平成21年度版福島県男女共同参画高校生副読本から「なぜ違うの? 男女の賃金」のページです
なぜ違うの? 男女の賃金
(みはる) | 男女とも、高校・大学の卒業に合わせて常用で採用される割合が多いけど、25歳以上になると、女性は「パートタイマー」の割合が増加して、県内ではパート労働者の81.5%が女性だよ。 |
(あい) | 結婚や子育てで、仕事が続けられないってことなのかな。 |
(りくお) | 日本では、働いている人の4割を女性が占めているのに、管理的職業従業者に占める割合は欧米諸国と比べても極端に低いよね。 |
DATA 女性の年齢階級別労働力率
資料:内閣府男女共同参画局「男女共同参画社会の実現を目指して」(平成20年版)
Term M字型曲線
女性の労働力率は、学校卒業後20歳代でピークを迎え、その後の子育て期に下降し、40歳代で第二のピークを迎えるという傾向が見られる。その形がアルファベットのMの文字に似ていることからM字型曲線と呼ばれている。これに就業希望率を加えた潜在的労働力率を見ると、M字のくぼみは小さくなり、就業希望はあるものの実現していないことが分かる。M字型曲線は、日本や韓国などに独特なもので、保育施設の進んでいる北欧諸国などでは、出産・育児期の落ち込みはみられず、男性同様、台形のカーブを描いている。
DATA 雇用形態別構成
資料:福島県「労働条件等実態調査」(平成19年7月)
雇用形態別の男女の割合をみると男性の方が割合が高いのは、「常用」(74.2%)で、反対に女性の割合が高いのは「パート」(81.5%)であった。
DATA 女性の就業者割合と管理的職業従事者割合
資料:内閣府「男女共同参画白書」(平成19年版)
(みはる) | 男女の賃金格差は諸外国でも共通にみられる大きな問題になっているんだけど、日本の賃金格差は諸外国と比べても大きくて、女性の賃金はパートを含まなくても男性の66.8%なんだって。 |
(りくお) | 労働基準法第4条で、「使用者は労働者が女性であることを理由として、賃金について差別をしてはならない」って決まっているのにね。 |
(あい) | そういえば、子どもが交通事故で亡くなった場合の賠償金額は、男子より女子の方が少額なんだって。男女でいのちの値段が違うなんておかしいよね。 |
(みはる) | それは、男女別の平均賃金を基に算定するからだと思うけど、最近はそうでもない判決もあるらしいよ。 |
(あおば) | 法的にも能力的にも、女性と男性は対等で平等になってるはずなのに、どうしてこんなに格差が生じるんだろう? |
Term 男女雇用機会均等法
正式名「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(改正後)。「女性差別撤廃条約」を批准する条件を整備するため、1985年に勤労婦人福祉法の改正法として制定された。その後、1997年に大幅に改正、内容が強化されて、現在の名称となった。主な改正内容としては、募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇について女性労働者に対する差別を禁止したことや、男女労働者の格差是正のための積極的改善措置(ポジティブ・アクション)に対する国の援助及びセクシュアル・ハラスメントの防止についての事業主の配慮義務が新たに規定されたことなどがあげられる。
DATA 男女間の賃金格差
資料:内閣府「男女共同参画白書」(平成19年版)
事故で死亡14歳の逸失利益 「男女別算定は差別」 全労働者平均を採用 奈良地裁支部判決
中学生だった二女(当時14歳)を交通事故で亡くした奈良県の両親が加害者らに損害賠償を求めた民事訴訟で、奈良地裁葛城支部の神山隆一裁判官が、二女の逸失利益(事故に遭わなければ得られたと考えられる利益)を、男女合わせた全労働者の平均賃金を基に算定した判決を言い渡していたことが19日、分かった。子供など未就労者の逸失利益は労働省の「賃金センサス」(賃金構造基本統計調査結果)の男女別平均賃金を用いてそれぞれ算定するのが慣例。しかし、女性の平均賃金は男性より低いため、男女の賠償額にケースによっては1000万円近い差が生じている。こうした実態を「男女差別」と明言し、全労働者平均賃金を採用した判決は初めて。両親は「未就労の女子の逸失利益を女子の平均賃金を基礎に算定することは、法の下の平等に反する不合理な差別を容認し、娘の命の尊厳を傷つける」と主張。車を運転していた男性(28)側は「女子の平均賃金を基礎にすべきだ」と反論していた。今月4日の判決で、神山裁判官は「年少者の逸失利益の算定に男女差が生じることは、性別で可能性に差異を設けて一方的に差別することで、妥当とはいえない」と判断。男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法の施行など時代の流れにも触れ、「女性にとっても男性と同じ仕事、選択肢が与えられるようになっている。少なくとも中学生までの女子の逸失利益の算定は、男子を含む全労働者の平均賃金を用いるのが合理的」との見解を示した。 毎日新聞より抜粋(2000年7月20日)