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国定公園の保全と
これからの地域振興に向けて

『越後三山只見国定公園
編入記念シンポジウム』

[ YouTube配信 ]
2022年7月13日(水)開催
(アーカイブ配信)

◎2022年7月13日

◎金山町 御神楽館

7月13日、大沼郡金山町の御神楽館を会場に、「越後三山只見国定公園編入記念シンポジウム」が開催された。当日は晴天に恵まれ、輝く夏の緑に包まれる環境の中、国や県、市町村などの関係者や一般参加者など、およそ100人が参加した。

環境省と福島県は、ふくしまグリーン復興構想に基づき、只見柳津県立自然公園とその周辺地域の越後三山只見国定公園への編入を進めてきた。昨年10月、編入手続が完了し、全国で2番目に広大な面積を有する国定公園が誕生した。

シンポジウムは、新たな越後三山只見国定公園の誕生を記念して開催され、国定公園の魅力と価値を再認識するとともに、今後の保全や利活用、そして地域振興について討議された。

地域の宝を再発見し、磨き、発信

オープニングでは、内堀雅雄福島県知事、奥田直久環境省自然環境局長、押部源二郎金山町長が挨拶。

内堀知事は、国定公園編入はゴールではなくスタート、「地域の宝を再発見すること、磨くこと、発信すること」が国定公園を輝かせていくために重要であり、主役はこの会場にいるひとりひとりであると呼びかけ。

奥田局長は、国立・国定公園が外から訪れる人だけのものではなく、地域の人々が自分たちの宝として普段から楽しむ場所であるべきと語った。

押部町長は、ブナなどの原生林と貴重な野生動物の生息地が残るこの地域の豊かな自然を保全し、後世に残し、より楽しんでもらえるように、環境整備を行いたいと決意を述べた。

■基調講演

基調講演では、福島県と包括連携協定を結ぶ、株式会社モンベルの代表取締役会長辰野勇氏が「アウトドア7つのミッション」をテーマに、また、福島県復興への活動を続けるタレントのなすび氏が「奥会津の自然の魅力について」をテーマに、それぞれ講演を行った。

「アウトドア 7つのミッション」

モンベル辰野会長は、創業時からの「モノづくり」への想いや、自然を舞台とした活動を応援する「モンベル・チャレンジ・アワード」などの社会貢献活動について紹介。そして、モンベルの掲げる「7つのミッション」について話した。

7つのミッションとは、「自然環境保全意識向上」、「野外活動を通じて子供たちの生きる力を育む」、「健康寿命の増進」、「自然災害への対応力」、「エコツーリズムを通じた地域経済活性」、「一次産業への支援」、「高齢者・障がい者のバリアフリー実現」。

この7つを基軸にして、様々な自治体、企業、学校と連携し、アウトドアを通じて、地域や夢を持つ人たちを盛り上げたいと思いを語った。

株式会社モンベル 代表取締役会長 辰野 勇 氏

日本のトップクライマーとして日本初のクライミングスクールを開校。株式会社モンベル設立のかたわら、1991年、日本で初めての身障者カヌー大会「パラマウント・チャレンジカヌー」をスタートさせるなど、社会活動にも注力。近年では、びわこ成蹊スポーツ大学客員教授や、天理大学客員教授など、野外教育の分野で活躍している。

「奥会津の自然の魅力について」

なすび氏は、「霧幻峡の渡し」の体験や、炭酸泉の露天風呂の入浴体験、金山町の「前山」登山で見つけた絶景、只見町の「恵みの森」を訪れたエピソードなどを披露。奥会津の自然の魅力、食の魅力について紹介した。また、JR只見線全線再開通の話題にも触れ、これからもっと奥会津を訪れ、その魅力を発信していきたいと意気込みを語った。

タレント なすび 氏

東日本大震災で被害を受けた地元福島を元気づけたいとの思いから、それまで登山は未経験だったにも関わらず、エベレスト登頂を目指し、4度目の挑戦で登頂を果たす。また、福島県復興のために積極的に活動する著名人として、環境省の「福島環境・未来アンバサダー第1号」に任命されるなど、多岐にわたって活躍している。

■特別発表
「奥会津の振興について」

続いて、会津大学短期大学部の髙橋延昌教授が、「奥会津の振興について」をテーマに、学生を中心とした地域との関わりについて特別発表を行った。

「奥会津プロジェクトチーム」の立ち上げや、「JR只見線食育弁当」の開発、金山町観光物産協会のロゴデザイン、只見町の「三石神社」の紹介冊子制作、「JR只見線ブライダルトレイン」の装飾などの活動実績を紹介。少子高齢化や地方からの人口流出が進む状況下、環境維持や地域振興には若い力が必要であると強調した。

会津大学短期大学部教授 髙橋 延昌 氏

グラフィックデザインが専門、奥会津をフィールドに地域振興に尽力。研究室の学生と共に地域に元気を届けている。

■パネルディスカッション
「国定公園の保全と地域振興について」

その後、「国定公園の保全と地域振興について」をテーマにパネルディスカッションが行われた。

モンベルの辰野勇会長、只見線地域コーディネーターの酒井治子氏、内堀雅雄知事がパネリストとして登壇。新潟大名誉教授の崎尾均氏がコーディネーターを務め、国定公園の保全や利活用について議論した。

一つ目の議題は「越後三山只見国定公園の魅力について」。

酒井氏は、列車の走行景観等が国定公園の重要な資源の一つとなっているJR只見線での車内販売と観光案内といった活動の紹介や、ドキュメンタリー映画の制作などにより、只見線の魅力が全国に広がっていることについて話した。内堀知事は、これまで話題に上がった国定公園地域の宝を様々な見方で再発見し、また、発信の仕方を変えていくことも重要であると強調。辰野会長は、企業の目線から、社会貢献活動と経済性のバランス、ここにしかない地域の魅力発信、リピーターを生むおもてなしの重要性について言及した。

二つ目の議題は「国定公園の保全と地域振興に向けて、今、私たちができること」。

辰野会長は、世界中の自然公園を訪れた経験から、自然公園には道路とトイレの整備が不可欠であり、整備にはお金がかかることを指摘。屋久島での取組を例に、費用を受益者が負担する形があってもいいのではないかと提言。

酒井氏は、県立只見高校の総合探求学習と連携した活動を紹介。子どもたちのやりたいことを叶えつつ、JR只見線の魅力をしっかり伝えることで未来につなげたいと話し、JR只見線全線再開通とともに、更なる魅力発信への意欲を示した。

内堀知事は、「地域の宝を磨く」ということについて、笑顔を磨くこと、トイレを磨くことで「また訪れたい」地域づくりをすることを提言。また、ひとりひとりが身近な人に声をかけて、実際に足を運んでもらうことからスタートして、国定公園の魅力を一歩一歩伝えていくことの必要性を語った。

最後に、崎尾教授が、外部の人の力も借りながら地域の魅力を再発見し、磨きあげ、情報発信すること、そしてそれを経済活動に結び付けていくことが今後の国定公園の保護と地域振興を考えるうえで重要であるとして、シンポジウムを締めくくった。

新潟大学名誉教授 崎尾 均 氏

森林生態学を専攻し、現在は新潟大学名誉教授、また、佐渡自然共生科学センターのフェローとして、佐渡の演習林に研究室を持ち研究を続ける。ユネスコエコパークに登録されている只見町で活発にフィールドワークをしている。

只見線地域コーディネーター 酒井 治子 氏

只見町出身で、JR只見線の利活用や地域の活性化に取り組み、2018年より福島県から委嘱を受け、「只見線地域コーディネーター」として活躍している。

参加者には、只見中学校の生徒が作成した「エコバッグ」やブナの間伐材で作られた「SDGsバッジ」などが配布された。

エントランスには、県内の4つの国立・国定公園を紹介する写真パネルと、会津大学短期大学部の取組を紹介するパネル等が展示された。

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