【労働判例の紹介】平成26(ワ)31657号 地位確認請求事件
平成26(ワ)31657号 地位確認請求事件 |
(東京地裁 平成27年5月28日判決) |
◯ 最高裁判決(諭旨退職処分の無効)確定後の休職命令による、休職期間満了日の退職が認められた事案 事件の概要 Y社に勤務していたXは、平成20年5月(以下元号は省略する。)ないし6月頃、職場で同僚から嫌がらせを受けている旨を上司に申告し調査を依頼したが、納得できる結果が得られなかったため、Xはこの問題が解決できない限り出勤できないとし、約40日にわたり欠勤を続けた。 判決要旨東京地裁は以下のとおり判示し、Xの本件申し立てを棄却した。 Xが労働契約の債務の本旨に従った履行ができる状態にあったのであれば、Y社が休職命令を発し、Xの労働契約の債務履行を拒絶したことは、会社による受領拒絶となり、休職期間満了による自然退職も認められないことになる。そして、精神的な不調の存在が認められないのであれば、特段の事情がない限り、Xは復職を申し出ることにより、債務の本旨に従った履行を提供したものと認められる。また、仮に精神的な不調の存在により、Xが従前の職場において労務の提供を十分にすることができない状況にあったとしても、労働契約上職種限定のないXが、能力、経験等に照らして配置される現実的可能性がある他の業務について労務提供ができるときは、なお、債務の本旨に従った履行の提供があったと認められる余地がある。 また、産業医は、過去に他の社員から受けた嫌がらせの問題が未解決であるという意見をXが有していることを踏まえると、標準的な作業環境でXが就労することには障害があると考えられる旨の意見を述べており、対人接触を最小限にするため在宅勤務制度を例外的に適用したとしても、社内外の調整や、他の職員との協同作業が必要になることに変わりはなく、Xと業務上接触し、Xから加害者として認識される可能性のある他の社員の精神的健康にも配慮する必要があることから、これらの点を考慮すると精神的不調を訴えるXが、配置転換により、労働契約上の債務の本旨に従った履行を提供することができる職場を社内において見いだすことは困難な状況にあったというべきである。 ※本件は控訴された。 参考◆ 参考文献 『労働経済判例速報』(日本経済団体連合会)No.2254(2015.10.20) 3~14頁 |
ページの上部に戻る |