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2014年第一回留学生スタディツアー参加者レポート06(王 月さん)

大学名: 福島大学名前: 王 月(中国)

 6月の終わりに、私は福島県国際課主催の第一回留学生スタディツアーに参加しました。このツアーを通して、私は県産品の安全性を厳しくチェックする福島県農業総合センターや、日本でも有名な史跡・鶴ヶ城、東日本大震災時に迅速な対応を取って県民の避難と人命救助を行った福島空港、アクアマリンふくしまなどといったスポットを見学することができました。さらに、私は今回のツアーをきっかけに、福島県の歴史や文化、自然環境への理解を深めるだけでなく、心のどこかに抱いていた不安を取り除くこともできました。私は、福島県について再認識するようになり、この美しくきれいで、安全でずっと頑張っている福島県を今まで以上に好きになりました。

 降りしきる霧雨のなか。私たちはバスに乗り、今回のツアーにおける最初の目的地――福島県農業総合センターに着きました。センターのスタッフは私たちに、福島県が県産農作物に対して、厳格なモニタリング検査を行い、食品の安全性を確保する取り組みを紹介しました。また、食品中に含む放射線物質の基準関して、日本国が定めた上限は世界より遥かに厳しいものであり、震災後はいっそう厳しくなったということを私たちに説明してくれました。正直に言いますと、私はこれまで福島県産の食品の安全問題についてどことなく不安を感じており、「放射線物質に汚染された食べ物を口にしたのではないか」と心配したこともありました。中国では、「危険な場所ほど安全な場所である」という俗語があります。その言葉通りに、食品安全について一番心配する福島県だからこそ、一番厳しい検査を受け、安全かつ安心な食べ物を口にすることができるのかもしれません。 

 農業総合センターの見学を終えて、私たちは再びバスに乗り、次の目的地に旅立ちました。沿路では、新緑に満ちた景色を大いに楽しむことができました。緑色の田んぼ、緑色の山々、緑色の木々が、霧雨に相まって神秘的な美しさを増していました。田舎ならではの澄んだ空気を深呼吸すると、早起きの疲れもいつの間にぶっ飛んでしまいました。程なく時間がたつと、私たちはかの有名な鶴ヶ城に到着しました。鶴ヶ城の天守閣は、赤瓦の屋根と白塗りの壁によって、優雅さと凛々しさを兼ね備えていました。その姿は、まるで大空を舞う白鶴のようでした。さらに、その日の曇り空を背景に映った鶴ヶ城を見上げますと、我を動じない、毅然とする江戸時代の侍を彷彿させてくれました。その後、私たちは博物館に改修した天守閣の内部に入りました。目を奪うほどたくさんの骨董品が陳列されており、神秘なる日本の伝統美が漂っていました。天守閣の最上階に登り、会津若松市の街の全景を俯瞰しますと、言葉では言い表せないほどの感動が湧き上がりました。天守閣を降りると、侍を扮した2人のスタッフは私に記念写真を撮ろうと誘ってくれました。周囲を見渡しますと、スタッフの一人ひとりは、真心と情熱を込めて、訪れてきた観光客をもてなしていました。これこそ、鶴ヶ城を支えているもの、福島を支えているものだと、私は思いました。

 その後、私たちは福島空港に着きました。スタッフは、福島空港の防災設備の設置や定期防災訓練などといた措置策を私たちに紹介してくれました。これらの措置策のおかげで、震災時福島空港が迅速に人員救助及び県民の避難を行うことができました。説明を聞いて、私は福島空港の完全なる危機対策に、ただただ脱帽するしかありませんでした。

 空港の敷地内にあるソーラーパークには、10の国の30メーカーからのソーラーパネルが展示されています。その中なんと、私のふるさと――中国河北省保定市に本社を据えるインリーソーラーの製品もありました。異国の地でふるさとの製品に出会えることで、なんだか誇らしく思えるようになりました。感動するあまりに、私はこう思いました――私と世界との繋がりは、福島と世界との繋がりの一部でもあります。

 ツアー初日の夜、私たちはいわき市の海辺にある旅館に泊まりました。世界中の国々からの友達と一緒に「相部屋」をするのは実にいい体験でした。言葉も文化も肌の色も違う私たちは、同じテーマを巡って、同じツアーに参加することができました。私たちは一緒に食事をして、一緒にツアー沿路の風景を眺めて、すぐに仲良くなりました。「旅こそ、一番いい友たちの作り方」とよく言われますが、まさにその通りだと思います。

 翌日の早朝、私たちはいわき市にあるオーガニックコットンの畑に行きました。そこで、私たちはコットンの栽培を手伝いました。韓国人留学生の女の子は笑いながらはしゃぎ回っていました。好天候に恵まれていないにもかかわらず、みんなは笑顔で農作業を楽しみました。その後、私たちはオーガニックコットンを使って小さな人形作りに挑戦しました。みんなが想像力を最大限に活かして、オリジナリティ溢れる作品を作りました。 

 オーガニックコットンのボランティアセンターを後にして、私たちは津波被害でダメージを受けた環境水族館アクアマリンふくしまを訪れました。水族館は名前通りに、蒼き宝石のように輝いていました。水族館のスタッフは私たちに津波襲来時の様子や周辺地域の被災状況について説明し、環境保護と防災意識の重要性を教えてくれました。説明のあと、私は複雑な気持ちを抱きながら水族館を見学しました。内陸地方に生まれ育った私にとって、至近距離であらゆる奇妙な海洋生物を観察できるのは、本当に面白い体験でした。

 水族館の見学を終え、私たちは久ノ浜海岸に着きました。ここは震災時最も津波の被害を受けた地域の一つです。しかし、廃墟と化した海岸沿いに、ただ1つの小さな神社が、無常にも押し寄せた津波から無傷に残されました。これは、現地住民たちの尊い意志による神のご加護ではないかと思います。いわき建設事務所の職員による久ノ浜海岸の再生計画についての説明を聞いて、私は久ノ浜地区がきっと美しさと希望を取り戻せると確信しました。海岸の近くにある仮設商店街で、私は現地の住民たちの笑顔に触れました。元気な子どもたちの姿を見て、私はさらに自信が増しました――福島県民の逆境にめげずに立向う勇ましさこそ、私が一番学ぶべきものだと思うようになりました。

 今年の夏休み、私は東京に行きました。奇しくも、新宿の中華料理店で食事する時に、イギリス留学を終えた先輩に出会いました。先輩は私と同じく、中国保定市出身で、かつて福島大学で一年間の交換留学を経験していました。但し、彼女が福島大学に在籍したのは十年前で、福島県は、震災や原発事故の影響はまったくありませんでした。福島県は先輩が日本で生活した最初の地であり、福島県と福島県民のことは一度も忘れることがないと言いました。福島県は東日本大震災で大きなダメージを受けたことについて、彼女は我が身同然に心を痛めました。さらに、先輩は日本NHKで数年間働き、震災の後ドキュメンタリー番組取材のため、福島県に戻っていたとのことです。彼女の言葉から、福島県との強い絆を感じました。彼女は、いつか私たち後輩を連れて、震災後の取材で大きな感動をくれた県内各地を再訪すると約束しました。

 私は、今回のスタディツアーは単なる福島県の観光資源や現状理解の視察ではなく、ある種の精神の洗礼にも該当すると思います。おかげで、私は元気と希望に溢れる福島県を見ることが出来ました。そして、いつかきっと、このスタディツアーを通して福島からたくさんのことを教えてもらったことに感謝をすることでしょう。

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