○福島県手話言語条例 平成三十年十二月二十五日 福島県条例第八十六号 福島県手話言語条例をここに公布する。 福島県手話言語条例 手話は、物の名前や概念等を手指の動きや表情等により視覚的に表現する、音声言語とは異なる独自の体系を持つ言語であり、ろう者が日常生活を営むために必要不可欠な言語である。 我が国において、手話は、ろう者の間で思考と意思疎通の手段として用いられ、心豊かな日常生活を営むために明治時代から大切に受け継がれ、発展してきたものである。 しかしながら、ろう学校での読話と発声訓練を中心とする口話法の導入により、手話の自由な使用が制約された時代もあり、平成十八年の国際連合における障害者の権利に関する条約の採択まで、長年にわたり、手話は言語として認められてこなかった。 その後、我が国においても、平成二十三年に障害者基本法が改正され、手話が言語であることが明記されたが、いまだ手話に対する理解が深まっているとは言い難い状況であり、手話を広く普及し、手話に対する県民一人一人の理解を深めていく必要がある。 そこで、手話は言語であるとの認識の下、手話の普及を推進することによって、ろう者とろう者以外の者が互いを理解し、尊重し合いながら共生する社会を実現するため、この条例を制定する。 (目的) 第一条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及等に関し、基本理念を定め、県の責務並びに県民、ろう者及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話の普及等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、県民の手話及びろう者に対する理解の促進を図り、もってろう者及びろう者以外の者が共生することのできる社会の実現に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 ろう者 聴覚障がい者のうち、手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。 二 手話の普及等 手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備をいう。 (基本理念) 第三条 手話の普及等は、手話が独自の体系を有する言語であって、ろう者が知的で心豊かな日常生活又は社会生活を営むために大切に受け継いできた文化的所産であるとの認識の下に行う。 2 手話の普及等は、ろう者の意思疎通を行う権利を尊重し、ろう者とろう者以外の者が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することを基本に行われなければならない。 (県の責務) 第四条 県は、前条に規定する基本理念にのっとり、ろう者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去について必要かつ合理的な配慮(障がいのある人もない人も共に暮らしやすい福島県づくり条例(平成三十年福島県条例第八十五号)第二条第四号に規定する合理的な配慮をいう。以下同じ。)を行うとともに、手話の普及等に必要な施策を推進するものとする。 2 県は、ろう者及び手話通訳者その他の手話を使うことができる者(以下「手話通訳者等」という。)の協力を得て、基本理念に対する県民の理解を深めるために必要な施策を推進するものとする。 3 県は、基本理念に対する県民の理解の促進及び手話の普及等に当たっては、市町村と連携し、及び協力するものとする。 (県民の役割) 第五条 県民は、手話に対する理解を深めるとともに、手話の普及等に関する施策に協力するよう努めるものとする。 (ろう者の役割) 第六条 ろう者は、手話の普及等に関する施策に協力するとともに、手話の普及に努めるものとする。 (事業者の役割) 第七条 事業者は、ろう者に対しサービスを提供するとき、又はろう者を雇用するときは、手話の使用に関し合理的な配慮を行うよう努めるものとする。 (計画の策定及び推進) 第八条 県は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第十一条第二項の規定に基づき策定した福島県障がい者計画において、手話の普及等に必要な施策を定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。 (手話を学ぶ機会の確保) 第九条 県は、市町村その他の関係機関、ろう者及び手話通訳者等と連携し、県民が手話を学ぶ機会の確保を行うものとする。 (学校における手話の普及) 第十条 聴覚障がいのある幼児、児童又は生徒(以下「聴覚障がい児」という。)が通学する学校の設置者は、この条例の趣旨にのっとり、聴覚障がい児が手話を学び、かつ、手話により学ぶことができるよう、教職員の手話に関する技術を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに、聴覚障がい児及びその保護者に対し、手話に関する学習の機会の提供並びに教育に関する相談及び支援に努めるものとする。 (手話通訳者等の養成等) 第十一条 県は、市町村その他の関係機関と連携し、手話通訳者等の養成及び確保並びに手話通訳者等の手話に関する技術の向上を図るものとする。 (手話通訳者の派遣体制の整備等) 第十二条 県は、市町村その他の関係機関と連携し、ろう者が手話通訳者の派遣等による意思疎通支援を受けられる体制の整備を図るものとする。 (手話を用いた情報発信) 第十三条 県は、ろう者が県政に関する情報を円滑に取得することができるよう手話を用いた情報発信を推進するものとする。 (財政上の措置) 第十四条 県は、手話の普及等に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 附 則 この条例は、平成三十一年四月一日から施行する。