浜通り08(富岡町):愛あるがゆえに(ハマナカアイヅ)
富岡駅を後にして、以前何回か訪れたことがある浜風商店街にお邪魔しました。
しばらく世間話をして、富岡駅から帰ってきたことを言い出すと、
「あんたたち、夜の森公園のさくらもう見た?」
と問われました。
夜の森公園のさくらは満開を迎えることは知っているが、
立ち入り可能ということは全然知りませんでした。
完全な盲点でした。
即断できた道を引き返して、夜ノ森公園を訪ねてみました。
原発事故の影響により立入りが制限されていた夜ノ森公園は、避難区域の再編により一部地域に限って立入る事ができるようになったのは、去年のことでした。
やがて、「さくらのトンネル」と呼ばれる並木が目の前に広がりようになりました。
人こそ疎らなれど、県内でも屈指の桜スポットが誇る魅力に変わりはありません。
悲しくも綺麗なさくらに圧倒され、春の吐息があふれる並木通りに佇むと、ただただ時間だけが無情に過ぎていくのでした。
そして、桜に酔いしれる者たちが一瞬にして現実に引き戻される看板とフェンスが、人々に原発事故の猛威を語っています。
この光景を目の当たりにした者によって、
「無常」、「悲惨」、「残念」
もしくは
「回復」、「復興」、「希望」
連想するキーワードは違ってくるのでしょう。
私は、後者を信じたいです。
帰る間際に、「チーム富岡さくらYOSAKOI」のメンバーたちに出会いました。
原発事故で全町民が避難生活を余儀なくされても、活動拠点をいわき市に移して全国各地のイベントでよさこいを披露する同チームは、
震災後初めてふるさとに戻って、さくら並木の下で踊りました。
「来年もここで、みなさんのために、富岡町のために踊ります!」
と代表者は私たちに語りました。
彼の言葉に、故郷を愛する気持ちを感じました。
夜の森公園に訪れたみなさんからも、
それぞれ、春への「愛」、
そして、ふくしまへの「愛」を感じました。
愛が積み重ねて、復興を推進する力となります。
その一環として、除染作業が進み、避難区域がどんどん縮小していきます。
そして、あのフェンスの向こう側にある
景色は、一番近い位置で見て、感じることができるようにないます。きっと。
愛あるがゆえに。
(投稿者:徐)