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中通り11(天栄村):粒粒辛苦(ハマナカアイヅ)

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年5月22日更新

 ――四字熟語の「粒粒辛苦」という言葉の重みを、考えたことはありますか?

 5月18日、郡山市でとある映画の無料上映会に参加しました。
 福島県・天栄村にある「天栄米栽培研究会」の農家たちが、
 耕作放棄地を再利用して、新種ブランドの米を開発し、
 「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」で受賞に至る奮闘記と、
 原発事故による未曾有の環境破壊を乗り越えようと、
 米の安心・安全や品質を死守する農家たちの苦闘の一部始終を記録したドキュメンタリー映画でした。
まぜっせKORIYAMAの吉田さんが映画上映前、観客に天栄村の基本情報を紹介した 映画のタイトルは「天に栄える村」

 原発事故後、放射線物質は風向きによって一旦北上したが、山脈などの地形に沿って南下し、やがて天栄村に到達しました。
 田んぼに放射線物質が付着していまい、米などの農作物作りに只ならぬ不安が募りました。
 何気なく毎日食べているお米だが、福島県産以外にもたくさんの選択肢はあるのに反して、福島県の米農家にとっては、これは死活問題なのです。

 慣れない科学用語に四苦八苦しながら、農地を何とかしようと自ら調査し、解決策を調べ、専門家を招聘し、徹底的な研究をしました。
 カリウム、ゼオライトなどを田んぼに撒いて、稲が土壌中の放射性セシウムの吸収抑制にも挑戦しました。苦渋の決断でした。

 「(原発事故の影響で米作りに)食味を取るか、安全・安心を取るかと言われたら、我々は安心・安全を取るしかないです。」
 映画のなか、天栄米栽培研究会事務局長の吉成さんのこの言葉は、一番印象に残りました。

 プルシアンブルーという物質が放射性物質セシウムを取り除くこと効果があると聞いて、コストの高騰にもかかわらず希望の在処が見えてきた農家たちの喜びや、
 今まで毎年東京から田植えの手伝いに来ていた消費者から、子供さんの姿がいなくなり、風評被害がもたらした寂しさを、
 スクリーン越しにもかかわらず、農業についてあまり詳しく知らない私でも共感できました。

 ――「粒粒辛苦」。
 穀物の一粒一粒は、農家の苦労と努力の結果実ったものということです。

 映画上映会後のトークセッションに出席した「天栄米栽培研究会」の農家の石井さんが当時を振り返ました。
 震災後間もなくの2011年3月末、研究会のメンバーたちが集結し、一緒に苦境からの打開策を模索してきました。
 米作りは容易なことではありません。原発事故以降の「天栄米」の栽培はなおさらです――前記したカリウムとゼオライト散布のほか、プルシアンブルーをしみ込ませた布を村内すべての用水路に配置し、田畑に流れ込む水の浄化に務めるなど、努力を重ねました。
 結果、収穫された米の検出結果は全袋未検出となりました。

 ――「作らなければ、負けです。」
 この言葉は、やがて信念になり、「天栄米」が2008年以来の、「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」で6年連続の受賞を大きく支えました。
映画上映後、トークセッションに出席した農家の石井さん(中)と義元さん(右) 天栄米の試食も行われた。ほんとに美味しいです。

 また、映画の公開後農家の考え方や周囲の変化という質問に対して、トークセッションに出席した天栄村の地域コーディネーター・義元さんは以下のように語りました。
 「天栄米を食べる理由は変わってきたが、私たち(農家)は変わっていない。志が変わっちゃいけないから。」

 私は思わず頷きました。
 単純に「感動した」、「泣いた」という無機質的言葉をこの映画を評論することはできませんでした。
 私は福島県に1年以上生活しているが、ふくしまのことをそこら辺の人間より詳しく知ったつもりでいました。
 ですが、果たしてそうなのでしょうか。
 私の知らない福島県民の苦労、我慢、努力、汗、涙、笑いがまだまだたくさんあります。

 私は本当に、天栄村の米農家たちのように、
 ありとあらゆる方法を使って、仕事を成しているのでしょうか。
 一人でも多く、「福島の真実」を伝えたことができたでしょうか。
 「天に栄える村」を観て、
 「ふくしまに仕える交流員」としての自分に言い聞かせて、
 「ふくしま」という名の土壌に実る一粒の稲穂になりたいです、と。

 (投稿者:徐)

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