2012年12月定例会 長期総合計画審査特別委員会 立原龍一委員
委員名 | 立原龍一 |
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所属会派(質問日現在) | 民主・県民連合 |
福島県長期総合計画審査特別委員会 | 平成24年12月 |
委員会開催日 | 12月18日(火曜日) |
立原龍一委員
初めに、原発の廃炉とそれに伴う安全確保に関する情報提供について聞く。
原発事故の緊急事態対応については、きのうまで3日間にわたって行われたIAEA(国際原子力機関)と政府の共同開催による福島閣僚会議の中でも意見交換がなされ、共同声明が出されている。
この会議に114カ国と11機関が参加したことは、福島第一原発の過酷事故がいかに世界を震撼させたかの1つのあらわれである。また、共同声明においては、県と県民の懸命な努力について評価されるとともに、原発の危機がまだ去っていないという認識のもとの声明であったものと拝察している。
東京電力(株)の中期経営計画の中では、廃炉の工程が30年から40年というスパンで公表されているが、現実には溶けた核燃料棒、いわゆるデブリの存在がどうなっているか、あるいはその分析がどうなっているか、全くわからない状況である。
また、3号機にあっては高線量で人も近づけず、4号機は再度の地震へ備えるために、1,533体、原子炉3基分の燃料集合体を一刻も早く移す必要があり、使用済み燃料プールから共用プールに移す作業の前倒しについても東京電力(株)から示されている。
しかし、燃料棒を取り出すことは、そのやり方がまだ明確にされておらず、さまざまなリスクを伴う。燃料棒を取り出す過程で、万が一でも再臨界が起きて、核物質が再び拡散することがあれば、せっかくの新生プランも根底から覆されることから、廃炉作業の安全性確保や監視体制が非常に重要である。
それらの情報を欺くことなく、包み隠さず、信頼のおけるものとして県民並びに全国、世界に発信していかなくてはならない。長期総合計画の中では、電力事業者から情報提供を受けて、現地に随時立ち入ることが数値目標とされているが、それ以上に県が信頼できる情報発信を随時行うことが大事である。
県民の安全・安心確保のために、県は廃炉の監視にどのように取り組み、監視した結果をどのように発信していくのか。
知事
廃炉については、国及び東京電力(株)の取り組みを多角的・継続的に、厳しい目線で監視していく必要がある。
このため、今月7日、中長期ロードマップに基づく取り組みや廃炉作業従事者の安全確保等の状況を確認することを目的に、原子力工学のほかリスクコミュニケーションや放射性廃棄物処理等に関する専門家と関係市町村から成る安全監視組織を設置した。
今後は、原子力発電所の構造等に習熟した実務経験者を県職員として採用するほか、関係機関とも協議の上、安全確保協定を見直し、事前了解の仕組みを再構築するなど、さらなる監視体制の強化を目指していく。
こうした県独自の取り組みを公開の場で実施するとともに、ホームページやテレビ広報番組等の多様な広報媒体を通じて国内外に発信するなど、県民へのより丁寧な情報提供に努めていく。
これらを通じ、本県が震災と原子力災害の厳しい状況を克服し、復興・再生への道を着実に歩む礎となる「安全と安心に支えられたふくしま」の実現に全力で取り組む。
立原龍一委員
心強い答弁である。
廃炉作業に関しては、不安とリスクを伴う一方、新しい技術を世界的に集積する意味では、本県の産業振興や技術開発、雇用対策などに貢献できるものと考えている。
東京電力(株)の中期経営計画において、来年4月には本県に研究関連施設を3カ所設置する意向も報道されている。このような施設の新設は、国際的な英知を集め、拠点構築を目指すものであり、大変な時間とエネルギー、そして資金を必要とする。当初は、賠償も含めて5兆円の見込みであったが、最近は10兆円という話も出ており、こういった部分もしっかり監視していかなくてはならない。
また、原子力規制委員会においても、特定原子力監視・評価検討会に地元の大学から4人が参画し、地元の意見を反映させることとしている。廃炉に関しては、本県が世界的な聖地になるべく進んでいるものと思う。
廃炉技術には、放射線工学からロボット工学、熱工学まで、さまざまな技術の粋を集めて進める必要があり、地元製造業や研究機関とマッチングさせ、雇用対策につなげるべきである。
特に、高校生に比べ大学生の県内留保率は非常に低い現状から、大学生の留保率の向上やFターンなどにより、研究開発機関やトップレベルの製造業の後継者育成を図り、廃炉に係る技術研究に参画することは、長い目で見た本県の人材育成に貢献するものと思う。
廃炉作業に必要な機器等への県内企業の参入について、どのように支援していくのか。
商工労働部長
廃炉作業に必要な機器の開発においては、国と東京電力(株)は、地元企業のすぐれた技術を幅広く取り入れる考えである。
このため、国と連携しながら、最新の機器開発の動向等に関して意見交換を行い、プラントメーカーとのマッチングの機会を提供するワークショップを、8月に引き続き、あす開催するとともに、産学官の連携によるモデル事業の実施等により、技術・知識の高度化を図るなど、県内企業の参入を支援していく。
立原龍一委員
次に、再生可能エネルギーの推進について聞く。
先ほど、佐藤委員の質問でも再生可能エネルギーの飛躍的推進が本県の復興に大きく影響するとの話があり、まさにそのとおりと思う。
ただ、再生可能エネルギー、省エネ等については、総合的に考えていく必要がある。例えば、技術的問題、時間的問題、耐久性等のため、直ちにガソリン車が電気自動車に移行することはない。そのため、しばらくはハイブリッド車でつないで、徐々に電気自動車へ移行していく流れと思う。
一方、再生可能エネルギーから生み出される電力は、安定性に問題がある。
きのう、北海道東北未来戦略トップセミナーが開催され、その中でも最先端の再生可能エネルギー分野に民間の投資を呼び込み、本県の産業振興や地域活性化につなげるとの意見交換がなされたと聞いている。長期総合計画の中でも、再生可能エネルギーのポテンシャルの高さがうたわれているが、電力の品質の問題を考えれば、本格化させるにはある程度の時間がかかる。電力の品質が下がることは、産業界にとっては非常に大きなリスクであるので、徐々に再生可能エネルギーにシフトしていき、その間は石炭やLNG(液化天然ガス)等の火力発電でつなぐ必要がある。
実際に東北電力管内では、既にLNGコンバインドサイクル発電という複合発電に置きかえる流れがある。また、今定例会の一般質問では、世界でもトップレベルの石炭ガス化発電の議論があり、あるいは被災前の原町火力発電所での木質チップの混焼燃料など、省エネや環境に配慮した技術が必要である。
原発被災県としては、10数年のうちに化石エネルギーから再生可能エネルギーに徐々に切りかえていかなくてはならず、次の世代のために、本県がどのようなエネルギー社会を目指していくのか、全国の自治体から大変注目される長期総合計画と思う。
そこで、再生可能エネルギーの推進とともに、本県の復興のために、環境配慮型の化石燃料発電施設の役割が重要になるものと思うが、どうか。
企画調整部長
環境配慮型の高効率の火力発電については、従来型の火力発電からの転換を図ることで、低炭素社会の実現に大きく貢献するとともに、電力の量的安定と系統安定を確保する上で、重要な役割を果たしていくものと認識している。
県としては、本県の復興や地域振興、低炭素化への貢献等を十分見きわめながら、環境配慮型の高効率の発電施設の拡充等に適切に対応していく。
立原龍一委員
最後に、過疎・中山間地域の活性化、振興について聞く。
過疎・中山間地域の活性化は、本県の政策分野別の主要施策であり、「[ふくしまの礎]人と地域が輝くふくしま」の象徴的な課題である。
これまでの本県は、過疎・中山間地域における2世代、3世代同居あるいは継続して住み続けることが地域の伝統や県土の保全につながり、農林業や畜産業の振興で働く場と収入が確保され、各種施策が効率的に機能していた。
今後、放射性物質で汚染された過疎・中山間地域の環境の回復なくしては、各種施策による振興は図られないと思う。しかし、長期総合計画における過疎・中山間地域の項目の中には里山に関する放射性物質の記述は一切なく、認識が少し希薄である。
そこで、過疎・中山間地域の振興については、原発事故で汚染された里山の環境回復が原点ではないかと思うが、どうか。
企画調整部長
過疎・中山間地域の振興を図っていくためには、地域力の育成、働く場と収入の確保、生活基盤づくりが施策の重要な柱であり、里山の良好な環境を回復し、美しい自然と共存しながら住民が安全に安心して暮らせる生活の場を取り戻すことが不可欠である。
このため、今年度改定を予定している過疎・中山間地域振興戦略に農林地などの除染を初めとする復興施策を盛り込むとともに、国や市町村との連携のもと、地域のニーズを踏まえた振興策に一丸となって取り組んでいく。
なお、長期総合計画において、除染の問題については、過疎・中山間地域というよりは県全体の除染、環境回復という位置づけで、農林地の除染として記載していることを理解願う。
立原龍一委員
除染は全県的な問題との答弁だが、「[ふくしまの礎]人と地域が輝くふくしま」の中の過疎・中山間地域以外の項目には、放射性物質への懸念、対応について、何らかの記述がされている。過疎・中山間地域においても放射性物質についての認識を持って、注意深く進めてもらうことを要望する。