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個別Q&A11-(4)退職願の撤回

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年1月31日更新

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(平成24年8月24日現在)

退職願の撤回

質問

 会社の人事部長をしていますが、先日ある従業員から「一身上の都合のため退職したいので、御承諾願います。」と退職願が提出されました。人事部長としてこれを承諾し、その旨を本人に伝えました。ところが、後日、この従業員から退職願を撤回したいとの申し出 がありました。すでに退職の手続を済ませ、後任者も決定しており、非常に困惑しています。このような場合、退職願の撤回を認めなければならないのでしょうか。

答え

 従業員から会社に対してなされる退職願の提出は、一般に労働契約の合意解約の申込みと解されています。御質問の場合、会社がこれを承諾し、承諾の意思表示が当人に到達していることから、労働契約の合意解約が成立していますので、退職願の撤回に応じる義務はないと考えられます。ただし、例外として、退職の意思表示が、錯誤による場合は無効となり、詐欺又は強迫による場合には従業員はその意思表示を取り消すことができます。

解説

1 退職願の撤回 「○月○日をもって退職したい。」という内容の退職願の提出は、一般に労働契約の合意解約の申込みと解されており、その申込みを会社が承諾すれば、労働契約は合意により解約され、退職が有効に成立したことになります。よって、会社の承諾の意思表示がなされた後は、原則として退職願の撤回はできないとされています(ただし、使用者が任意に撤回に応じることは可能ですが、応じるか否かは使用者の判断に委ねられています。)。逆に、退職願を提出しても、会社から当人に対して承諾の意思表示がなされる前であれば、合意解約がまだ成立していない状態であるため、退職願の撤回ができるものとされています。

2 退職願の承諾権限

 会社で誰が退職願を承諾する権限を有するかについては、一般的には人事担当の部長や役員には権限があるものと考えられますが、権限、手続等を会社の諸規則等により明確に定めておく必要があります。判例では、採用後の当該労働者の能力、人物、実績等について掌握し得る立場にある人事部長に決定する権限を認め、人事部長による受領をもって承諾の意思表示がなされたとしていますが(判例1)、一方、会社の業務分掌規程の厳格な運用から、常務取締役観光部長にはその統括する従業員の任免に関する人事権が分掌されていないとして、同部長による退職願受領後の撤回を認めた事例があります(判例2)。

3 意思表示の瑕疵

 退職の意思表示は、錯誤による場合は無効となり(民法第95条)、詐欺又は強迫による場合には取り消すことができます(民法第96条)。
 判例では、懲戒事由が存在しないのに、懲戒解雇になるものと信じてなした退職願は、その意思表示に要素の錯誤があるとして無効とされ(判例3)、また、懲戒解雇処分や告訴のあり得ることを告知し、そうなった場合の不利益を説いて退職願を提出させることは、労働者を畏怖させるに足る強迫行為であるとして取消が認められた例(判例4)があります。

判例

○判例1 大隈鐵工所事件(最高裁第三小法廷判決昭和62.9.18労判504号6頁)
○判例2 岡山電気軌道事件(岡山地裁判決平成3.11.19労判613号70頁)
○判例3 北海道電力事件(函館地裁判決昭和47.7.19労働経済判例速報792号)
○判例4 ニシムラ事件(大阪地裁決定昭和61.10.17労判486号83頁)

 

 


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