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個別Q&A10-(1)解雇権の濫用

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年3月27日更新

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解雇権の濫用

質問

 私は飲食店に正社員として勤務しておりますが、先日、誤って客におつりを100円余分に渡してしまったところ、社長から「明日から来なくていい。」と突然、解雇を告げられました。
 会社はこのような理由で解雇できるのでしょうか。

答え

 会社は、些細なミスのみを理由として解雇することはできません。

解説

 解雇とは、使用者が労働契約を一方的に終了させて労働者を退職させることを言います。
 解雇については、以下のとおり様々なルールがあります。

1 解雇事由に関する定め

 解雇事由について、使用者は労働契約締結時に書面により労働者に明示することが必要です(労働基準法第15条1項、同法施行規則5条)。
 また、使用者は、就業規則を定める場合には、解雇事由を定めなければなりません(同法第89条3号)。

2 解雇権濫用法理による解雇の制限

 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(労働契約法第16条)。これを解雇権濫用法理と言います。

(1)客観的に合理的な理由
 ア 労働者の労務提供の不能
 イ 労働能力、適格性の欠如・喪失
 ウ 労働者の義務違反、規律違反等
 エ 使用者の業績悪化等の経営上の必要性
 オ ユニオンショップ協定に基づく解雇
 などが該当します。
 ただし、ア、イについては、病気により休職していた従業員の復帰のための予備期間や、改善のための教育訓練、他部署への配置転換など、解雇の回避に向けた努力が行われていることが必要とされた判例があります。
 なお、管理職については、これらにかかわらず、その職務についての適格性を欠く場合には、他の職への降格等を考慮しなくとも直ちに解雇権濫用に当たるとはいえないとされた判例もあります。

(2)社会通念上の相当性
 労働者の勤務態度や処分歴、改善の見込み、他の労働者の処分とのバランス及び使用者側の対応などを考慮して、労働者の行為と処分の均衡を失わせる程の不利益を及ぼす場合は、社会通念上の相当性を欠くものと判断されます。

3 法令により解雇が禁止される主な場合

 以下のような場合には法律により解雇が禁止されています。
(1)労働基準法(第19条)
 ア 労働者が業務上負傷したり、病気になった場合、その療養のために休業する期間及びその後30日間
 イ 産前産後休業期間及びその後の30日間
  ※ただし、使用者が打切補償を支払った場合や、天変事変などやむを得ない事由により事業が継続で
    きなくなった場合を除きます。 
(2)労働組合法(第7条)
 労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇
(3)男女雇用機会均等法(第6条)
 性別を理由とする解雇、女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後休業したことなどを理由とする解雇
(4)育児・介護休業法(第10条、第16条)
 労働者が育児・介護休業を申し出たことまたは休業したことを理由とする解雇

判例

○日本食塩製造事件(最二小判昭和50.4.25 判時774号)
○高知放送事件(最二小判昭和52.1.31 労判268号)
○全日本空輸事件(大阪高判平成13.3.14 労判809号)
○セガ・エンタープライゼス事件(東京地判平成11.10.15 労判770号)
○フォード自動車事件(東京高判昭和59.3.30 民集35巻2号)
○小野リース事件(最三小判平成22.5.25 労判956号)

 

 

 

 
 

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