経営される医療介護事業等を営む協同組合であり、総合病院や訪問看護ステーションなどを運営している。本件は、Y組合に雇用され、副主任の職位にあった理学療法士である上告人(二審控訴人、一審原告)Xが、労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を免ぜられ(以下、「本件措置1」という。)、育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったこと(以下、「本件措置2」という。)から、Y組合に対し、上記の副主任を免じた措置は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「均等法」という。)9条3項に違反する無効なものであるなどと主張して、管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案であるが、ここでは、措置1の効力、措置2の効力についてのみ記載する。 一審、二審では、措置1については、Y組合の業務遂行・管理運営上、人事配置上の必要性に基づいてその裁量権の範囲内で行ったものであって均等法や均等法告示にいう不利益な取扱いに該当しないし、Xも降格に同意していたため均等法9条3項に違反しないとし、措置2については、復帰先にすでに副主任がいたこと等の事情から、均等法9条3項、育児・介護休業法10条に違反するとはいえず、人事権濫用にもあたらないとしてXの請求を退けた。 本件は、これらを不服としてXが上告した事案である。 判決要旨 最高裁は、以下のとおり判示し、二審判決を破棄して高裁に差し戻した。 女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として均等法9条3項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが、当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。 Y組合においてXにつき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに業務上の必要性から支障があったか否か等は明らかではなく、本件措置によりXにおける業務上の負担の軽減が図られたか否か等も明らかではない一方で、Xが本件措置により受けた不利な影響の内容や程度は管理職の地位と手当等の喪失という重大なものである上、本件措置による降格は、軽易業務への転換期間の経過後も副主任への復帰を予定していないものといわざるを得ず、Xの意向に反するものであったというべきであるから、本件措置については、Y組合における業務上の必要性の内容や程度、Xにおける業務上の負担の軽減の内容や程度を基礎付ける事情の有無などの点が明らかにされない限り、均等法9条3項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情の存在を認めることはできないものというべきである。したがって、これらの点について十分に審理し検討した上で上記特段の事情の存否について判断することなく、原審摘示の事情のみをもって直ちに本件措置が均等法9条3項の禁止する取扱いに当たらないと判断した原審の判断には、審理不尽の結果、法令の解釈適用を誤った違法がある。 ※ 本判決を踏まえ、厚生労働省は平成27年1月23日付け雇児発0123第1号にて「男女雇用機会均等法解釈通達」及び「育児・介護休業法解釈通達」を一部改正した。(改正の概要はこちら。) 参考◆ 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1100(2014.12.15)5~25頁 |
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