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2014年6月定例会 一般質問 紺野長人議員

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年11月4日更新
紺野長人議員 
議員

紺野長人

所属会派(質問日現在)

民主・県民連合

定例会平成26年6月
質問等一般質問
質問日6月25日(水曜日)

11番(紺野長人君)民主・県民連合の紺野長人です。

 最初に、震災と原発事故から3年3カ月を経過した今、改めて知事の復興への理念についてお尋ねします。

 私は先日、飯館村の長泥から福島市に避難をしている行政区長の話を聞くことができました。区長は最初に、「東京オリンピックの開催や復興イベントで盛り上がっているのを見ると、3年たって何も変わっていない自分たちが忘れ去られ、取り残されているような気がする。」と、苦しい胸の内を吐き出すように訴えました。住む地域や置かれた立場によって県民の間で復興スピードの格差が広がり続けていることを指摘する厳しい言葉でした。

 それでも区長は最後に、「美しい風景やみんなが集った地域の祭りなど、避難して初めてふるさとのすばしさに気がついた。ふるさとで暮らせる皆さんは、今身近にある小さな喜びを大切にしてほしい。」と、反対に私たちを思いやってくれました。その言葉には、苦しい避難生活の中にあっても、一人の県民としてみんなで一緒に前に進みたいとの思いが込められていたのではないでしょうか。

 中間貯蔵施設の問題一つをとってみても、みんなで前に進んでこそ展望が見えてくるのであって、区長の思いに政治や行政が政策で答えを出すことなしに福島県の本当の復興はありません。

 そこで、震災、原発事故から3年を経過した今、知事は県民一人一人が復興を意識できる施策を今後どのように進めていくのかお聞かせください。

 次に、高いストレス状態から子供たちを守るための施策についてお尋ねします。

 福島大学の災害心理研究所は、県内の1,300人を超える子供のストレスレベルを調査した結果、福島市や郡山市など線量の高い地域の子供を中心に高いストレス状態にあることを確認し、対策が急がれると指摘をしています。また、母親と子供のストレス状態に相関関係があることから、被曝による子供の健康被害を心配する母親の不安行動がその原因としています。低線量被曝がどのような健康被害をもたらすかはわからないとしても、放射能汚染のもとで子供たちの高いストレス状態は確実に進行しており、危機感を持って、一日も早くその対策に当たるべきです。

 近年の医学は、心の異常や変化を科学的な体の変化として捉え、どのような仕組みでストレスが健康被害をもたらすかを明らかにしてきました。子供の高いストレス状態を放置すると、心身の発達をつかさどる脳の海馬組織が委縮障害を受け、運動能力の低下や肥満だけでなく、人間関係がつくれない、すぐにキレやすい、鬱などの精神疾患にかかりやすいといった人格形成にも悪影響を及ぼすことを解明しています。

 一方で、適度な運動や太陽の光を浴びることによって、または親子の触れ合いといった人と人との良好な関係によってストレスを和らげる物質が体内で盛んに分泌されることも解明しています。

 教育現場や保育現場において子供のストレス軽減に教職員や保育職員が取り組むためには、ゆとりを持って子供たちと接する時間を確保することが必要ですが、その前提として、どのような行動がストレスを軽減するのか、どのような子供との接し方がストレスを和らげるのかといった医学的知見に基づく知識を教職員や保育職員が共有し、意識を持って教育や保育に当たることが重要です。

 そこで、公立小学校において児童のストレスに関する医学的知見に基づいた情報を教員が共有することが重要と思いますが、県教育委員会の考えをお示しください。

 また、子供のストレス軽減に関する知識を保育士が共有するための取り組みが重要と思いますが、県の考えをお示しください。

 次に、警察職員のメンタルケアについてお尋ねします。

 県立医大が避難自治体を調査した結果、15%の職員が重大な鬱状態にあり、放置すれば自殺などにつながりかねないと警鐘を鳴らしています。県や県内の自治体職員、教職員、警察職員も、程度の差はあるにしても、同様の傾向にあるのではと推測され、特に責任感や正義感が強い職員ほど高いストレス状態に陥りやすいことからすると、警察職員のメンタルケアは緊急の課題と言えます。

 県警察では、厚生労働省がこのたび義務化したストレスチェックを既にアンケート方式で実施しているとのことですが、最近はストレス状態を血液や唾液検査で見きわめる方法も開発されています。今後は、ぜひこうした検査も積極的に取り入れながら、より客観的に職員一人一人の精神状態を把握し、メンタルヘルス対策の改善をお願いしたいと思います。

 また、高いストレス状態は職員本人が気づかないまま進行することが多く、幹部職員がメンタルヘルスに関する知識と目的意識を持って部下を見守ることが重要です。

 そこで、県警察のメンタルヘルス対策に関する幹部職員等の研修の取り組みについてお示しください。

 ここまで申し上げてきたように、原発事故は3年を経過した今も多くの県民に重大な精神的被害をもたらしています。

 このほど「原発事故・損害賠償を求める福島の会」のもとで約4千5百人の県民が精神的賠償の増額を求め、原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介の申し立てを行いました。

 これに対し、センター側からは「自分たちは国が設置した機関であり、政府の原子力損害の判定等に関する中間指針の枠内でしか和解案は提示できない。」との考えが示されました。

 これでは結局、原発事故の被害範囲を政府が固定し、福島県民の精神的苦痛を賠償から排除していることになります。背景には、国内原発の再稼働に向け、事故の被害をより小さく見せかけ、早く風化させたいという政府の思惑が見えますが、紛争解決センターがそうした政府の隠れみのだとしたら、福島県民の苦しみは行き場を失ってしまいます。

 そこで、原発事故による県民の精神的損害の賠償が十分になされるよう国に指針の見直しを要請すべきと思いますが、県の考えをお示しください。

 次に、少子化対策についてお尋ねします。

 厚生労働省が公表した昨年の合計特殊出生率は1.43と、さらに日本が世代構成のゆがんだ国になることを示しています。

 政府は、骨太方針に結婚から育児までの切れ目ない支援を盛り込むようですが、一方では、アベノミクスの成長戦略のもとに裁量労働制を拡大し、時間外手当を支給せずに無制限に長時間労働を強いる仕組みをつくろうとしています。これでは、仕事と家庭の両立どころか、今以上に子を生み育てる権利を労働者から奪うことになり、ちぐはぐな政策そのものと言わざるをえません。

 政治に求められているのは、ブラック企業に労働法制を合わせるのではなく、中小零細企業が労基法や労安法を遵守しても経営が成り立つような社会をつくることです。そして、行政には、法に基づく監督を強化し、労働者の生活や権利を保障する中から子を生み育てる環境を整えることが求められています。

 そこで、違法な労働の撲滅に国と連携し取り組むべきと思いますが、県の考えをお示しください。

 次に、労働者の収入と少子化についてですが、内閣府の子ども・子育て白書によると、20代・30代男性の既婚率は、年収が500万から600万円未満では約37%なのに対し、300万円未満では約9%と、低賃金労働者の拡大が少子化の大きな要因であることを明確に示しています。

 また、30歳から35歳男性の正規雇用者の既婚率が約60%なのに対し、非正規雇用では半分の30%にとどまっています。

 労働者が家庭を築き、子供を生み育てるためには、安定した収入と安定した雇用は欠かせない要件であり、政治にはその環境をどうつくるのかが問われています。しかし、この点でもアベノミクスの成長戦略では、派遣労働の期限撤廃やジョブ型正規雇用の導入に動き出すなど、少子化対策に逆行する政策を進めようとしています。

 原発事故によって、安心して子を生み育てる環境が損なわれている福島県において、真剣に少子化対策に取り組むのであれば、県内の賃金底上げは避けて通れない課題です。

 そこで、県内の最低賃金の引き上げを国に要請すべきと思いますが、県の考えをお示しください。

 次に、産科医の確保と定着についてお尋ねします。

 厚生労働省の調査では、平成24年12月における県内の産科医数は人口10万人当たり6.1人と、全国でもワースト2の深刻な状況となっています。

 産科医の確保に向けた取り組みの実効性を高めるためには、県内の産科医がなぜ減少したのかを明らかにし、その原因に基づいた施策を進めることが重要です。

 その一つは、県立大野病院における医療事故訴訟に至る一連の経過の中で県の対応に問題があったことは否めません。この事件を通して、多くの産科医は「福島県は自分たちを見捨てた。」とのイメージを抱き、県外へと去ってしまいました。

 また、当該医師の逮捕に及んだことから、産科は割に合わない診療とされ、多くの若い医師が産科医をやめ、さらに産科を希望する学生が減少してしまいました。

 県内の産科医不足を解消するためには、こうした原因に立ち返り、医療事故が起きにくい環境をつくるとともに、福島県は医療事故から産科医を守るという強いメッセージを発信することが重要です。そのためには、県内で分娩を扱う医師に対し、医療事故に関する訴訟や賠償への支援制度が必要であることを強く訴えておきたいと思います。

 産科医の定着率低下となり手不足のもう一つの大きな原因は、極めて厳しい勤務環境にあります。県内の昨年の合計特殊出生率が1.53に回復したと公表されましたが、全国ワースト2という少ない状況で1人の産科医がそれだけ多くの分娩を扱ったことになります。

 分娩は365日、夜、昼の関係なく対応しなければならないため、一人勤務の産科医は常に待機の状態に置かれ、心身ともに休まるときがありません。地域単位で産科医が連携し、交代で時間外や休診日の分娩に対応するような仕組みがあれば、こうした状況は緩和されますが、そのためには行政がその仕組みづくりをスタートさせる必要があります。

 また、継続して診察していない患者の分娩を扱うことによる医療事故へのリスクと不安を解消するためには、産科医間で患者情報を共有化するシステムも必要となります。

 そこで、分娩取扱施設が連携する仕組みづくりが必要と思いますが、県の考えをお示しください。

 次に、ふくしま国際医療科学センターにおける計画的な医療人材の確保についてお尋ねします。

 原発事故後の県内においては、看護師を初めとする医療人材不足が地域医療と医療水準の確保に重大な影を落としています。そうした中で、センターにおいては今後さらに多くの看護師を必要としますが、これを無計画に募集した場合、県内の養成数との関係から、他の医療機関の人材確保にまで影響を及ぼすことになります。

 そこで、ふくしま国際医療科学センターの先端診療部門においてはどのように看護師を確保していくのかお示しください。

 最後に、県民健康調査のもとで生じた医療費の負担についてお尋ねします。

 原発事故当時18歳以下だった県民の甲状腺検査は1巡目を終え、90名が甲状腺がんの疑いとされ、うち50名ががんと確定しています。この90名が放射線被曝によるものかどうかは結論が得られないとしても、県民健康調査に関連して手術やその後の診察が必要となったわけですから、その費用については全て事業の一環として財源が確保されるべきです。

 そこで、県民健康調査の甲状腺検査の結果、県民が負担することとなる医療費については国の責任で財源措置するよう要請すべきと思いますが、県の考えをお示しください。

 また、現在は県が独自に18歳以下の医療費無料化を実施しているため、18歳以下であれば実質的には個人負担は生じません。しかし、19歳になった時点から個人で支払うこととなり、精神的・肉体的負担に加え、経済的負担まで負わせています。

 検査はするが、後は個人の責任でというのでは、「県民をモルモットにしてデータ収集をしているだけでは。」と疑う県民がさらにふえ、県民健康調査への協力が今以上に得られなくなってしまいます。

 医学的知見では、年齢を増すごとに甲状腺がんの発症率が高まることからすると、現在の超音波検査の継続によって19歳以上の甲状腺がん患者は今後さらに増加し、自己負担を強いられる県民が拡大することになります。その費用については、当然に国の責任で措置されるべきですが、事故から3年を経過し、既に手術費等を個人で支払っている事例が生じています。

 そこで、県民健康調査の甲状腺検査の結果、県民が負担することとなる医療費については、当面の措置として県が負担する制度を早急につくるべきと思いますが、県の考えをお示しください。

 終わりに、福島県が胎動の年として復興へと大きく躍進するときほど、もう一方では、県民一人一人の暮らしにくまなく光を当て、見守っていくことが大切であることを申し添えて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

●副議長(青木 稔君)執行部の答弁を求めます。


知事(佐藤雄平君)紺野議員の御質問にお答えいたします。

 復興の進め方についてであります。
 
先日、「ふくしまっ子10万人の笑顔プロジェクト」が開催され、県内の小学生が紙皿に思い思いの笑顔を描き、その作品を集めた巨大なオブジェを拝見してまいりました。一つ一つの笑顔が個性豊かで、元気とエネルギーに満ちあふれておりました。笑顔は、何にもまさる復興の原動力であります。

 一方で、この笑顔の中にも避難を続ける子供がいることを決して忘れてはなりません。したがって、私は一人一人に思いを寄せた復興を着実に進めることが極めて重要であると改めて感じたところであります。

 震災から3年3カ月が経過し、被災者が抱える課題も多様化・複雑化しております。このため、生活の再建や事業再建への支援、また住宅の確保、健康対策などの施策をそれぞれの復興の段階に応じ、きめ細かにしっかりと推進してまいります。

 あわせて、最先端の再生可能エネルギー等の拠点の整備、災害対応ロボット開発などを目指すイノベーション・コースト構想など、子供や若者が将来に夢、希望、誇りを持てる施策をしっかりと推し進め、「新生ふくしま」の構築に向けて、県民が目に見える、実感できる復興に全力を傾けてまいる考えであります。

 その他の御質問につきましては、関係部長等から答弁させます。

総務部長(鈴木正晃君)お答えいたします。

 ふくしま国際医療科学センターの先端診療部門につきましては、小児医療や総合周産期母子医療等の充実強化を計画しており、多くの看護師が必要となります。

 県立医科大学では、県内の看護師の需給状況を踏まえ、他の医療機関等に配慮しながら段階的に採用を進めることとしております。

保健福祉部長(鈴木淳一君)お答えいたします。

 分娩取扱施設の連携につきましては、現在、病院勤務医の負担軽減を目的として、開業医が病院産婦人科等の診療応援を行う病診連携事業に取り組んでいるほか、県が運用している周産期救急医療情報システムを活用し、周産期母子医療センター、協力施設及び開業医が連携し、患者紹介や母体搬送等が行われているところであります。

 県といたしましては、産婦人科医の負担軽減や医療安全の観点から、引き続き専門家等で構成する県周産期医療協議会における意見等を踏まえながら、分娩取扱施設間の一層の連携について検討してまいりたいと考えております。

 次に、甲状腺検査の結果生じた医療費につきましては、現在国において原発事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議を設置し、医療に関する施策のあり方等について検討が進められており、県といたしましては、国に対し、本県の実情を十分踏まえたものとなるよう求めてまいる考えであります。

 次に、甲状腺検査の結果生じた医療費に係る制度につきましては、現在国の専門家会議において医療に関する施策のあり方について検討しているところであり、この検討状況を注視してまいりたいと考えております。

商工労働部長(星 春男君)お答えいたします。

 違法な労働の撲滅につきましては、県庁内に設置した中小企業労働相談所においてさまざまな労働相談に応じ、法違反の疑いがある場合には、監督官庁である労働基準監督署への申告を助言するとともに、国等と連携して労働関係法令の周知・啓発を図るなど、きめ細かな対応に努めております。

 今後は、これらに加え、企業訪問や福島労働局と連携したセミナーの開催等を通じ、労働者が働きやすい職場環境づくりに向け積極的に取り組んでまいります。

 次に、最低賃金につきましては、国が法律に基づき、労働者の生計費や賃金、さらには企業の生産活動などの経済指標等を考慮して決定することとされており、県といたしましてはこれを尊重すべきものと考えております。

原子力損害対策担当理事(伊藤泰夫君)お答えいたします。

 原発事故に伴う県民の精神的損害につきましては、市町村とともに、国、原子力損害賠償紛争審査会に対し、損害の範囲を幅広く捉え、被害の実態に見合った賠償が公平かつ迅速になされるよう、指針への適切な反映を求めてまいりました。

 今後も、個別具体的な事情への対応を含め、賠償が的確になされるよう取り組んでまいります。

子育て支援担当理事(小林武正君)お答えいたします。

 子供のストレス軽減に向けた取り組みにつきましては、発達段階に応じ対応することが重要であり、県では日々の保育に加え、保護者の支援も行っている保育士に対し、研修を実施しております。

 この研修は、国立保健医療科学院と連携し、臨床心理士や小児科医を講師に心のケアや遊びの工夫などを学ぶ3日間の総合的な内容で、昨年度から延べ6カ所で開催しております。

 今後とも、多くの保育士が子供のストレス軽減に関する専門的な知識を共有できるよう研修の充実に取り組んでまいる考えであります。

教育長(杉 昭重君)お答えいたします。

 児童のストレスに関する医学的知見に基づいた情報を教員が共有することにつきましては、児童生徒の心のありようを的確に把握するための一助となることから、全公立小中学校の担当教員を対象とした研修会において、専門的な知識や適切な対処法等についての大学教授等による講話を行うとともに、受講者がその内容を各学校において伝達することにより、全教職員が情報を共有できるよう取り組んでまいる考えであります。

警察本部長(名和振平君)お答えいたします。

 幹部職員等へのメンタルヘルス対策に関する研修につきましては、部外から産業精神医学等の専門家を招いて、メンタルヘルス上の問題を早期に発見するための知識や管理職に求められるスキルなどについて実践的な研修を実施しております。

 メンタルヘルス対策は、組織管理上、重要な課題であり、引き続き管理職等の知識・技能の向上に取り組んでまいる考えであります。

副議長(青木 稔君)これをもって、紺野長人君の質問を終わります。

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