バックカントリーの本場、
会津駒ヶ岳文・写真/浅井理人

豪雪地帯の尾瀬ではバックカントリーやスノーシュー、クロスカントリースキーなど様々な雪のアクティビティを楽しむことができます。今回は雪山を登る楽しみと大自然を滑る快感を一度に味わえるバックカントリーについて紹介します。誰でも簡単にできるわけではありませんが、山を滑る楽しさは一度味わうとやめられないものです。
今回は好天日を狙って複数の日程で取材しました。

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会津駒ヶ岳山頂直下から望む燧ヶ岳と至仏山。真っ白な稜線が美しい。

会津駒ヶ岳の魅力

アクセスの良さ

写真会津駒ヶ岳登山口

会津駒ヶ岳でバックカントリーの人気がある理由の一つにアクセスの良さがあります。国道352号線沿いの登山口は檜枝岐村の中。村の中から厳冬期に直接登ることができる山は全国的にみても数が少ないです。積雪による道路の通行止めが多い冬場はアクセスの良さが大きなポイントになります。たとえば会津駒ヶ岳と同じ尾瀬にある日本百名山でも燧ケ岳と至仏山はGWにならないと登山口まで車で行くことができません。

写真 会津駒ヶ岳登山口

写真ブナ林帯を滑る

変化に富んだ斜面

写真ブナ林帯を滑る

標高によって様々な景観をもつ会津駒ヶ岳は、自然が創り出す様々な斜面が豊富にあります。登山口から1600mまでのブナ林帯は大木が多く木の間隔が広いため木々の間をすり抜けながら滑るツリーランにうってつけ。森林限界から上の広大な大斜面は滑りごたえ抜群です。天気や様々なコンディションの雪質に合わせて滑る場所を選ぶことができるので、無理のない滑走を楽しめます。

準備と計画

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バックカントリーは楽しい半面、道迷いや雪崩による遭難のリスクがあります。夏山と違い道標もありません。しっかりとした装備と計画が必要になります。また、スキーやスノーボードの滑走技術も必要です。バックカントリーの経験が浅い方は、熟練者や資格を持ったガイドなど経験が豊富な人と一緒に山に入るようにしましょう。

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持ち物

夏山の持ち物に加えて用意するものが複数あります。

  • ●ビーコン 雪崩により埋没した人を探す機器です。雪山では必携です。
  • ●スコップ・ゾンデ棒 埋没した人を探し掘り出す道具です。
  • ●替えの手袋、防寒具 厳冬期は-20℃を下回ることもあります。グローブは複数用意します。
  • ●GPS or GPSアプリ スマホにアプリを入れると圏外でも動くGPSになります。
  • ●モバイルバッテリー 寒さでスマホの電池が早く切れる場合もあります。
  • ●多めの行動食・ツェルト もしもの備えも大事です。

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ビーコン

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スコップ・ゾンデ棒

準備

単独登山者の遭難状況

単独登山(「山菜・茸採り」、「観光」等も含む。)遭難者1,086人のうち、死者・行方不明者は172人で、15.8%を占めており、複数登山(2人以上)遭難者の死者・行方不明者の割合(6.6%)と比較すると9.2ポイント高くなっている。

令和2年における山岳遭難の概況 - 警察庁抜粋

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いざ会津駒ヶ岳へ

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国道沿いにある冬季閉鎖された林道を歩きます。会津駒ヶ岳の特徴は出だしの急登。深い雪をラッセルしながら一歩ずつ登っていきます。天気がいいと青空の向かって登る感覚を味わえます。

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夏場はあまり注目されることがない標高1350mのヘリポート跡地。ここまで登ると景色がブワッと広がります。休憩して急登の疲れをしっかり回復しましょう。ここから先は樹間の広い原生的なブナ林を歩きます。ブナの巨木が美しいです。

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きつい登りが続きますが、冬の自然は面白い出合いもたくさんあります。周りを見回しながら登ると色々な発見があります。

写真会えたらラッキーカモシカ

写真Y字が特徴のウサギの足跡

写真シラビソにつくフワフワのサルオガセ

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標高1650mの水場を過ぎるとブナ林からオオシラビソを中心とした針葉樹林帯に変わってきます。(水場の道標は埋まってしまいピンポイントに水場を見つけるのは難しいです。) だんだんと傾斜も緩やかになり、双耳形が美しい燧ヶ岳も顔をのぞかせます。 燧ヶ岳が見えると不思議と元気が出てきますよ。眺望を楽しみながら森林限界を目指します。

森林限界を抜けると全くの別世界。青と白の世界が広がります。これぞ会津駒ヶ岳!!
ただし悪天候時はホワイトアウトでなにも見えなくなることもあります。引き返す勇気も大事です。

写真駒の小屋直下からみた山頂

写真風で出来る雪面の波模様。シュカブラ

写真会津駒ヶ岳山頂。

いざ滑走

頑張って登った後のご褒美!アドレナリンがあふれ出る瞬間です。広大な山を滑る快感はスキー場とはまた違ったもので病みつきになります。登りの大変さはすべて吹き飛んでしまいます。

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左:会津駒ヶ岳山頂から滑る。
    右上:ブナ林帯のツリーラン
 右下:針葉樹林帯

写真会津駒ヶ岳山頂から滑る。

写真ブナ林帯のツリーラン

写真針葉樹林帯

楽しいけど注意すること

●雪崩のリスク
管理されたスキー場とは違います。ピットなどを掘り雪崩のリスクを確認しましょう。
●オーバースピード
スキー場より桁違いに広い斜面ではスピード感覚が麻痺します。アンコントロールにならないよう自制が必要です。怪我をしてもスキーパトロールはいません。
●滑りすぎない
ついつい気持ちよく滑りすぎてしまうもの。人間楽な方へとどんどん下ってしまいます。谷に降りすぎて帰り道の尾根など通りすぎないようにしましょう。

滑り終えて

取材で出会った人達に会津駒ヶ岳の感想をお聞きしました。

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会津駒ヶ岳最高でした!天気もよくて雪質もバッチリ。またぜひ遊びに来たいと思います!

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最高でした!the day!!登りは大変でしたが、天気にも雪にも恵まれ楽しく滑れました。また春に来たいと思います。

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天気もよくて最高です。福島にはいい山がたくさんありますね!また来たいと思います。

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