マウンテンガイドと行く「会津駒ヶ岳のスノーハイク」

シーズン直前!
「ふくしま尾瀬写真塾」写真・文/浅井理人

尾瀬の被写体をおさらいしよう

尾瀬の長い冬も終わりいよいよ山開きが近づいてきました。

今年の山開きは5/29(土)に福島県側の登山口、沼山峠で開催となります。(新型コロナウイルス感染症防止対策のため規模は縮小されます。)シャトルバスの運行も始まり尾瀬のグリーンシーズンがスタートです。

今回は季節ごとに尾瀬の魅力をまとめてご紹介いたします。

写真

写真を撮ることで景色と深く向き合う

写真

美しい尾瀬の景色。足を止めてじっくり写真を撮るのも面白いです。同じ景色でも構図やアングルなど工夫一つでまるで違った写真になるのがたまりません。

写真を撮ることで景色とより深く向き合い、美しさや感動をより一層深いものにできる気がします。

大きなカメラは必要なく、スマホひとつで十二分に写真は楽しめます。尾瀬でたくさん素敵な写真を撮影してみましょう。
今回は季節ごとに尾瀬の魅力をまとめてご紹介いたします。

春5・6月

雪解けと共に花リレーのスタート

植生が豊かな尾瀬には約900種の植物があると言われ、季節ごとに様々な花が訪れる人を楽しませてくれます。雪解けと共に湿原では
ミズバショウやリュウキンカが開花し、花リレーがスタートします。

写真

ミズバショウ

写真

尾瀬を代表する花のミズバショウ(水芭蕉)。雪解けした湿原に開花し、見頃は5月下旬から6月初旬です。尾瀬沼地区のカマッポリ田代が特に花数が多く華やか。独特の香りもするので嗅覚も使ってお楽しみください。肌の弱い方は中心の黄色い花穂を触るとかぶれる場合もありますので触らないように。また、ミズバショウの時期は尾瀬の峠に雪が残ります。登山靴など防水のしっかりした靴で訪れましょう。

写真

写真

オサバグサ

写真

オサバグサは、尾瀬国立公園内では帝釈山周辺でしかほぼ見ることができません。あるところにはブワッと群生しますが、ない場所にはまったくない不思議な植物。控えめに下向きに付く小さな花が可愛らしいです。6月5日(土)の帝釈山の山開きに合わせてオサバグサ祭りが開催されます。

写真

ワタスゲ

写真

ポワポワ揺れる綿帽子。ワタスゲの果穂(綿毛)です。
尾瀬でのオススメポイントはズバリ田代山。ワタスゲの密度は日本屈指と言っても過言ではありません。

田代山は訪れる人が比較的少ないので、人がいなければ木道にこっそり寝転んでみましょう。ワタスゲに包まれる感じがたまりません。

写真

アカシボ

写真

アカシボは雪解けの限られた期間にだけ見られる自然現象です。

池塘や湿原、尾瀬沼など、雪解け水がたまった場所で見られ、雪がなくなるとあっという間に見えなくなってしまいます。数日間の現象ですので見られた方は幸運です。

水面が赤褐色に色づくのは酸化鉄が要因の一つだと言われています。

写真

山菜

写真

春の味覚の山菜。奥会津では様々な山菜を食すことができます。檜枝岐村や南会津町ではGW明けくらいが山菜のシーズンです。

フキノトウから始まりタラの芽、コゴミ、山ウド、ハリギリ、シオデ、カッポウなどどれも大変美味しいです。5月29日(土)~6月12日(土)、檜枝岐村では山人春祭が行われ、各お宿で旬の山菜をふんだんに使った料理が提供されます。ぜひお泊りになって山菜料理をお楽しみください。

※尾瀬国立公園内での山菜の採集は禁止されています。

写真

新緑

写真

6月初旬頃から山々が萌黄色に包まれます。遠くから眺めても良し、近づいて観察しても良し。冬の間、無彩色だった山々が生命力に満ち溢れてきます。ブナの木は遠くから見るともこもこしており、ブロッコリーのような形に見え面白いです。

夏7・8月

尾瀬の短い夏、生命豊かな湿原

尾瀬の夏は短いですが、数多くの植物がいっぺんに開花し、1年で一番華やかな時期になります。気温は上がっても30℃ほど。涼しい尾瀬は避暑にもピッタリです。お盆を過ぎれば朝晩は肌寒くなり、8月末には山小屋のストーブに火が入ります。夏の午後は夕立ちや雷が多くなります。トレッキングは早出早着を心掛けてください。

ニッコウキスゲ

写真

湿原を黄色に染めるニッコウキスゲ。例年7月20日頃に見頃を迎えます。福島県側の登山口「沼山峠」から小一時間の場所にある大江湿原の三本カラマツ周辺は、花の密度が濃く一見の価値あり。1株に5つほどつぼみをつけ順番に開花していきますが、花は1日でしぼんでしまいます。可憐で見頃が短い短命な花です。ニッコウキスゲは鹿の食害により尾瀬では減少傾向です。

写真

写真

写真

写真

ハクサンコザクラ

写真

写真

会津駒ヶ岳の山頂湿原で見られる群落がとても見事な花です。一つひとつをアップで見てみると花がハートの集まりで出来ています。ぜひ、じっくり近寄って観察してみてください。見頃は7月中旬から8月初旬で、オススメの場所は会津駒ヶ岳から中門岳へと続く稜線です。会津駒ヶ岳の木道整備のために設けられたクラウドファンディング「南京小桜基金」の南京小桜はハクサンコザクラのことです。

写真

アサギマダラ

写真

とても不思議なアサギマダラ。夏を尾瀬で過ごしたアサギマダラは秋になると南下していき、2000km以上ある台湾まで渡ることがあります。大型の蝶で、羽の浅葱色と鮮やかな模様が特徴です。

ヨツバヒヨドリやハンゴンソウなどに蜜を吸いに来たところがシャッターチャンス。長い時間吸蜜するので気長に待ちながら撮影しましょう。

写真

朝もやと白虹

写真

夏の尾瀬ではしばしば朝もやが現れます。白虹は朝もやの中、特定の気象条件がそろったときに現れるめずらしい自然現象です。湿原に半円の白虹が現れ幻想的な光景を作り出します。

白虹の発生条件は大まかに3つです。1.夜明け前に濃い朝もやがでて、2.太陽が登り朝もやが晴れていくと、3.太陽を背にした方向に白虹が現れます。

尾瀬ヶ原で見られることが多いので、見晴地区に泊まり朝一番に至仏山方向を見るようにしましょう。

写真

百名山の眺望

写真

7月に入ると雪解けが進み尾瀬の山々も本格的な登山シーズンとなります。7月3日(土)は会津駒ヶ岳、7月4日(日)は燧ヶ岳(ひうちがたけ)で山開きが行われます。青々とした尾瀬を上から眺めるのは気持ちが良いです。

秋9・10月

景色を染め上げる、草紅葉と紅葉

秋の主役は湿原の草紅葉と樹林帯の紅葉です。日に日に色づきが進み一週間でまるで別の景色になります。
10月に入ると霜が降り初雪も舞い、シーズンも終盤に近づきます。

写真

草紅葉

写真

秋の尾瀬の見所の一つに、太陽があたり黄金色に湿原が輝く草紅葉があります。特に早朝の斜光の景色が美しいので、ぜひ山小屋に泊まって朝一番の尾瀬をご覧ください。

写真

草紅葉は9月中旬に始まり10月末まで長く楽しむことができるのも嬉しいところ。段々と色が抜けていく草紅葉も大変美しく、池塘に浮かぶヒツジグサの赤との対比も素晴らしいです。

写真

写真

ブナの紅葉

写真

あまり知られていませんが、尾瀬には白神山地にも負けないくらいの手付かずのブナ林が広がっています。
御池古道のブナ平、裏燧林道、会津駒ヶ岳などブナの中を歩くコースも豊富です。ブナの紅葉に包まれながら尾瀬を歩いてみませんか。10月初旬から色づき始め中旬過ぎからが見頃となります。なお、10月の尾瀬は朝晩氷点下になります。防寒具、手袋、ニット帽を忘れずにご準備ください。

写真

カラマツの紅葉

写真

カラマツは木々の中で最後に紅葉し、秋の終わりを告げます。針葉樹で紅葉するのは日本ではカラマツだけ。広葉樹と違い小さな葉がキラキラと輝き大変美しいです。
10月下旬に見頃となる大江湿原にある三本カラマツはオススメの撮影ポイントです。

写真

モーカケノ滝

写真

御池古道の中間にあるモーカケノ滝は、駐車場から徒歩5分で行ける立ち寄りスポットです。紅葉の時期は色づいた木々と滝の共演がとても見事ですので、御池からの帰りにプラッと寄ってみてください。カエデ類の紅色が多く華やかな紅葉が楽しめます。もちろん御池古道を歩いて行くこともできます。

写真

初雪

写真

標高の高い燧ヶ岳では9月下旬に、尾瀬沼や大江湿原でも10月後半には初雪となります。シーズン始めの雪は湿り気が多く、木々に着雪しやすく白く雪化粧した針葉樹は大変綺麗です。積雪が多くなるとシャトルバスが運休になる場合があるので注意しましょう。

写真

写真

霜で輝く朝は空気がピンと張り詰めてとても気持ちが良いです。一面に霜が降りた朝は神々しい光景が広がります。気温が上がる8時くらいにはすぐ溶けてしまいます。短い間だけ見られる絶景です。霜が降りた木道は大変滑ります。転倒には十分ご注意ください。

いつもと違う視点で写真を撮ろう

視点を変えると尾瀬の景色が一変します。人がいなければ思い切って木道に寝転んでみたり、自撮り棒を利用して高い位置から写真を撮ってみたりと、いつもと違ったアングルで尾瀬を見ると新たな発見がたくさんあります。視点を変えて新しい世界を発見してみてください!

写真通常の視点「目線の高さからみた景色」

写真低い視点「下から人物を入れて撮る」

写真一点に注目「手前にピントを合わせ奥をぼかす」

写真ローアングル「下から空を見上げるように」

pagetop