答え 労働組合の正当な活動は憲法及び労働組合法によって保障されていますが、一般的に企業施設を自由に使用できる権利まで与えられていませんので、たとえ就業時間外であっても、会社に無断で企業施設を使用することは許されません。 無用なトラブルを防ぐためにも、組合活動のための企業施設使用手続き等について、労使間の話し合いによってルールづくりをしておくことが必要です。 解説1 組合活動の法的保護 労働組合は、労働者の経済的地位の向上などを目的として様々な活動を行いますが、これらのうち争議行為以外の諸活動(集会、大会、ビラ貼りなど)は、一般に「組合活動」と呼ばれています。 そして、正当な組合活動については、争議行為と同じように、憲法及び労働組合法により、刑事免責、民事免責、不利益取扱いからの保護といった特別な法的保護が与えられています。 組合活動の正当性は、その主体や目的、態様などが妥当であるかどうかによって判断されることとなりますが、争議行為とは異なり、原則として業務妨害や労働義務違反、使用者の施設管理権の侵害は許されません。正当性のない組合活動の場合には、刑事・民事責任を負い、懲戒処分を受ける可能性もありますので、注意が必要です。
2 使用者の施設管理権 使用者は、通常、自己の所有(または占有)する建物、敷地、設備などの企業施設を企業目的に合うように管理・保全する権限(一般に「施設管理権」と呼ばれている)を有しています。 企業内における組合活動は、この施設管理権による一定の制約を免れず、休憩時間あるいは就業時間外であっても、原則として、使用者の承諾なしに自由に企業施設を使用することはできません。 ただし、使用者に施設管理権があるといっても、組合の弱体化を意図して使用を認めないという場合には、不当労働行為(支配介入)と判断される可能性があります。
3 組合活動に伴う企業施設使用のルールづくり 使用者には、組合活動のために自由に企業施設を使用させなければならない義務はなく、労働組合法も、使用者の労働組合に対する経費援助等を不当労働行為として禁止し、最小限の広さの事務所の供与等を例外的に許容しているに過ぎません。 無用なトラブルを避けるためにも、労使間の合意により、組合活動のために企業施設を使用する際の要件や手続きなどのルールづくりをしておくことが必要です。 判例○ 国労札幌支部事件(最高裁第三小法廷判決昭和54.10.30労判329号12頁) ○ 池上通信機事件(最高裁第三小法廷判決昭和63.7.19労判527号5頁) ○ オリエンタルモーター事件(最高裁第二小法廷平成7.9.8労判679号11頁) |