ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
ホーム > 組織でさがす > 労働委員会事務局 > 【労働判例の紹介】平成26(ワ)14472号 賃金請求事件

【労働判例の紹介】平成26(ワ)14472号 賃金請求事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

判例一覧に戻る

平成24(ワ)14472号 賃金請求事件

(東京地裁 平成27年1月28日判決)

◯ タクシー乗務員に支払われる歩合給について、その歩合給から時間外手当などの割増金を控除する旨定めている賃金規則の規定は、労働基準法(以下「法」という。)37条の趣旨に反し、さらに公序良俗に反するものとして、民法90条により無効とされた事案

事件の概要

 タクシー乗務員である原告14名(以下「Xら」という。)は、被告Y社においてタクシー乗務員として就労してきた。
 Y社賃金規則によれば、タクシー乗務員の賃金は、基本給、服務手当、交通費、割増金(深夜手当、残業手当及び公出手当の合計)及び歩合給からなっていた。
 Y社では、「割増金」として、時間外労働や深夜労働に対する割増賃金が支払われていた。しかし、歩合給の計算に当たり、実際に発生した歩合給の額から、割増金及び交通費を控除して算出するよう定められていた(この定めを以下「本件規定」という。)。
 なお、Y社では割増金の額が実際に発生した歩合給の額を上回る場合、歩合給をゼロ円にするにとどめ、差額を賃金総額から差し引くことはしていなかった。

 本件は、Xらが、歩合給の計算に当たり残業手当等に相当する額を控除する旨を定める本件規定は無効であり、Y社は、控除された残業手当等相当額の賃金支払義務を負うと主張して、Y社に対し、未払賃金等を請求した事案である。

 ここでは、本件規定に係る割増金控除の有効性の判断についてのみ記載する。

判決要旨

 東京地裁は以下のとおり判示し、Y社に対し未払賃金等の支払いを命じた。

 本件規定によれば、割増金と交通費の合計額が、実際に発生した歩合給の額を上回る場合を別にして、揚高(売上)が同じである限り、時間外等の労働をしていた場合もしていなかった場合も乗務員に支払われる賃金は全く同じになるのであるから、本件規定は、法37条の規制を潜脱するものといわざるを得ない。そして、法37条は、強行法規であると解され、これに反する合意は当然に無効となることからすれば、本件規定のうち、歩合給の計算に当たり割増金に見合う額を控除している部分は、法37条の趣旨に反し、さらに公序良俗に反するものとして、民法90条により無効であるというべきである。したがって、歩合給の計算に当たり、割増金に見合う額を差し引くことなく計算すべきである。

※本件は控訴され、東京高裁判決(H27.7.16)もまた、本判決と同旨であった。

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)NO.1114(2015.8.1・15) 35頁~46頁

ページの上部に戻る

ご意見お聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?
このページは見つけやすかったですか?

※1 いただいたご意見は、より分かりやすく役に立つホームページとするために参考にさせていただきますので、ご協力をお願いします。
※2 ブラウザでCookie(クッキー)が使用できる設定になっていない、または、ブラウザがCookie(クッキー)に対応していない場合はご利用頂けません。