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2014年12月定例会 討論 神山悦子議員

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年2月18日更新
神山悦子議員 
議員神山悦子
所属会派(質問日現在)日本共産党
定例会平成26年12月
質問等討論
質問日12月19日(金曜日)

50番(神山悦子君)日本共産党の神山悦子です。日本共産党県議団を代表し、継続審査議案第58号決算の認定について、継続審査議案第62号「2013年度福島県地域開発事業会計決算の認定について」の2議案に対し、反対の立場から意見を述べます。

 まず、継続審査議案第58号決算の認定についてです。

 これは、2013年度の普通会計決算の認定です。当初予算を約1兆7,320億円でスタートさせ、その後8度にわたり計約417億3,200万円の補正予算を計上しました。その結果、決算額は前年度の決算をさらに上回り、歳入で7.2%増の1兆9,403億4,213万169円、歳出で12.2%増の1兆7,938億7,115万9,060円となり、県政史上最大規模の決算額となりました。

 2013年度は、大震災、原発事故から3年目の年で、県は「復興加速化の年」と位置づけ、昨年時点で13万人を超える避難者への支援や原発事故による放射能物質の除染対策など、さらに復興・再生に適切に対応するためとして、原子力災害復興基金を初めとする各種基金の活用や震災復興特別交付税なども活用するなど、財源の確保に努めたとしています。

 しかし、東京電力福島第一原発は、事故の収束に向かうどころか、前佐藤知事が「国家の非常事態」と指摘したほど、放射能汚染水漏れや作業ミスによるトラブルが相次いだ年でした。原発事故の収束がなければ本県の復興はあり得ません。帰還も進むはずはありません。

 ところが、安倍首相は東京オリンピック招致を前に「放射能汚染水はコントロールされている。」などと言明し、国や東京電力の加害者責任を曖昧にし、11月には原子力規制委員会が放射線被曝に関する考え方を、それまでの年間1ミリシーベルト以下から20ミリシーベルト以下は健康への影響はないとし、さらに昨年12月末には政府の復興指針と原子力損害賠償紛争審査会の中間指針第4次追補を示し、住民と自治体に新たな線引きと分断を持ち込んだのです。今年1月には、原発をベースロード電源と位置づける国のエネルギー基本計画を提示しました。こうした国の福島切り捨てとも言える方向がより強まる中で、県の対応はどうだったのかが問われました。

 そもそも原発被災は全ての県民が対象です。県はこうした国や東京電力に対し、避難指示のあるなしにかかわらず、被災者支援や賠償問題、除染への対応など、県民一人一人に寄り添い、県民の生活となりわいの再建を進めるという点では不十分でした。

 例えば避難者の住まいの対応において、帰還を前提とした支援策はさまざま示すものの、借り上げ住宅などの住みかえへの要望や、同一自治体内への自主避難者への支援はいまだ実施されないでいます。

 さらに、県民の安全と福祉の向上を図るという地方広域自治体としての本来の役割を発揮するという点でも、従来から全国最下位レベルにあった医療・福祉・教育を抜本的に引き上げて、被災県として県民と市町村を支援すべきでしたが、ハード面の事業費は国の交付金を使い、多額の予算が計上された反面、18歳以上の医療費無料化や甲状腺検査など評価できる点はあったものの、人間の復興にかかわる医療・福祉・教育の予算はほとんど従来の予算配分にとどまりました。また、これらの分野を支える医療・介護、教員の増員、正規職員の増員を図るという点でも大変不十分でした。

 2013年度歳出決算は、投資的経費が大きく伸び、普通建設事業費及び災害復旧事業費が増加し、前年度比39.7%、構成比では2.9ポイント増加し、14.8%となりました。その他の経費でも、復興・再生に係る補助費等の増などにより、前年度比15.7%、構成比では1.8ポイント増加し、52.1%となりました。一方、県債残高は1兆3,722億円余と、依然多額のまま推移しています。

 本県は、東日本大震災、原発事故を受けた被災県ですから、その対応に係る事業費が膨らむのは当然です。しかし、安倍政権のアベノミクス第2の矢、機動的な財政運営による公共事業のばらまきは、国の財政破綻を一層深刻にするだけです。しかも、この財源を第4、第5の隠された矢の消費税増税や社会保障改悪によって賄おうとしているのですから、国民や被災県民にとっては大きな足かせになってくるのは誰が見ても明らかです。

 昨年度決算で監査委員からも指摘されたように、多額の翌年度繰越額と不用残を生み出すことになったのは、国の経済対策による公共事業などハード面の事業が多く計上されたものの、年度内にはとても消化できず、昨年度の繰越額は2,510億円、不用残は501億円にも上りました。

 震災以降相次いでいる災害復興公営住宅の建設を初めとした入札不調も相次ぎました。昨年度は509件、21.4%で、その7割が応札者なしという状況でした。県の予定価格の設定そのものが労務単価や資材の高騰に追いついていないという面と、一方で、資材や人手が不足し、工期が予定どおり進まないという事態があり、これは今も続いています。今後も東京オリンピック開催に近づけば近づくほど一層拍車がかかるのではないかと危惧するものです。

 その一方で、通常ベース予算の2倍近くの予算執行に見合う職員の配置は不十分で、昨年度は正規職員や任期付職員の採用や国や他県からの派遣職員が300人程度増員されたとはいえ、復興・再生事業の本格化に伴う職員不足への対応と市町村からの派遣要請に十分応えたとは言えませんでした。そうした中で、県や市町村職員の病休や精神疾患がふえていることが指摘されています。

 ことし1月に県立福島医大とふくしま心のケアセンターと共同で実施した避難区域の自治体職員の面接等による調査結果がことし5月に公表されました。約100人の職員を対象に実施した中で、約15%が鬱病と診断され、そのうち自殺の危険が指摘された人が8人もあったとされています。

 それは、県職員においても例外ではなく、昨年度の知事部局の病休者は133人、このうち精神疾患は92人でした。同様に、教職員も122人、70人、警察職員は47人、24人でした。

 復興対策は、今後も長期に見込まれることから、職員の心のケアを含め対策をとることはもちろんのこと、根本的には、非正規職員や他県からの派遣に頼るというよりも、正規職員を採用し、増員を図るべきです。

 加えて、医療・介護・教育分野は職員不足への対策が必要です。そもそも相双地域の医療・介護体制のおくれは震災前から指摘されていましたが、大震災、原発事故によってさらに拍車がかかっています。また、これは全県にも共通するものです。

 出先審査で、会津地方の僻地医療を担っている県立宮下病院を訪問しましたが、医師不足のため、住民が要望している眼科などが診療科を開設できないでいます。また、看護師を募集しても応募がなく、周辺自治体の国保診療所の看護師も同様で、まもなく定年を迎える人も多く、このままではあと数年で地域全体が一気に医療過疎地になりかねない実情でした。

 介護施設でもスタッフが確保できず、特に避難自治体で介護施設を開設できないという深刻な事態が続いています。県が本気になって全県的視野から対策をとらなければ、地域全体の崩壊につながりかねません。医療・介護の賃金の引き上げを含めた処遇改善が必要です。原発被災県の特区扱いを誘致企業や農業分野にとどめず、県民の健康の維持管理を担う医療・介護のスタッフ確保と処遇改善のため、福島復興再生特措法を活用すべきではないでしょうか。

 これだけ職員不足や処遇改善が求められているのに、昨年度当初予算編成に当たって安倍政権は、国の財政難を理由に総務大臣名で全国の首長と議会議長に対し、地方公務員の給与引き下げを強要する異例の文書を送付し、あろうことか県や地方自治体への地方交付税についても、有無を言わさず職員の人件費削減を前提として減額配分してきたのです。

 結局県は7月から2月までの職員の給与引き下げを実施し、職員への影響額は約70億円に上りました。国は、後で別の財源措置で補ったとしていますが、とんでもないことです。県も、やむを得ない措置とはいえ実施すべきではありませんでした。

 避難者は年々減少してきているとはいえ、いまだに12万人の避難者、関連死も自殺者も被災3県で最も多く、おくれている医療・介護・教育分野の予算を大幅に増額し、賠償や被災者支援については制度を超えた支援と柔軟な対応が必要です。そして、これらを県の予算編成において県民や被災者の目に見えるように配分し、事業化していくことを求めます。

 原発事故を受けた本県だからこそ、引き続き、第二原発の廃炉を国、東京電力に明言させることはもちろんですが、「福島切り捨て」をさせず、福島原発の事故収束を国の最優先で進めさせるためにも、全国の原発の再稼働について、原発被災県の本県から国にきっぱり中止を求めるべきです。この態度を明確にしてこそ、本県の真の復興と避難者が安心して戻れる環境をつくることになるということを改めて指摘するものです。

 次に、継続審査議案第62号「2013年度福島県地域開発事業会計決算の認定について」です。

 これは企業局が行っている地域開発事業ですが、バブル崩壊後の地価の下落などもあり、他地域との競合を理由に原価を下回る販売価格で売却した結果、2013年度決算はこれまでにない厳しい経営となりました。

 2013年度末の累積欠損金は141億円に達し、初めて債務超過の状態に陥るという深刻な事態を招いています。加えて、未分譲地にも多額の含み損が見込まれる中、企業債残高も161億円余に上るなど極めて憂慮すべき状況となっています。このような事態を招いた県の説明責任が求められます。

 今回の深刻な事態を招いた直接の要因は、工業の森・新白河B工区の三菱ガス化学株式会社への売却による損失です。造成工事費などに約60億円かかっていますが、約33億円余の損失が出ました。昨年度の損失金のうち76%を占めています。しかも、多くの雇用が見込まれるとしていましたが、実際に雇用されるのはわずか100人程度です。これまでも誘致した企業の規模に比して雇用者数は余り多くはないというのが実態です。

 監査委員の指摘にあるように、県民に対する説明責任とともに、財源確保に向けた県の総務・財政当局との協議を進めることも必要ですが、造成済みの未分譲地を抱え、売却すればするほど逆に赤字もふえていくのでは、県民の理解は得られません。

 土地を開発、造成し、工業団地をつくり、企業を誘致しても、期待するほどの雇用拡大につながらない現状を見れば、こうした呼び込み方式による手法そのものを改めて見直すべきではないでしょうか。もともと地域に存在し、雇用の大半を担っている中小企業や第一次産業の農林水産業への支援を厚くし、再生可能エネルギーなどの新分野への支援を初め福祉施設など地域経済に波及効果が大きい内発型の地域経済に今こそ転換すべきです。原発事故を受けた本県の復興をここから始めるべきだと思います。

 以上、意見を述べまして、継続審査議案第58号、同第62号に反対を表明し、討論といたします。

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