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第05回: かまぼこ工場「貴千」

 工場見学のつもりでいたが、ひとりの従業員との出会いは、私にたくさんの感動と勇気を与えてくれました。

 工場に着いた時、小松さんというとても元気な若い従業員が出迎えてくれました。小松さんは、図を使いながら外国人の私達に工場のことを説明してくれました。

 小松さんの話によると、震災発生直後、道路の被害も大きく輸送ができない状態だったのでスーパーマーケットの仕入れ担当者が福島県以外からかまぼこを購入するようになりました。どこのかまぼこを買っても同じなので、福島県内の道路インフラの整備が整っても福島産のかまぼこを買うというインセンティブが働きませんでした。

 また、スーパーの仕入れ担当者は、原発事故の影響で買う人がいないのではないかと思われたことも影響しました。いわきで加工されたとはいえ、かまぼこの原料となる魚肉は福県産のものではありません。以前からずっとそうでしたが、かまぼこの原料がどこからきているかという情報は流れないので、震災発生後やはり売り上げが大きく影響を受けました。

 小松さんの話を聞くと、福島県が受けている風評被害を感じ取ることができました。しかし、貴千では、風評被害ということを理由とせず、震災以前の経営方針や商品を改めて考え、震災を機に新たな経営方針を作成しました。それは、どこでも同じようなものができる板かまぼこではなく、個性的で、おいしいかまぼこを作ることでした。そして、貴千では「いわき小名浜のかまぼこ」と名乗ってPRするようになりました。それは、福島には注目が集められ、知名度をあげられると考えたからです。

 何より、震災の前も震災後も、小松さんをはじめ、工場で働く従業員すべてが心を込めて美味しいかまぼこを作るというモットーに変わりがありませんでした。

 私は人々がこの工場に来てかまぼこを食べ、その品質の高さに気づいてほしいです。それからかまぼこを購入してほしいです。

 工場見学を通じて、小松さんの言葉は私に強く影響を与えました。私は彼の話を通訳しながら、「いわきには、このように復興について前向きに考える人がいるんだ」と思いました。現状を違う角度で見ること、希望を持って故郷の為に何かをしようとすること、私は小松さんの意気込みに強く惹かれました。

 今回のツアーでは、ここが私にとって一番印象深い場所でした。美味しいかまぼこも印象深かったが、前向きな人々の姿が私にいろいろ考えさせてくれました。

 (投稿者:ビビアン)

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