中通り35(矢祭町):東北の南限に吹く春の風(ハマナカアイヅ)
福島県、そして東北地方の南限
一時帰国や家族の来日時は、国道118号線を経由して茨城空港を使うことが多いです。
国道を進むにつれ、石川町、浅川町、棚倉町、塙町、矢祭町….と関東方面へと抜けて行きます。
県北地方在住の自分にとっては、これらの自治体は、神秘感さえ感じています。
改めて、福島県の広さに脱帽します。
東北の最南端の町と言えば、「いわき市」や「檜枝岐村」、「南会津町」などの自治体が思い浮かぶ人は多いでしょうが、自分はあえて「矢祭町」に一票を入れたいと思います。
だって、本当に遠いです。
福島市から行く場合、所要時間はかの「昭和村」と負けず劣らず、3時間ほどかかります。
戸津辺のサクラ
矢祭町では、「戸津辺のサクラ」と呼ばれる一本の巨木があります。
桜前線の北上に伴って開花し、「東北一早く満開になる桜」との異名を持つこととして知られています。
実は今年の暖冬でもっと早く開花するのではないかと、3月20日に一回下見に行ってきました。
さすがに、早過ぎたようです。
通常なら、ここで諦めていたはずなのだが、今年の僕が一味違います。
そう、記録しておきたい風景は、とことんお届けしたいと思います。
春の風、サクラが満開
実はあの日以来、町のホームページやSNSなどのツールを使って、「戸津辺のサクラ」の開花情報を入念にチェックし始めました。
そして年度が変わり、4月2日に再訪することを決定しました。
午前7時過ぎ、長時間の運転を経って、国道118号線からさくらのある細い道路に入ると、すでに数台の車が路上駐車していまいた。
そして、カメラと三脚を構えた人たちの姿が見えました。
どうやら、ここも一つの撮影ポイントのようです。
駐車場で車を停めて、「戸津辺のサクラ」まで、歩けばすぐ着きました。
事前に得た情報通り、「戸津辺のサクラ」は満開を迎えました。
以下、案内表示板より抜粋します。
「(前略)この桜は、遠く久慈川の対岸からも望まれた老木であり、艶やかな色、幹の太さ、枝の張りが柔軟に延びた古木でもある。
古くからの旧道の傍らにあり、行き交う人々に安らぎを与えつつ、農家では、桜の蕾みの膨らみや、開花の様子を見て農作業の準備を行う等営農暦でもあった。」
なるほど、サクラの開花は季節の変化を告げるとともに、農作業の準備を促す意味合いも持っていましたね。
時代の進化と共に、農業は気候に左右されることは少なくなりました。
一方、サクラは日本のシンボルとして世界中で愛され、海外からわざわざ日本に来て花見をする観光客は毎年増え続けています。
美の意識は、シャッター越しに伝わってきます。
サクラについて考えること
僕は、サクラの美しさは、日本人が持つ「センチメンタリズム」によって昇華されたと思います。
『散る桜 残る桜も 散る桜』
良寛の一句は、その代表格だと思います。
もしかすると、樹齢約600年の「戸津辺のサクラ」は、
無言に我々に思いを伝え続けているのかもしれません。
「――願わくは此処の賑わいと出身者家族代々の上に幸せを垂れ賜い」。
東北の最南端の町にて、微かに薫る「戸津辺のサクラ」。
今年も美しい一年でありますように。
(投稿者:徐)