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精神障害者保健福祉手帳等級判定基準(3)説明

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

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手帳等級判定基準(3)精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の説明

                                                   (平成7年9月12日 健医発第一、一三三号 別添1)

 精神障害の判定基準は、「精神疾患(機能障害)の状態」及び「能力障害(活動制限)の状態」により構成しており、その適用に当たっては、総合判定により等級を判定する。

(1) 精神疾患(機能障害)の状態

 精神疾患(機能障害)の状態は、「統合失調症」、「気分(感情)障害)」、「非定型精神病」、「てんかん」、「中毒精神病」、「器質性精神障害」、「発達障害」及び「その他の精神疾患」のそれぞれについて精神疾患(機能障害)の状態について判断するためのものであって、「能力障害(活動制限)の状態」とともに「障害の程度」を判断するための指標として用いる。

(1) 統合失調症

 統合失調症は、障害状態をもたらす精神疾患の中で頻度が高く、多くの場合思春期前後に発症する疾患である。幻覚等の知覚障害、妄想や思考伝播等の思考の障害、感情の平板化等の感情の障害、無関心等の意志の障害、興奮や昏迷等の精神運動性の障害等が見られる。意識の障害、知能の障害は通常見られない。急激に発症するものから、緩徐な発症のために発病の時期が不明確なものまである。経過も変化に富み、慢性化しない経過をとる場合もあり、障害状態も変化することがある。しかしながら、統合失調症の障害は外見や行動や固定的な一場面だけからでは捉えられないことも多く、障害状態の判断は主観症状や多様な生活場面を考慮して注意深く行う必要がある。

 なお、「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症状については、それぞれ以下のとおりである。

(a) 残遺状態
 興奮や昏迷を伴う症状は一過性に経過することが多く急性期症状と呼ばれる。これに対し、急性期を経過した後に、精神運動の緩慢、活動性の低下(無為)、感情平板化、受動性と自発性欠如、会話量とその内容の貧困、非言語的コミュニケーションの乏しさ、自己管理と社会的役割遂行能力の低下といった症状からなる陰性症状が支配的になった状態を残遺状態という。これらは決して非可逆的というわけではないが、長期間持続する。

(b) 病状
 「精神疾患(機能障害)の状態」の記述中に使用されている「病状」という用語は残遺状態に現れる陰性症状と対比的に使用される陽性症状を指している。陽性症状は、幻覚等の知覚の障害、妄想や思考伝播、思考奪取等の思考の障害、興奮や昏迷、緊張等の精神運動性の障害等のように目立ちやすい症状からなる。陽性症状は残遺状態や陰性症状に伴って生じる場合もある。

(c) 人格変化
 陰性症状や陽性症状が慢性的に持続すると、連合弛緩のような持続的な思考過程の障害や言語的コミュニケーションの障害が生じ、その人らしさが失われたり変化したりする場合がある。これを統合失調症性人格変化という。

(d) 思考障害
 思考の障害は、思考の様式や思路の障害と内容の障害に分けられる。様式の障害には、思考伝播、思考奪取、思考吹入、思考化声等の統合失調症に特有な障害の他に強迫思考等がある。思路の障害には、観念奔逸、思考制止、粘着思考、思考保続、滅裂思考、連合弛緩等がある。内容の障害は、主に妄想を指すが、その他に思考内容の貧困、支配観念等も含まれる。単に思考障害といった場合は妄想等の思考内容の障害は含まず、主に思考様式の障害を指す。

(e) 異常体験
 幻覚、妄想、思考伝播、思考奪取、思考吹入、思考化声等の陽性症状を指している。

(2) 気分(感情)障害

 ICD―10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改正)では気分(感情)障害と呼ばれ、気分及び感情の変動によって特徽づけられる疾患である。主な病相期がそう状態のみであるものをそう病、うつ状態のみであるものをうつ病、そう状態とうつ状態の2つの病相期を持つものをそううつ病という。病相期以外の期間は精神症状が無いことが多いが、頻回の病相期を繰り返す場合には人格変化を来す場合もある。病相期は数か月で終了するものが多い。病相期を繰り返す頻度は様々で、一生に1回しかない場合から、年間に十数回繰り返す場合もある。

 なお、「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症状については、それぞれ以下のとおりである。

(a) 気分の障害
 気分とは持続的な基底をなす感情のことであり、情動のような強い短期的感情とは区別する。気分の障害には、病的爽快さである爽快気分と、抑うつ気分がある。

(b) 意欲・行動の障害
 そう状態では、自我感情の亢進のため行動の抑制ができない状態(行為心迫)、うつ状態では、おっくうで何も手につかず、何もできない状態(行動抑制)である。

(c) 思考障害
 思考の障害については統合失調症の記載を参照のこと。そうやうつの場合には、観念奔逸や思考制止等の思考過程の障害や、思考内容の障害である妄想が出現しやすい。

 また、そうまたはうつの病状がある病相期は、長期にわたる場合もあれば短期間で回復し、安定化する場合もある。病相期の持続期間は、間欠期に障害を残さないことが多いそううつ病の障害状態の持続期間である。間欠期にも障害状態を持つ場合は病相期の持続期間のみが障害状態であることにはならない。一般にそううつ病の病相期は数か月で軽快することが多い。

 病相期が短期間であっても、頻回に繰り返せば、障害状態がより重くなる。1年間に1回以上の病相期が存在すれば、病相期がひんぱんに繰り返し、通常の社会生括は送りにくいというべきだろう。

(3) 非定型精神病

非定型精神病の発病は急激で、多くは周期性の経過を示し、予後が良い。病像は意識障害(錯乱状態、夢幻状態)、情動障害、精神運動性障害を主とし、幻覚は感覚性が著しく妄想は浮動的、非体系的なものが多い。発病にさいして精神的あるいは身体的誘因が認められることが多い。経過が周期的で欠陥を残す傾向が少ない点は、統合失調症よりもそううつ病に近い。

なお、ICD―10ではF25統合失調感情障害にほぼあたる。この統合失調感情障害とは、統合失調性の症状とそううつの気分障害の症状の両者が同程度に同時に存在する疾患群を指す。

(4) てんかん

 てんかんは反復する発作を主徴とする慢性の大脳疾患であり、特発性および症候性てんかんに二大分される。症候性てんかんの発作ならびに精神神経学的予後は、特発性てんかんにくらべて不良のことが多い。てんかんの大半は小児期に年齢依存性に発病し、発作をもったまま青年・成人期をむかえる。

てんかん発作は一般に激烈な精神神経症状を呈する。多くの場合、発作の持続時間は短いが、時に反復・遷延することがある。発作は予期せずに突然起き、患者自身は発作中の出来事を想起できないことが多い。姿勢が保てなくなる発作、意識が曇る発作では、身体的外傷の危険をともなう。

発作に加えててんかんには、発作間欠期の精神神経症状を伴うことがある。脳器質性障害としての知的機能の障害や、知覚・注意・情動・気分・思考・言語等の精神機能、および行為や運動の障害がみられる。発作間欠期の障害は小児から成人に至る発達の途上で深甚な修飾をこうむる。それは精神生活の脆弱性や社会適応能力の劣化を引き起こし、学習・作業能力さらに行動のコントロールや日常生活の管理にも障害が現れる。てんかん患者は発作寛解に至るまで長期にわたり薬物治療を継続する必要がある。なお、「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症状については、それぞれ以下のとおりである。

(a) 発作
 てんかんにおける障害の程度を判定する観点から、てんかんの発作を次のように分類する。

イ 意識障害はないが、随意運動が失われる発作
ロ 意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
ハ 意識障害の有無を問わず、転倒する発作
ニ 意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作

(b) 知能障害
 知能や記憶等の知的機能の障害の程度は、器質性精神障害の認知症の判定基準に準じて判定する。

(c) その他の精神神経症状
 その他の精神神経症状とは、注意障害、情動制御の障害、気分障害、思考障害(緩慢・迂遠等)、幻覚・妄想等の病的体験、知覚や言語の障害、対人関係・行動パターンの障害、あるいは脳器質症状としての行為や運動の障害(たとえば高度の不器用、失調等)を指す。

(5) 中毒精神病

 精神作用物質の摂取によって引き起こされる精神および行動の障害を指す。有機溶剤等の産業化合物、アルコール等の嗜好品、麻薬、覚醒剤、コカイン、向精神薬等の医薬品が含まれる。これらの中には依存を生じる化学物質が含まれ、また法的に使用が制限されている物質も含まれる。

 なお、「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症状については、以下のとおりである。

(a) 認知症、その他の精神神経症状
 中毒精神病に現れる残遺及び遅発性精神病性障害には、フラッシュバック、パーソナリティ障害、気分障害、認知症等がある。

(6) 器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)

 器質性精神障害とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中毒(一酸化炭素中毒、有機水銀中毒)、中枢神経の感染症、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる精神疾患であって、従来、症状精神病として区別されていた疾患を含む概念である。ただしここでは、中毒精神病、精神遅滞を除外する。

 脳に急性の器質性異常が生じると、その病因によらず、急性器質性症状群(AOS)と呼ばれる一群の神経症状が見られる。AOSは多彩な意識障害を主体とし、可逆的な症状である場合が多い。AOSの消退後、または、潜在性が進行した器質異常の結果生じるのが慢性器質性症状群(COS)である。COSは、知的能力の低下(認知症)と性格変化に代表され、多くの場合非可逆的である。COSには、病因によらず、脳の広範な障害によって生じる非特異的な症状と、病因や障害部位によって異なる特異的症状とがある。巣症状等の神経症状、幻覚、妄想、気分の障害等、多彩な精神症状が合併しうる。

 初老期、老年期に発症する認知症も器質性精神症状として理解される。これらのうち代表的なアルツハイマー型認知症と血管性認知症を例にとると、血管性認知症は、様々な原因でAOS(せん妄等)を起こし、そのたびにCOSの一症状としての認知症が段階的に進行する。アルツハイマー型認知症では、急性に器質性変化が起こることはないので、AOSを見る頻度は比較的少なく、COSとしての認知症が潜在的に発現し、スロープを降りるように徐々に進行する。

なお、「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症状については、それぞれ以下のとおりである。

(a) 認知症
 慢性器質性精神症状の代表的な症状の一つは、記憶、記銘力、知能等の知的機能の障害である。これらは記憶、記銘力検査、知能検査等で量的評価が可能である。

(b) 高次脳機能障害
 高次脳機能障害とは、1)脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認され、2)日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害等の認知障害であるものをいう。ICD―10コードでF04、F06、F07に該当する。

F04:器質性健忘症候群(記憶障害が主体となる病態を呈する症例)
F06:他の器質性精神障害(記憶障害が主体でない症例、遂行機能障害、注意障害が主体となる病態を呈する症例)
F07:器質性パーソナリティおよび行動の障害(人格や行動の障害が主体となる病態を呈する症例)

(7) 発達障害(心理的発達の障害、小児(児童)期及び青年期に生じる行動及び情緒の障害)

 発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が、通常低年齢において発現するものである。ICD―10ではF80からF89,F90からF98に当たる。「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症状については以下の通りである。

(a) 知能・記憶・学習・注意の障害
<学習の困難、遂行機能障害、注意障害>
 知的障害や認知症、意識障害及びその他の記憶障害、過去の学習の機会欠如を原因としない学習(読みや書き、算数に関すること)に関する著しい困難さ、遂行機能(計画を立てる、見通しを持つ、実行する、計画を変更する柔軟性を持つこと)に関する著しい困難さ、注意保持(注意の時間的な持続、注意を安定的に対象に向ける)に関する著しい困難さを持つ場合が該当する。

(b) 広汎性発達障害関連症状
<相互的な社会関係の質的障害>
社会的場面で発達水準にふさわしい他者との関わり方ができず孤立しがちである、本人は意図していないが周囲に気まずい思いをさせてしまうことが多い、特に同年代の仲間関係が持てない等の特性が顕著に見られる場合が該当する。

<コミュニケーションのパターンにおける質的障害>
一方通行の会話が目立つ、冗談や皮肉の理解ができない、身振りや視線等によるコミュニケーションが苦手等の特性が顕著に見られる場合が該当する。

<限定した常同的で反復的な関心と活動>
決まったおもちゃや道具等以外を使うように促しても拒否する、他者と共有しない個人収集に没頭する等の限定的な関心や、おもちゃを一列に並べる、映像の同じ場面だけを繰り返し見る等の反復的な活動が顕著に見られる場合が該当する。

(c) その他の精神神経症状
 周囲からはわからないが、本人の感じている知覚過敏や知覚平板化、手先の不器用があるために、著しく生活範囲が狭められている場合も該当する。また、軽度の瞬目、咳払い等の一般的なチックではなく、より重症な多発性チックを伴う場合(トゥレット症候群)も該当する。

(8) その他の精神疾患

その他の精神疾患にはICD―10に従えば、「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」、「成人のパーソナリティおよび行動の障害」、「生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群」等を含んでいる。

(2) 能力障害(活動制限)の状態

 「能力障害(活動制限)の状態」は、精神疾患(機能障害)による日常生活あるいは社会生活の支障の程度について判断するものであって、「精神疾患(機能障害)の状態」とともに「障害の程度」を判断するための指標として用いる。なお、年齢相応の能力と比較の上で判断する。
 この場合、日常生活あるいは社会生括において必要な「援助」とは、助言、指導、介助等をいう。

(1) 適切な食事摂取や身辺の清潔保持、規則正しい生活
 洗面、洗髪、排泄後の衛生、入浴等身体の衛生の保持、更衣(清潔な身なりをする)清掃等の清潔の保特について、あるいは、食物摂取(栄養のバランスを考え、自ら準備して食べる)の判断等についての能力障害(活動制限)の有無を判断する。これらについて、意志の発動性という観点から、自発的に適切に行うことができるかどうか、援助が必要であるかどうか判断する。

(2) 金銭管理と買い物
 金銭を独力で適切に管理し、自発的に適切な買い物ができるか、援助が必要であるかどうか判断する。(金銭の認知、買い物への意欲、買い物に伴う対人関係処理能力に着目する。)

(3) 通院と服薬
 自発的に規則的に通院と(服薬が必要な場合は)服薬を行い、病状や副作用等についてうまく主治医に伝えることができるか、援助が必要であるか判断する。

(4) 他人との意思伝達・対人関係
 他人の話を聞き取り、自分の意思を相手に伝えるコミュニケーション能力、他人と適切につきあう能力に着目する。

(5) 身辺の安全保持・危機対応
 自傷や危険から身を守る能力があるか、危機的状況でパニックにならずに他人に援助を求める等適切に対応ができるかどうか判断する。

(6) 社会的手続や公共施設の利用
 各種の申請等社会的手続を行ったり、銀行や福祉事務所、保健所等の公共施設を適切に利用できるかどうか判断する。

(7) 趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加
 新聞、テレビ、趣味、娯楽、余暇活動に関心を持ち、地域の講演会やイベント等に参加しているか、これらが適切であって援助を必要としないかどうか判断する。