山小屋で働く人々があ語る尾瀬の魅力

南会津に来たなら迷わずここ!
温泉本作家がこっそり教える
地元の人たち御用達の極上湯

南会津町舘岩地域には知る人ぞ知るユニークな温泉がふたつある。しかも、どちらの温泉も泉質は温泉マニアが太鼓判を押すほどの湯だというのだから、それは聞き捨てならない。どんな温泉なのか? なにがユニークなのか? わたくし、温泉本作家の岩本薫が愛を込めて語ります。

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文/温泉本作家
ひなびた温泉研究所ショチョー 岩本 薫

日本全国のひなびた温泉をめぐって取材をしている。
著書に『ひなびた温泉パラダイス』『ヘンな名湯』『もっとヘンな名湯』他。

行かなきゃ損でしょ?
観光ずれしていない素朴な温泉が旅の最高の思い出になるから。

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冬といえばやっぱり温泉。で、ここ舘岩地域には知る人ぞ知るユニークな温泉が2つある。どちらの温泉も、古くから地元の方の生活の湯として親しまれている温泉だったりするから観光ずれしていない素朴な風情がある。しかもそこは温泉マニアならみんな知っている名湯でもある。実はこういう地域密着の温泉っておうおうにしてハズレがない。まぁ、逆にいえば、だからこそ古くから愛され続けているというわけ。それとまた、こういう温泉では地元の人たちとふれあえたりするんですね。舘岩地域では今でも日常生活で温泉を利用する方が多いので、湯船で地元の人たちとご一緒することも珍しくない。自然と会話に花が咲いて、いろいろその地域ならではのことなんかが聞けるかもしれない。そういうのがあってこそ旅は楽しいわけで、忘れられない思い出になる。しかも名湯なんだから、これは行くしかないでしょう!

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湯ノ花温泉は、なんと200円で
4つの共同浴場にすべてに入れちゃう、
超コスパ良しの温泉なのだ。

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まずひとつめの温泉は湯ノ花温泉。ここには4つの共同浴場があって、地元の人も、周辺の旅館の宿泊客もこの共同浴場を利用する。もちろん日帰り入浴もOKなんだけど、ユニークなのは、なんと200円の共通入浴券1枚ですべての共同浴場にすべてに入れちゃうというところ。抜群のコスパを誇る温泉なのである。

そんな湯ノ花温泉の共同浴場は「石湯」「弘法湯」「天神湯」「湯端の湯」の4つ。いずれも源泉100%かけ流し。それぞれ個性的でありながら趣が違うから、4つの共同浴場の雰囲気を入り比べるいうのが湯ノ花温泉の正しい楽しみ方だ。しつこいようだけど、たったの200円でそれができちゃうのだ。お得なのはもちろん、旅の満足度、充実度だって湯ノ花温泉はグンとあげてくれるのである!

なかでも「石湯」は温泉マニアの間でも入ったら誰かに自慢したくなるような温泉だから、ここは外したくない。その人気の秘密はふたつある。

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入ったら自慢できる湯ノ花温泉地区の珍名湯「石湯」
こんな温泉ほかにないよ!

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名は体を表すっていうけれど「石湯」はそんな温泉だ。なんと湯小屋に巨石が突き刺さっているのだから。一度見たら忘れられない、それはそれは珍しいナニコレ的温泉なのだから。

なぜ巨石が突き刺さっているのか? タネ明かしをすると実は巨石が突き刺さっているのではなく、石湯はこの巨石の下から自噴した温泉で、その場所に石の湯船が作られ湯小屋が建てられた。あまりに大きい石だったから湯小屋からはみ出させたのだろう。それでこんな世にも奇妙な湯小屋が生まれたというわけだ。こんな温泉、いかに日本が温泉大国だといってもほかにはない。入ったら自慢できる(自慢したくなる)温泉なのである。

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うう、熱い!
でもそれにだんだんハマってくる玄人好みの名湯なのだ。

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そしてここ「石湯」のユニークなところはもうひとつある。湯の熱さも名物だったりする。石湯の源泉温度は約57度と熱い。とくに「石湯」の場合は源泉が自噴する横に湯船を作ったわけだから、その熱い源泉が冷める間もなくほぼそのまま湯船に入ってくるわけだ。だから熱くなりすぎないように湯口には木の棒が突っ込んであって、それで源泉投入量を調節して熱くなりすぎないようにしてある。また、加水用の水道のホースも引かれているので熱すぎて入れないときはそれでうめればいいわけだけど、やっぱりそこは郷に入っては郷に従えだ。あまりうめすぎず熱い湯を楽しもうではないか。

いや、ここの湯はその熱さも魅力なのである。体にビシッとくる熱くさっぱりとした浴感がたまらなくいい。湯は無色透明のクセのない単純泉だけど、なんせ鮮度がいいから格別なのだ。ここの湯は、浸かるほどにわかってくる玄人好みの湯だといいたい。それとまたこんな狭い湯小屋で、湯も透明でありながら実はここは混浴なのである。女性にはハードルが高いが、空いている時を狙ってぜひともトライしてもらいたい。

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一度見たら忘れられない、まるで巨石が突き刺さっているみたいなスゴいインパクト。巨石の上には小さな神棚がある。そう、我々人間の体にさまざまな効力のある温泉は、古来から神として崇められていたのだ。

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とにかく熱い。罰ゲーム並みに熱い。ところがこの熱さが慣れてくるとたまらなくいい。なんせ湯船の真横から温泉が湧いている鮮度抜群の湯なのだ。さっぱりビシッとくる浴感。あっという間に体が温まってくる。こんな湯に毎日浸かっている地元の人たちがうらやましいなぁ。

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弘法湯/男女別浴

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湯ノ花温泉の中心にある共同浴場が「弘法湯」。田代山開山にちなんだ弘法様を祀っていた場所に建てられたことからそのように呼ばれている。4つの共同浴場の中ではいちばん開放的で設備も整っていて入りやすい、ある意味ハードルが低い共同浴場だ。

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天神湯/混浴

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橋のたもとにある、知らなければ見落としてしまいそうなほどに、こぢんまりとした「天神湯」。ここも石湯に劣らず激熱湯だ。湯船の縁に湯が張られた洗面桶が並んでいたりして、それで湯をうめるという暗黙のルールがおもしろい。窓を開けるととても開放的な眺めが楽しめるところも魅力。

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湯端の湯/男女別浴

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ここ「湯端の湯」は地元の人用の浴室と外来客用の浴室に分かれているので、間違えないようにしたい。いちばん古い共同浴場ということもあり、ひなびた風情がいい味出している。

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なんとも贅沢!
湯船の底からぷくぷく自噴する貴重な足元湧出湯。

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さて、舘岩地域のもうひとつの秘湯いえば木賊温泉の岩風呂だ。ここもまた温泉マニア憧れの温泉だ。その理由はここが全国でも貴重な足元湧出温泉だからである。つまり温泉が自噴しているところがそのまま湯船になっているわけで、まだ一度も空気に触れていない、この上ない鮮度の源泉に浸かることができる温泉なのである。しかも湯も素晴らしい。泉質は単純硫黄泉。硫黄の香りがふわりと香る、わずかに青みがかった美しい湯。湯の温度は43度ぐらいのまさに適温。温泉は決して人に都合に合わせて湧いてくるものではない。こんな適温の湯が湧いてくるということ自体が思えば奇跡的なのである。

現在、木賊温泉の岩風呂は露天風呂であるけれど、本来は湯小屋の中の湯船だ。残念ながら昨年の台風の被害で湯小屋が流されてしまった。これまでにも幾度と湯小屋が流され、その度に復活してきた岩風呂だけど、今回の被害は大きくいまだ復活できないでいる。しかし前向きに考えれば、こんな名湯を今だけ開放感抜群の露天風呂として入れるのだ。みなさんの入浴料が復活の助けになるので、ぜひとも今だけの露天風呂の木賊温泉岩風呂を楽しんでほしい。※岩風呂は冬季封鎖します(1月1日~3月31日)。

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木賊温泉の湯は日によって色や香りも変わる。温泉が自然の恵みであることを如実に物語っているのだ。しっかりとしたツルスベ感がとても心地いい木賊温泉の湯。こんな極上湯が湯船の底からこんこんと湧き続けているのだから、これはもう大地の恵みに感謝するべきだろう。

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湯船はふたつあって左側が足元湧出の湯船。右側の湯船にはその湯がオーバーフローして流れ込んでいる。だから若干湯の温度が下がって、こちらはだいたい40度ぐらい。ひとつの源泉(しかも極上湯!)でふたつの湯温が楽しめるのである。

スキーの疲れを極上湯で癒し、
明日のトレッキングの元気もチャージする!

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と、そんなユニークな舘岩地域のユニークな温泉はやっぱり南会津のレジャーとセットで楽しめば魅力も倍増すること間違いなし! というわけで会津高原が誇るたかつえスキー場だ。標高1000mの高原ならではの極上パウダースノーと、縦長にレイアウトされた奥行き、標高差ともに東北屈指のスケールのゲレンデ。まさにそこはスキー天国だ。スノースポーツを思うぞんぶん楽しんで、その疲れをユニークな極上温泉で癒す。同時に明日のトレッキングの元気もチャージする。そんな贅沢が楽しめちゃうのが、ここ南会津なのである。

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