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【ろうどうコラム】「経営者は労働者を大切にせよ」

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年8月2日更新

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R3.8.2 「経営者は労働者を大切にせよ」  

労働委員会 使用者委員 千歳 芳雄      

 先日、新聞の書評欄を見ていて労働問題を扱った本の書評が目に留まりました。本のタイトルは「武器としての労働法」(佐々木亮著、KADOKAWA)です。著者は労働問題分野の弁護士で、本書の特徴は様々な問題の事例が多数取り上げられており、それぞれの事例について「対処法」も説明されていることです。労働法の本というと堅苦しいイメージがありますが、本書は条文の説明ではなく実例の説明なので素人でも読みやすい本です。
 私は労働委員会の使用者委員に任命されて3年が経ちますが、世の中には沢山の労働問題が存在し、それぞれの当事者の皆さんが苦しんでおられる実態があることを改めて理解しました。雇用形態としての正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、フリーランスがそれぞれ抱える問題があります。例えば親の介護のために転勤は拒否できるか、有期雇用を無期雇用に転換するための条件は何か、派遣先の会社に就職することは出来るか、パートでも有給休暇はもらえるのか等々がありますが、本書の中にはそれ以外にも労働時間と残業手当の問題や解雇に関する問題、ハラスメントをめぐる問題等についても解決策が示されているので、現に悩みを抱えている方には一読をお勧めします。
 私は経営者の皆さんにこそ是非この本を読んでいただきたいと思います。労働委員会で扱う労使間の問題を見ていると、経営者に非がある事例が多くみられます。時には後々紛争にならない様に法律に則った書類を記録として残していますが、内実は公平・公正とは言い難いひどい事例もあります。
 経営者の皆さんが日々努力されて会社の業績を上げ、ひいては従業員の雇用を守ろうとしていることは十分理解しています。ましてやコロナ禍の昨今、売り上げの減少と赤字に悩み、どうしようもない状況に従業員の皆さんと共に苦しんでおられることと拝察します。しかしながら、苦しい時こそ従業員を大切にして、コロナが収束した後の会社の経営の復活に向けて準備をしておくことが重要です。
 私もサラリーマンで働いていた時に海外の生産子会社の社長をした経験があります。リーマンショックの時代で会社は危機的な状況でした。会社の生き残りのために500人の社員を解雇した時は本当に辛かったです。夜も寝られず精神的にも不安定になる程でした。しかし、社長がくよくよしていては何の解決にもなりません。私は業績の回復のために思い切って従業員の知恵と力を借りることにしました。いわゆる権限委譲をしたことで、結果としてチームワークの取れた強い組織が出現したのです。会社の生産性が見る見る上がり、その後2年で会社の業績は回復し、何十億円もあった借入金も全額返済することが出来ました。
 世の経営者の皆さん、「企業は潰れやすい、しかし人は潰れるわけにはいかない」のです。従業員と問題点を共有し、チーム一丸となって解決することで、個人が成長し会社が強くなることを実感してみて下さい。
 最後にこの本の問題点を一つ挙げたいと思います。巻末に無料で相談できる公的な機関が掲載されていますが、その中に都道府県の労働委員会の記述がないのです。これは著者や編集者がうっかり忘れたものと推察しますが、労働委員会の知名度が低いのであれば更なるPRが必要です。日頃行っているワークルールの出前講座や労働困りごと相談会などを活用し、更なる認知度向上に努めたいと思います。

 

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