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自殺で残された家族と友人のケアとサポートの手引き(6)

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新
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他の人にはなんと言えばいいですか?

亡くなったことやその後の悲嘆の気持ちを公に話すことは簡単ではありません。誤解されたり、具合が悪いと「診断」されたり(たとえばうつとか「手に負えないでいる」と)、避けられるとか拒絶されたりといったことを恐れる人がほとんどです。死でさえ未だ社会に受け入れがたいものであり、同じ死でも他の死よりもさらに受け入れがたい死というものもあります。

自殺については、他の死因だったと言いたくなることもあります。たとえば、事故とか心臓発作と言ってやりすごそうかと考えてしまいます。 そうしたくなる気持ちはわかりますが、そうした場合、秘密を守らなければというプレッシャーが加わり、秘密によって悲嘆が複雑化することがあります。

長期的には真実を話すということがあなたにとってベストでしょう。次のように簡単に言えたらと思うでしょう:「あの人は自殺だったんです。今のところお伝えしたいのはそれだけです」、「自殺したんです、まだそれ以上そのことについては話せません!」、「自ら命を絶ったのです・・・それ以上は話せません・・・まだ!」

この「まだ」とか「今のところ」といった言葉を最初から付け加えて言うのは簡単ではないでしょうが、そう言うことができれば、いつか詳しく話したいとか、話す必要があると思うときがくるということを伝え、あなた自身にも言い聞かせることができます。

自殺へのその後の反応

あなたの人生を変えてしまったこの出来事のショックを乗り越え始めると、今度は、何もかも悪い方向に向かっていくような気持ちが出てくるかもしれません。死後、4から6週間たって、苦痛や空虚感が強まってくることが多いのです。こうした変化をあなた自身やあなたのことを心配してくれている人が予想していないと、誤った受け止め方をしてしまうことがあります。

友人や親族は、この間、割ける時間や労力を使い果たしてしまい、仕事や家庭・家族に注意を戻す必要が出てきます。これは理解できることで避けられないことではあるのですが、遺族としては見捨てられた気持ちになることがあります。こういう状況では誰でも拠りどころなく感じるもので、医療の助けを求めることになります。

 医療場面では、離別の症状(食べられない、眠れない、泣く、混乱する、記憶がない、倦怠感、希望が持てない、種々の身体に感じる症状)が、よく、うつ病と間違われてしまいます。忙しい一般診療医が、遺族である患者のひどい苦しみを目の当たりにして困ってしまい、不適切にもあわてて薬を処方してしまうかもしれません。薬(抗うつ薬、安定剤、睡眠薬)については、家族や友人や同僚やいろいろな人から「そのことはさっぱり忘れて、生活に戻らなきゃ」と、服薬を勧められることがよくあります。

「正常な」悲嘆は病気ではないので、病気として扱うべきではありません。うつ病の臨床診断は注意深く行うべきで、診断にあたっては、悲嘆反応の強さや反応が長く続くということについてよく理解し、現在の情動に影響する要因(アルコールやその他の薬の摂取を続けているなど)を見分け、処方は控えめであるような医師にお願いしましょう。薬が必要となる場合もありますが、注意深い診断を受けてからにすべきです。

 緊急の手当てとして安定剤を含めた「応急処置」を求める遺族もいるでしょう;たとえば人前で落ち着いて行動しなければならない場合、不眠が続くとさらに不安がつのりそうな場合、薬を使わなければパニック感が抑えられないときがあるという場合などです。継続して薬を長く使い続けることは悪影響となることがあり、悲嘆の作業を遅らせるばかりかうつ病になり易くなることがあります。こうした理由から、そして身体的にも精神的にも弱っている人の場合は薬の耐性と依存性がすぐに形成されてしまうことがあるので、薬に頼ることを覚えるよりは、悲嘆反応に対処するほかの方法をまず検討するべきです。

 その後の反応のまとめ

当初の茫然とした感覚が治まった後、以下の一部または全部が出てくるでしょう。

・不安が高まった感覚、重症の場合パニックになることもある
・眠れない、食べれない、集中できない、簡単なことでも細かく思い出すことができない
・故人のことを思い焦がれ、しばしば胃の部分の痛みや空っぽな感じを持つ
・故人が自殺を選び、その結果が自分にふりかかったことに対する怒り
・どうすることもできないと、押しつぶされそうな感覚
・故人について持っていた人物像や、故人と自分との関係がどういうものでどのくらい強いものであったかということについての疑問
・苦痛のサインを読み取ったり問題を解決する能力についての自信を失う
・信仰がくじけそうになる
・恥ずかしさ、当惑・孤独感、絶望感
・どうしようもなく疲れた感じ・故人と一緒にいたい、死にたい(またはずっと眠ってしまいたい)という願い、そして自分が死ぬことについての苦痛から逃れたいという願い
・絶え間なく続く答えのない疑問の輪にとらわれたような感覚
・誰にもどんなものにも深く関わることができない、人に何も与えることができない、とくに自分自身に何も与えることができない
・罪悪感と非難の気持ちを揺れ動く
・無益で意味がないという感覚
・もし亡くなった身内/友人/恋人/同僚が自殺にまつわる言動を示していた場合、最初はほっとした気持ちになったり、その後、罪悪感を感じたりする

 あなたの気持ちは1日、あるいは1週間のうち、ある時には強くなることがあります。たとえば、亡くなったと思われる時間、ほとんどの家で家族が家に帰る日没の時間、やはり家族団らんの時間である日曜日、誕生日や記念日、特別なお祝いの時など、特別な日、などです。