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【労働判例の紹介】平成26(ワ)12957号 地位確認等請求事件

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年6月15日更新

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平成26(ワ)12957号 地位確認等請求事件

(大阪地裁 平成26年10月10日判決)

◯ 就業規則をデジタルカメラで撮影する行為は違法ではないとされた事案
◯ 就業規則の撮影データを労働審判の代理人弁護士に提供する行為は、何ら企業秩序に違反するものではなく、その行為を理由になされた懲戒処分は無効であるとされた事案

事件の概要

 Xは、バス運転手としてY社に勤務していた。
 平成20年6月10日に、Xが仮眠所で飲酒等を行ったため、Y社は、2日後に、Xを2週間の自宅謹慎及び無期限の車庫待機の処分とした(車庫待機は約1か月半後に解除された)。
 その後、平成24年7月に、Y社は、Xの平成20年6月10日の飲酒行為を理由に、再度、Xを無期限の車庫待機の処分とした。
 これに対し、平成24年8月に、Xは、同一事実に対して二重になされた懲戒処分は無効であるとして、「平成24年7月の処分により減額された賃金及び慰謝料の支払い」を求めて労働審判を申し立てた。
 Xは、この労働審判へY社の就業規則を証拠として提出するため、Y社に対し、就業規則を謄写することの承認を求めたが、Y社は就業規則の謄写に応じなかった。そこで、Xは、デジタルカメラで就業規則を撮影し、そのデータを代理人弁護士に提供したところ、Y社は、「Xは、Y社の個人情報である就業規則を盗撮したうえ、更に、そのデータを第三者に提供した」として、Xを出勤停止14日の懲戒処分(以下「本件懲戒処分」という。)に処した。
 これに対し、Xは、「就業規則をカメラ撮影したのは、労働審判に就業規則を書証として提出するためであり、証拠提出後はデータを消去しており、そのことはY社に対しても説明してある。」として本件懲戒処分の無効を主張し、訴訟(※Xの申立てた労働審判はY社の異議申立てにより訴訟に移行した)の請求事項に、「本件懲戒処分により欠勤控除された給与の支払い」を追加した事案であるが、ここでは、本件懲戒処分に関する裁判所の判断について記載する。

判決要旨

 大阪地裁は、以下のとおり判示して本件懲戒処分を無効とした。

 就業規則は、使用者が労働者に対し周知させなければならないものとされており(労基法第106条第1項)、労働者がこれをデジタルカメラで撮影したとしても、違法な行為とはいえない。さらに、Xが就業規則の撮影データを提供した相手は、本件労働審判の申立てを委任した弁護士であるから、その提供行為も、何ら企業秩序に違反するものと評価することはできない。したがって、Xの行為は、何ら懲戒事由にあたらないというべきであるから、本件懲戒処分は無効である。

※本件訴訟は控訴された。

参考

 参考文献 『労働判例』(産労総合研究所)No.1111(2015.6.15)17~30頁

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