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(10)便宜供与とその限界

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年12月15日更新
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(平成24年11月2日現在)

便宜供与とその限界 ~使用者からの質問

質問

 私どもの会社の労働組合が、労働委員会に不当労働行為を申し立て、先日審問出席の通知を受け取りました。会社としては、労務担当者等数名を会社の業務として出席させようと思います。ところが、当の労働組合から、組合役員等の審問への出席について、年次有給休暇を使うのは会社に比べて不利なので、特別の有給休暇を認めてほしいとの要請がありました。労働委員会での審問は会社が意図したものではなく、このような申し出は不本意です。しかし、公正な不当労働行為審査のためには、労働組合の便宜を図って、年次有給休暇以外に特別に有給休暇を認めるべきなのでしょうか。なお、労働協約にこのような規定も、このような労使慣行もありません。

答え

 労働組合法第7条第3号は、使用者が、「労働組合の運営のための経費の支払いにつき、経理上の援助を与えること」を不当労働行為として禁止しています。質問のように、当事者である労働組合員が、就業時間内に不当労働行為事件に係る審問に出席することは、組合活動の実践であり、就業時間中の組合活動にあたります。そして、使用者が、この時間に特別の有給休暇を与え、その時間の賃金を支払うことは、労組法が禁止する「経理上の援助」に該当し、不当労働行為とされるおそれがあります。

 解説

1 経費援助の禁止
 労組法第2条ただし書第2号は、労組法上の労働組合の資格要件として、労働組合が、組合運営のための経費の支出について、使用者から経理上の援助を受けないことを規定しており、この「経理上の援助」のことを、一般に「経費援助」と呼んでいます。また、労組法第7条第3号は、使用者が労働組合に経費援助を行うことを支配介入の不当労働行為として禁止しています。これは、労働組合に対する経費援助が、労働組合の自主性、独立性を阻害し、それをきっかけに御用組合化することをおそれたことによります。

2 経費援助の禁止の例外(便宜供与)

 わが国では、多くの労働組合が企業別組合であり、日常の組合活動を企業内で行っており、また、財政的規模も小さいところが多数です。このような実情に配慮し、経費援助の禁止については、以下に記載するように一定の限度で例外が認められています。そして、使用者が労働組合に認めるこれらの利益を、広く「便宜供与」と呼んでいます。
 労働組合法は、(1)労働者が労働時間中に賃金を失うことなく使用者と協議・交渉すること、(2)組合の福利基金などに使用者が寄付すること、及び(3)最小限の広さの事務所を供与することは、経費援助にあたらないとして、組合の資格要件から除外し(労組法第2条ただし書第2号)、また不当労働行為にもならないと定めています(労組法第7条第3号)。
 このほかに、便宜供与として認められているものに、組合役員の在籍専従や、組合費のチェックオフがあります。

3 組合員の審問出席に対する賃金支払い

 労働組合役員等の不当労働行為事件に係る審問への出席の目的は、使用者の不当労働行為の存在を立証し、排除することにありますから、これが労働組合本来の運営活動であることは明らかです。そして、会社の就業時間内であれば、就業時間中の組合活動になり、この時間に賃金を支払えば一般には経費援助に該当すると思われます。労組法の経費援助の除外(便宜供与)の規定も、これまでは含まないと解されています。
 他に特別な事情もないようですので、質問のように、労働組合員の審問出席時間に対して、会社が特別に有給休暇を与え、その間の賃金を支払うことは、経費援助に該当し、不当労働行為とされるおそれがあります。
 なお、これに関しては、過去に、労働省労政局長が「組合専従者でない労働者が労働基準法第7条の『公の職務』を執行する場合に、使用者がこれに賃金を支払うことは一般に『労働組合の運営のための経費援助』には該当しない。当該組合が当事者となっている不当労働行為の救済手続、調停手続、裁判手続等のために労働委員会、裁判所等に出頭する場合の時間の給与支払は経費援助に該当するが、組合活動以外の要務のために出頭する時間の給与支払は、一般に『労働組合の運営のための経費』の援助には該当しない。」(昭和24.8.8労発第317号)という通ちょうを出しています

 

 

 

 

 


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