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個別Q&A9-(1)使用者の配転命令とその限界

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年3月4日更新

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使用者の配転命令とその限界

質問

  私は現在、総務担当部署で勤務していますが、営業部に欠員が生じたので、過去に営業部の経験がある私に来月から営業部への配置転換命令(以下「配転命令」という。)がありました。
 採用時の雇用契約書には「業務の都合により職種及び職場の配置転換を行うことがある」旨の記載があり、就業規則にも同様の定めがあります。
 私は、配転命令に応じなければならないのでしょうか。

答え

 合理的な配転命令であれば、応じなければなりません。

解説

1.配置転換

 配置転換とは、職務内容や勤務地を相当の長期間にわたって変更することをいいます。

2.配転命令権の根拠と範囲

 使用者が配置転換を命じるには労働契約上の根拠が必要です。
 労働契約上の根拠とは、個別労働契約のほか、労働協約や就業規則に配置転換を命じることができる旨の定めがあることです。ただし、この定めは「業務上の必要がある場合、配置転換を命じることができる」といった包括的規定でも配転命令権の根拠となります。
 なお、労働契約において地域限定や職種限定の契約がなされたとみなされる場合には、原則として使用者の配転命令権は、その合意の範囲内に限定されることになります。

3.権利濫用法理による制限

 使用者に配転命令権が認められる場合でも、判例では以下のような点について、権利の濫用に当たるかどうかを判断しています。
(1)配転命令を行う業務上の必要性の有無
  労働者の適正配置や業務運営の円滑化、労働者の能力開発など配転を行うに当たり業務上の必要性があったかどうかで判断しています。
  なお、余人をもっては替え難いという高度の必要性までは要求されません。
(2)労働者が受ける不利益の程度
  労働者の受ける不利益の程度について、看護が必要な複数人の家族を一人で見ている場合や複数人の介護が必要な親族を、当該人と配偶者のみで介護している場合など、労働者が通常甘受すべき不利益の程度を著しく超えていると判断された時には権利濫用となる場合があります。
  なお、労働契約は仕事と生活の調和に配慮しつつ締結又は変更するべきもの(労働契約法第3条第3項)であり、就業場所の変更を伴う配置転換によって子の養育や家族の介護を行うことが困難となる労働者がいる場合、事業主はその状況に配慮しなければならないとされている(育児・介護休業法第26条)ことから、近年は育児や介護及び生活全般への不利益をより慎重に判断される傾向があります。
(3)配置転換の動機・目的の正当性
  労働者を退職に追い込むための配転や社長への反抗的な態度に対する報復としての配転、組合活動を妨害する目的で行われたものなど、不当な動機・目的と判断された場合は権利濫用となります。

判例

〇東亜ペイント事件(最二小判昭和61.7.14労判477号)
〇ネスレ日本事件(大阪高裁判決平成18.4.14 労判915号)
〇帝国臓器製薬(単身赴任)事件(最小二判平成11.9.17 労判768号)

 

 

 

 
 

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