答え 通説・判例では、「従業員の在籍専従を認めるか否か」については、「使用者の自由な判断に任されている」とされています。ただし、労働組合の規模が大きくなりますと、在籍専従制度は労働組合の存続に必要不可欠なものでありますし、また、正当な理由もないのに認めないことは、支配介入の不当労働行為とされるおそれがありますので、組合側と必要性についてよく話し合うことが重要だと考えられます。 在籍専従者を認めるにあたっては、在籍専従者の人数・専従期間・専従期間中の待遇・専従期間後の措置などについて労働協約でできるだけ具体的に定めておくのが望ましいと考えられます。 解説1 在籍専従とは 「在籍専従」とは、労働組合の役員が従業員としての地位を保ったまま、専ら労働組合の業務に従事することをいいます。それに対し、「離籍専従」は、従業員が退職(離職)して労働組合の業務に従事することをいいます。 在籍専従者は、通常、休職扱いとなり、これによって労働義務は免除されます。したがって、使用者は在籍専従者に対して賃金を支払う義務はありません。
2 在籍専従者を置くためには 一般的には、労働協約において在籍専従制度を定めているようですが、労働協約に定めがない場合は、使用者の個別の承認が必要となります。 通説・判例では、在籍専従を要求する権利が憲法第28条の団結権に当然に含まれているというわけではなく、在籍専従は使用者の承認があって初めて成立するものであり、この承諾を与えるか否かは使用者の自由であるとされています。 しかし、以下のような場合などには在籍専従を認めないことが不当労働行為となるおそれがあります。 (1)労働協約の中に在籍専従を認める規定があるのに認めない。 (2)正当な理由もなく、特定の組合員が専従者となることを拒む。 (3)企業内に複数の組合がある場合に一方の組合は専従を認めて、他方の組合は認めない。 また、専従期間終了後の労働者の扱いについては、協約等の定めがある場合はそれによることになりますが、協約等がない場合には、在籍専従になる前と同等の職位をもつポストに復帰させるのが一般的です。 判例○ 三菱重工業長崎(ながさき)造船所事件(最高裁第一小法廷判決昭和48.11.8労判190号29頁) ○ ネッスル〈専従者復職〉事件(大阪高判平2.7.10労判580号42頁) |