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(5)ユニオン・ショップ協定による解雇

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年12月20日更新
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(平成24年11月2日現在)

ユニオン・ショップ協定による解雇 ~労働者からの質問

質問

 当社には、従業員の全員が加入しているA労働組合があります。  
 このたび私をはじめとする5名が、A労働組合の方針に不満を感じ、A労働組合を脱退して、新たにB労働組合を結成しました。ところが、後日、会社から、「当社とA労働組合とはユニオン・ショップ協定を結んでおり、あなた達5名はA労働組合を脱退したので解雇する」と解雇通告されました。このような会社の言い分は正当なものなのでしょうか。

答え

 ユニオン・ショップ協定(以下「ユ・シ協定」という。)を締結しているA労働組合の団結権も、今回新たに結成されたB労働組合の団結権も憲法上等しく尊重されるべきものですから、A労働組合を脱退してB労働組合を結成したあなた方5名に対しては、A労働組合と会社との間のユ・シ協定の効力は及ばないとされています。
 その場合、今回の会社の言い分は認められず、解雇は無効になると考えられます。

解説

1 ユ・シ協定の意義
 ユ・シ協定は、労働者に対して採用された以上は特定の労働組合に加入すべきこととし、加入しない場合や加入後脱退したり除名された場合には、使用者がその労働者を解雇する義務を負うことを定めた労働組合と使用者との間の協定です。

2 ユ・シ協定の効力の及ぶ範囲

(1)ユ・シ協定を締結している労働組合に加入せず、他の労働組合に加入していない労働者については、当然にユ・シ協定の効力が及びます。
(2)ユ・シ協定を締結している労働組合からの脱退者や被除名者が既存の他の労働組合に加入し、又は新たな労働組合を結成した結成した場合、労働者の組合選択の自由や他の労働組合の団結権を侵害することは許されないことから、これらの者にはユ・シ協定の効力は及ばないとされています。(判例1)
 これは憲法上、労働者には労働組合を選択する自由が保障されており、また、ユ・シ協定を締結している労働組合の団結権も、他の労働組合の団結権も同等に保障されているという考え方によるものです。
(3)ユ・シ協定締結当時、既に別の労働組合に加入していた労働者に対しても、(2)と同様の考え方からユ・シ協定の効力は及ばないと考えられます。

3 ユ・シ協定を締結できる労働組合

 労働組合法第7条第1項ただし書きは、「特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する」労働組合についてのみ、ユ・シ協定の締結を認めています。この要件を具備していない労働組合が締結したユ・シ協定は無効とされています。
 また、国が編さんしたコンメンタールでは、協定締結後に、その労働組合の組合員数が全労働者の過半数に満たなくなった場合には効力を失うとの解釈が示されています。(参考図書1)                労働組合が組合員に対して行った除名処分が、合理的な理由がなかったり、手続違反があったなどから無効と判断される場合に、ユ・シ協定に基づく解雇が有効か無効かについては、学説の見解はわかれています。
 ただし、多数説は「無効」とする立場をとっており、最高裁も、除名が無効な場合には、使用者に解雇義務が生じないので、このようなユ・シ協定に基づく解雇は、客観的に合理的理由を欠き、解雇権の濫用として無効となると判断しています。(判例2)

判例

○判例1 三井倉庫港運事件(最高裁第一小法廷判決平成元.12.14労判552号6頁)
○判例2 日本食塩製造事件(最高裁第二小法廷判決昭和50.4.25民集29巻4号456頁)
○参考図書1 「労働組合法労働関係調整法」労働法コンメンタール1 五訂新版(2006年、厚生労働省労政担当参事官室編著)418〜419頁

 

 

 

 

 

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