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【労働判例の紹介】平成26(ネ)342号 地位確認等請求控訴事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成26(ネ)342号 地位確認等請求控訴事件

(広島高裁 平成27年11月17日判決)

◯ 妊娠中の軽易業務への転換を「契機として」降格処分を行ったことが、当該処分を行う必要があった「特段の事情」には該当せず、男女雇用機会均等法(昭和47年7月1日法律第113号。以下「均等法」という。)に違反するとして、不法行為に基づく損害賠償請求が認められた事案

事件の概要

 概要・経緯等については、以前、当HPで紹介(H27.3.11に「平成24(受)2231号 地位確認等請求事件」として掲載)したとおりであるが、本件は、最高裁が、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置(以下「措置1」という。)は、原則として均等法9条3項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが、
(1)当該労働者が軽易業務への転換及び措置1により受ける有利な影響並びに措置1により受ける不利な影響の内容や程度、措置1に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、
又は
(2)事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、措置1につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき
は、同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当であるが、原審の判断には、審理不尽の結果、法令の解釈適用を誤った違法があると判示し、二審判決を破棄して高裁に差し戻した事案である。

判決要旨

 広島高裁は、以下のとおり判示し、副主任手当及び不法行為に基づく損害賠償等の支払いを命じた。

○副主任の職位にあった理学療法士である二審控訴人(一審原告)Xが、上記(1)の「自由意思に基づいて降格を承諾したか」について
・Xが強く希望するリハビリ科に移動させたからといって、降格について承諾があったとはいえない
・リハビリ科には主任がおり、かつ、一つの組織単位に主任と副主任が併存した例がないことをXが知っていたとしても、副主任を免ぜられることを承諾したことにはならない
・事後承諾はあったと認められるが、「不満であったが、仕方ないと思った」というものであり異議を留保したりせず、副主任で復帰する保証のない異動であることを認識していたとしても、事後承諾が自由意思に基づきなされたとする合理的な理由が客観的に存在するとはいえない
・Xは、肉体的負担の少ない業務を担当する利益を得たと認められるものの、賃金の低下等の重大な不利益があり、副主任への復帰の保証もなく、この点につき明確に説明した証拠もない

○上記(2)の「均等法9条3項の趣旨及び目的に反しないものと認められる特段の事情の有無」について
・病院は、リハビリ科に主任と副主任が併存することが組織規定に反し、業務上の支障が生ずる可能性があるとするが、現場の実情を判断した柔軟な運用もあるはず
・Xに、自分の意見と異なる上司の意見や組織の方針に対して反論・非難したり、部下の反論を許さなかったり、複数の後輩が同じ職場で働くことを嫌って退職したりするほど独善的、かつ、協調性を欠く性向や勤務態度があるとはいえず、これを理由に職責者適格性に欠けるともいい難い
・労働組合が、Xを副主任に戻せとの要求を決定しようとしたが、Xの所属していた2つの職場から支持を得られず、断念したことが認められるが、これをもってXに職責者の適格性がないとはいえない
・措置1の有利又は不利な影響の内容については、軽易業務で身体的負担が減ること、副主任を免除すること自体は負担減であること、病院がXの担当患者を減らすなどしたことは利益であるが、降格により経済的損失を被るほか、役職取得に必要な職場経験のやり直しを迫られる不利益があり、Xの元の職場にすぐ後任の副主任が任命され、Xを副主任として復帰させるための方策の検討もなされていないことなどから、均等法9条3項に反しないと認められる特段の事情があったとはいえない

○不法行為の成否について
 措置1につき、承諾が自由意思に基づくものと認められる合理的理由が存在しないこと、職責者によって十分な検討がなされていないこと等から、女性労働者の母性を尊重し、職業生活の充実の確保を果たすべき義務に違反した過失(不法行為)があり、配慮義務違反(債務不履行)がある。

 ※本件は確定した。

参考

 参考文献 『労働新聞』(労働新聞社)第3053号(平成28年2月15日)14面

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