【労働判例の紹介】平成25(ワ)706号 損害賠償請求事件
平成25(ワ)706号 損害賠償請求事件 |
(静岡地裁 平成26年12月25日判決) |
◯ 元請会社ないし発注者と下請会社の労働者とが、元請会社ないし発注者の指揮監督下でほとんど同じ作業に従事していたなど、特別な社会的接触関係に入ったと認められる場合には、元請会社ないし発注者は下請会社の労働者に対しても、安全配慮義務を負うとされた事案 事件の概要被告Y1電力株式会社(以下「Y1社」という。)は、発電所の復旧工事を被告Y2株式会社(以下「Y2社」という。)に発注した。受注した工事の一部を被告Y3株式会社(以下「Y3社」という。)はY2社から請け負い、被告Y4株式会社(以下「Y4社」という。また、Y1社~Y4社をあわせて「Y1社ら」という。)はY3社から請け負った。さらに、訴外B建設はY4社から工事の一部を請け負い、訴外C建設はB建設から工事の一部を請け負って労働者の派遣等を行った。作業員AはC建設の臨時作業員として入社し、本件復旧工事に参加することとなったが、発電所内での作業中に倒れて死亡した。 本件は、Aの妻である原告Xが、Y1社らには安全配慮義務違反があり、Aの死亡はこの義務違反によるものであるなどと主張して、Y1社らに対して損害賠償等を請求した事案である。 判決要旨静岡地裁は、以下のように判示し、Xの請求には理由がないことが明らかであるとして棄却した。 元請会社ないし発注者と下請会社(孫請会社を含む。以下同じ。)の労働者との間には直接の労働契約はないものの、下請会社の労働者が労務を提供するに当たって、いわゆる社外工として、元請会社ないし発注者の管理する設備、工具等を用い、事実上元請会社ないし発注者の指揮、監督を受けて稼働し、その作業内容も元請会社ないし発注者の労働者とほとんど同じであるなど、元請会社ないし発注者と下請会社の労働者とが特別な社会的接触関係に入ったと認められる場合には、労働契約に準ずる法律関係上の債務として、元請会社ないし発注者は下請会社の労働者に対しても、安全配慮義務を負うというべきである。 これを本件についてみると、被告Y1社らが下請会社の労働者に対して指示等を行っていたと認めるに足りる証拠はなく、AがY1社らの指揮監督を受けていたと認めるに足りる証拠もないから、Y1社らとAとが特別な社会的接触関係に入ったものと認めることはできない。 よって被告Y1社らがAに対して安全配慮義務を負っていたものと認めることはできないから、Xの請求は認められない。 ※本件は、控訴された。 参考◆ 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1109(2015.5.15)15~33頁 |
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