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【ろうどうコラム】ジョブ型正社員

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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H25.7.26  ジョブ型正社員

元労働委員会 会長 新開 文雄      

 総務省が7月12日に発表した調査によれば、パートやアルバイト等の非正規社員は約2,000万人を超え全体の38.2%を占めており、3人に1人が非正規社員である。また、年収200万円以下で働く人が1000万人を超えている。このことから非正規社員に対する対策が求められている。

 このことに関連して、6月、安倍政権はアベノミクスの3本の矢の一つの成長戦略(成熟産業から成長産業への円滑な人材移動を後押しする方針の一環)として「ジョブ型正社員」の制度化を打ち出した。「ジョブ型正社員」とは、職務、勤務地、労働時間を限定することで給与などを正社員より低くし、事業所の封鎖など一定の条件で解雇することができ、正社員と同じ無期雇用で社会保険(年金、失業保険)にも加入できる新たな雇用形態で正社員と非正規社員の中間といわれる。政府の規制改革会議の答申によれば、「ジョブ型正社員」の増加が求められるのは、『現在の日本の正社員は、勤務や勤務地などが限定されていない傾向が欧米に比べても高い「無限定社員」となっていることから、上記の「ジョブ型正社員」を増やすことが、正社員1人1人のワークライフバランスや能力を高め、多様な視点を持った労働者が貢献する経営(ダイバーシティ・マネジメント)を促進することとなり、労使双方にとって有益である』との考えにもとづくものである。

 「ジョブ型正社員」については、以下の理由等で賛成する考えがある。子育てが必要な期間については、勤務時間を限定したり、親の介護が必要な場合は勤務地を選べたりすることで離職せずに済むなど子育てや介護などを抱える女性の活用にも直結すると期待される。また、なんでも広く薄くできる社員が多数いるよりも職務や分野ごとに専門性の高い社員がいることを求める企業に好ましいものである。さらに、今年4月施行の改正労働契約法では、有期雇用の非正規社員を同じ職場で5年を超えて雇用した場合、本人が希望すれば無期雇用に転換することが義務づけられた。このため、今後は非正規社員を5年未満で雇い止めする動きが広がるおそれがあることから、非正規社員の雇用安定につながる。長時間労働を事実上強要するいわゆる「ブラック企業」対策に労働時間を限定することから有用である。

 これに対して、地方工場で働く労働者を「ジョブ型正社員」に職種転換させ、その上で工場を閉鎖した場合に解雇も可能となることから正社員を解雇しやすくなる、あるいは「正社員なんだからといわれて労働強化につながる」等として反対する考えもある。

 問題は、「ジョブ型正社員」の採用が非正規社員の雇用に有効な対策かどうかである。非正規社員の内容をみると、正社員だった人が転職の時に非正規社員になる流れが強まっていること、男性よりも女性が多くしかも50代から60代の有業率は5年前と比べると男性は下がるが女性が上昇していること、等である。

 「ジョブ型正社員」が多様な働き方(子育て、介護や高年齢女性労働者の仕事に対する需要にマッチするなど)を提示し、非正規社員になることを防止し、不安定な雇用環境に置かれているパート・アルバイトや契約社員等の非正規社員からの転換を図り、非正規社員の保護に役立つものであるならば、この制度の解雇しやすいという欠点を補うような制度設計(解雇に対する保護策)をして非正規社員の雇用安定を図るべきである。しかし、米国の投資家からは、日本への長期投資のためには法人税の引き下げと正社員の解雇規制の緩和の2点が日本の構造改革の大きな柱として求められており、制度設計は簡単な話ではない。

 「ジョブ型正社員」は、今後1年ほどかけて厚生労働省で検討される。

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