○障がいのある人もない人も共に暮らしやすい福島県づくり条例 平成三十年十二月二十五日 福島県条例第八十五号 障がいのある人もない人も共に暮らしやすい福島県づくり条例をここに公布する。 障がいのある人もない人も共に暮らしやすい福島県づくり条例 目次 前文 第一章 総則(第一条―第五条) 第二章 共生社会の実現に向けた施策(第六条―第十三条) 第三章 障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策(第十四条―第十八条) 第四章 福島県障がい者差別解消調整委員会(第十九条―第二十四条) 第五章 雑則(第二十五条・第二十六条) 附則 全ての県民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、互いに人格と個性を尊重し合いながら、共生する社会を実現することは、私たち全ての願いである。 しかしながら、今なお、障がいや障がいのある人に対する誤解や偏見、物理的な障壁といった様々な社会的障壁が存在しており、障がいのある人の社会参加や自立が妨げられるなど、障がいのある人やその家族が暮らしにくさを感じている状況がある。 こうした中で発生した東日本大震災(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。)は、県内に甚大な被害をもたらし、多くの県民が県内外への避難を余儀なくされるなど、本県は新たな課題を抱えることとなった。 このような状況において、県民一人一人が障がいを理由とする差別を身近な問題として捉えるとともに、障がいや障がいのある人に対する理解を深め、一体となって障がいを理由とする差別の解消に向けた取組をなお一層進めていくことで、全ての県民が夢や希望を持ち、安心して暮らせる福島県としていく必要がある。 ここに私たちは、障害者の権利に関する条約、障害者基本法及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の趣旨を踏まえ、障がいのある人もない人も互いを理解し、尊重し、支え合い、共に暮らしやすい社会の実現を目指して、この条例を制定する。 第一章 総則 (目的) 第一条 この条例は、障がい及び障がいのある人への県民の理解を深め、障がいを理由とする差別の解消の推進に関し、基本理念を定め、県の責務並びに県民及び事業者の役割を明らかにするとともに、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、全ての県民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(以下「共生社会」という。)の実現に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 障がいのある人 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がい及び高次脳機能障がいを含む。)その他の心身の機能の障がい(難病等に起因する障がいを含む。)(以下「障がい」と総称する。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二 事業者 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)第二条第七号に規定する事業者のうち、県の区域内において商業その他の事業を行う ものをいう。 三 社会的障壁 障がいのある人が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 四 障がいを理由とする差別 障がいのある人に対し、障がいを理由として、不当な差別的取扱いをすること又は社会的障壁の除去の実施について、それに伴う負担が過重でない場合に、必要かつ合理的な配慮をしないことをいう。 五 合理的な配慮 障がいのある人(障がいのある人がその意思の表明を行うことが困難である場合にあってはその家族等)の求めに応じて障がいのある人が障がいのない人と実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むために必要かつ適切な措置を行うことをいう。ただし、社会通念上その実施に伴う負担が過重になるものを除く。 (基本理念) 第三条 第一条に規定する共生社会の実現は、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。 一 全ての県民は、障がいの有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 二 障がいを理由とする差別の多くが障がいのある人に対する理解の不足から生じていること及び誰もが障がいを有することとなる可能性があることを踏まえ、全ての県民が、障がい及び障がいのある人に対する理解を深める必要があること。 三 全ての障がいのある人は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 四 全ての障がいのある人は、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。 五 全ての障がいのある人は、言語(手話を含む。以下同じ。)、点字、音訳等の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 (県の責務) 第四条 県は、前条に規定する基本理念にのっとり、障がい及び障がいのある人に対する理解を深め、共生社会の実現に向けた施策及び障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施するものとする。 2 県は、前項の施策を策定し、及び実施するに当たっては、市町村と連携するとともに、市町村に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。 3 県は、障がいを理由とする差別を解消するための取組に資するよう、地域における障がいを理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うものとする。 (県民及び事業者の役割) 第五条 県民及び事業者は、障がい及び障がいのある人に対する理解を深めるとともに、共生社会の実現に向けた施策及び障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。 第二章 共生社会の実現に向けた施策 (啓発活動の推進) 第六条 県は、県民が障がいを理由とする差別の解消の重要性について認識し、障がい及び障がいのある人に対する理解を深めることができるよう、必要な啓発活動を行うものとする。 (教育の推進) 第七条 県は、学校、家庭、地域社会等において、幼児期から障がい及び障がいのある人に対する正しい知識を持つための教育が行われるよう努めるとともに、障がいのある幼児、児童及び生徒並びに障がいのない幼児、児童及び生徒が地域で共に学ぶための環境の整備を積極的に推進するものとする。 (交流機会の拡大) 第八条 県は、障がいのある人及び障がいのない人の交流を積極的に促進し、相互理解を推進するものとする。 (社会参加の促進) 第九条 県は、障がいのある人の文化芸術活動、スポーツ、レクリエーションその他の社会参加を促進するため、機会の確保その他必要な施策を講ずるものとする。 (就労の促進) 第十条 県は、障がいのある人の職業選択の自由を尊重しつつ、障がいのある人がその能力に適合する職業に従事することができるようにするため、障がいのある人の多様な就労の機会の確保に必要な施策を講ずるものとする。 (意思疎通手段の確保) 第十一条 県は、障がいのある人の言語及びその障がいの特性に応じた意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会が拡大されるよう、障がいのある人の意思疎通を支援する者の養成その他必要な施策を講ずるものとする。 (理解の促進) 第十二条 県は、県民、事業者又はこれらの者が組織する民間の団体が自発的に行う障がい及び障がいのある人について理解を深める活動を促進するため、情報の提供その他必要な支援を行うものとする。 (災害時の対応) 第十三条 県は、災害その他非常の事態において、障がいのある人が、その障がいの特性に応じた必要な支援を受けることができるよう、市町村その他の関係機関と連携し、必要な措置を講ずるものとする。 第三章 障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策 (不当な差別的取扱いの禁止) 第十四条 何人も、障がいのある人に対して、障がいを理由として、不当な差別的取扱いをすることにより、障がいのある人の権利利益を侵害してはならない。 (社会的障壁の除去のための合理的な配慮) 第十五条 県は、その事務又は事業を行うに当たり、障がいのある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障がいのある人の家族その他の関係者が当該障がいのある人を補佐して行う意思の表明を含む。次項において同じ。)があった場合においては、障がいのある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障がいのある人の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障がいのある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合においては、障がいのある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障がいのある人の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 (相談) 第十六条 障がいのある人及びその家族その他関係者並びに事業者は、県に対し、障がいを理由とする差別に関する相談をすることができる。 2 県は、相談があったときは、次に掲げる業務を行うものとする。 一 相談者に対して、必要な助言及び情報提供を行うこと。 二 相談者と相談内容に関係する者との必要な調整を行うこと。 三 関係行政機関への必要な通告、通報その他通知を行うこと。 3 県は、相談に係る業務を行わせるため、専門的知識及び技能を有する者を相談員として置くことができる。 4  県は、障がいを理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう相談員その他相談業務に関係する人材の育成及び確保のための措置その他必要な体制の整備を図るものとする。 (助言又はあっせんの申立て) 第十七条 障がいのある人は、自己に対して、事業者が障がいを理由とする差別をした事案(以下「対象事案」という。)について、相談によってもなお問題が解決しないと認めるときは、知事に対し、助言又はあっせんの申立てをすることができる。 2 前項の場合において、当該障がいのある人の権利利益を保護するために必要があると認めるときは、当該障がいのある人の家族その他関係者は、同項の申立てをすることができる。ただし、当該申立てをすることが当該障がいのある人の意に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。 (事実の調査) 第十八条 知事は、前条の規定による申立てがあったときは、当該申立てに係る事実の調査を行うものとする。 2 知事は、必要があると認めるときは、相談員に前項の調査の全部又は一部を行わせることができる。 3 対象事案の当事者その他の関係者は、正当な理由がある場合を除き、前二項の調査に協力しなければならない。 4 第一項の調査を行う職員又は第二項の調査を行う相談員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。 第四章 福島県障がい者差別解消調整委員会 (設置) 第十九条 知事の附属機関として、福島県障がい者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。 2 調整委員会は、この条例の規定により定められた事項について助言又はあっせんを行う。 (組織) 第二十条 調整委員会は、委員二十人以内で組織する。 2 調整委員会の委員(以下「委員」という。)は、学識経験を有する者、障がい者及びその家族等で構成される団体を代表する者、障がい者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者、事業者を代表する者、関係行政機関の職員その他知事が適当と認める者のうちから、知事が任命する。 3 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 4 委員は、再任されることができる。 5 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。 (助言又はあっせん) 第二十一条 知事は、第十八条第一項の調査を行ったときは、調整委員会に対し、当該調査の結果を通知するとともに、助言又はあっせんを行うよう求めるものとする。 2 調整委員会は、前項の規定による求めがあったときは、助言若しくはあっせんの必要がないと認めるとき、又は対象事案がその性質上助言若しくはあっせんを行うことが適当でないと認めるときを除き、助言又はあっせんを行うものとする。 3 調整委員会は、助言又はあっせんのために必要があると認めるときは、対象事案の当事者その他の関係者に対して、必要な資料の提出又は説明を求めることができる。 4 調整委員会は、助言若しくはあっせんを行わないこととしたとき、あっせんが終了したとき、又はあっせんを打ち切ったときは、その旨を知事に報告するものとする。 (勧告) 第二十二条 調整委員会は、対象事案の当事者が、正当な理由がなく、あっせん案を受諾しないとき、又は受諾したあっせんに従わないときは、知事に対し、当該当事者に必要な措置を講ずべきことを勧告するよう求めることができる。 2 知事は、前項の規定による求めがあった場合において、必要があると認めるときは、同項の勧告をすることができる。 (公表) 第二十三条 知事は、前条第二項の勧告を行った場合において、当該勧告を受けた者が正当な理由がなく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。 2 知事は、公表しようとするときは、当該公表に係る者に対し、あらかじめ、その旨を通知し、その者又はその代理人の出席を求め、意見を述べる機会を与えなければならない。 (規則への委任) 第二十四条 この章に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。 第五章 雑則 (財政上の措置) 第二十五条 県は、障がい及び障がいのある人に対する理解を深め、共生社会の実現に向けた施策及び障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (規則への委任) 第二十六条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。 附 則 (施行期日) 1 この条例は、平成三十一年四月一日から施行する。 (検討) 2 知事は、この条例の施行後三年を目途として、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)の施行状況、社会経済情勢の推移等を勘案し、この条例の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。   附 則(令和六年条例第四四号) この条例は、令和六年四月一日から施行する。