プロジェクト概要  PROJECT

ポテンシャルデータ

全国有数の医療機器部品・製品の生産県

 オリンパス(株)の生産拠点があり、世界中の消化器内視鏡の約70%が福島県で生産されています(会津オリンパス(株)・白河オリンパス(株))。

 米系大手医療機器メーカーであるジョンソン・エンド・ジョンソン(株)、日本ベクトン・ディッキンソン(株)の国内主要輸入・生産拠点を有するほか、ノボノルディスクファーマ(株)、ハクゾウメディカル(株)、富士システムズ(株)、トミー(株)など70を超える医療機器製造業者が操業しています。

医工連携による医療機器関連拠点

 福島県における理工系大学で医療・福祉機器関連の教育や研究開発を行っている大学としては、主に日本大学工学部や福島大学、会津大学があげられます。これらの大学・大学院では教育講座が充実しているだけでなく、研究開発についても多くの成果をあげています。

◆日本大学工学部 次世代工学技術研究開発センターの取組み

 医療・福祉機器の研究開発は医工連携によって医療現場のニーズを知って実現する取組みが重要であることは先に述べましたが、この大学の取組みがユニークなのは、工学系でありながら病院と同じような医療機器を整備し、動物実験も学内で出来る施設を持つなど、医療・福祉機器の研究開発を工学系が主体的に行えるようにしたことです。
 この次世代工学技術研究開発センターは大学3年次からですが、大学院工学研究科電気電子専攻では、統合生体医療工学研究室が中心となり、医療福祉機器の開発、ICTによる次世代ヘルスケアシステムや遠隔診断装置の研究開発や脳とコンピュータを結ぶブレインコンピューターインターフェイスや神経リハビリテーションの先端的研究を行っている。マイクロ波工学では電波の生体影響と医療応用などの研究が進められています。

センター内の動物実験室

血管血流イメージング装置(試作)

◆福島大学 共生システム理工学類の取組み


 共生とは、理学─工学─社会科学を融合した「共生の科学・技術」を意味し、文理融合による新たな視点を求めることを他にはない教育・研究の大きな特徴としています。さらに、人間支援システム専攻では、「ヒューマンサイエンス」「メカトロニクス」「コンピュータサイエンス」の3領域からのカリキュラムの構成がなされています。
 このような教育・研究体制は、医療・福祉機器が医療と工学の境界的な応用技術で成り立っていることとも良く符合します。
 さらに、地域と連携する活動も「福祉保健医療技術プロジェクト」』として積極的に進めており、「生体情報に基づく福祉保健医療技術」,「福祉医療分野への工学的アプローチの新展開」,「IT技術の福祉保健医療分野への応用」をテーマに上げています。
 例として、生体の循環系を対象とした研究では、人間の心拍数・血圧の調節システムを解析し、「人工心臓の制御システムの開発」「自律神経機能の解析」などに応用しています。また、リハビリシステムに関する研究では、動作解析やリハビリ機器の開発などを行っています。

◆会津大学 コンピュータ理工学部の取組み

 会津大学は日本で最初のコンピュータ理工学専門大学として1993年に開学しました。
 医療・福祉機器関連の教育・研究は、大学では生体情報学講座があり、大学院ではコンピュータ理工学研究科コンピュータ情報システム学専攻IT教育研究領域(バイオメディカル情報技術)で行われます。
 この大学の大きな特徴としては、国際的に開かれた大学を目指して英語を共通語とした教育が大学院では行われることと、地域との連携を進めながら学生がベンチャーとして起業するための支援を行っていることです。
 ベンチャー体験工房「会津IT日新館」は、地域のベンチャー企業や自治体と連携し、地域や企業のニーズに対応したテーマで 、ベンチャー創業活動や実務に近い製品開発などの擬似体験をさせて創業意識の高い若手人材の育成を目指しています。
 また、会津大学産学イノベーションセンターUBICはインキュベーションとして起業家やベンチャーの活動支援を行なっています。その中には「会津大学発ベンチャーの称号」と言うのもあり、すでに15のベンチャー企業にその称号を付与しています。
 産学連携で事業化まで進んだ成果は多くありますが、ヘルスケア分野での成功事例としては、寝ている間に女性の基礎体温を測定してQRコードで表示し、それを携帯電話で読み取ってデータを管理する「衣服内体温計」、があります。収集したデータに雑音除去処理を施し、有用な情報を抽出して健康管理に役立つことで好評を得ています。

◆福島県立医科大学が企業と連携して進める研究開発

 福島県立医科大学では、医療・福祉機器に係わる研究が幅広く行われ、特に治験を含む臨床試験研究などは医療・福祉機器の事業化に向けて大変に重要であることから企業とも連携して、それらの取組みも熱心に進められています。

超精密微細加工製純チタン膜による硬組織の再生【革新的医療機器実証事業費補助金採択事業】

歯槽膿漏などで歯の周りの骨が溶けてしまった場合に、あごの骨(顎骨)や歯を支える骨(歯槽骨)の再生のためのチタン製の膜を開発し、平成28年度に薬事承認を取得しました。
 この膜は厚さ20μmの純チタン膜に50μm間隔で孔径20μmの貫通孔が超精密微細加工されており、有用な形に仕上げるためフレーム構造が付加されています。使用方法は、歯槽骨や顎骨の欠損部に自家骨や人工骨を充填した後、開発した純チタン膜で覆い、縫合します。これにより骨欠損部の骨再生が促進することが期待できます。