
震災後、農業や林業、水産業はどんなかんじかな?



福島県の農林水産業は、震災により、とっても重大な影響をうけたんだ。
影響は、大きく分けて、「地震・津波による被害」と「原子力災害による影響」の2つがあるんだ。

まず、一つ目の「地震・津波による被害」だけど、地震や津波によって、農業者の方が被害に遭われたり、農地、農業用施設・機械が壊れたり、流されてしまったために、農業ができなくなってしまったところがあるんだ。
例えば、地震では、田んぼや畑などにひびが入ったり、農道や農業用のダムが壊れたり、大型の園芸用のハウスが倒れるなど、農地や農業用施設に甚大な被害があったんだ。
津波でも、海岸近くの農地や水路、排水の施設が壊れたり、ハウスやトラクタなどが流されてしまった上、がれきやヘドロが農地に堆積したり、海水により土壌に塩分がたまってしまって、農業の再開に時間がかかっているんだよ。
林業では、地震で山腹が崩れたり、林道が壊れてしまったりしたんだ。
漁業では、津波で漁港や魚市場、水産加工の施設、そして漁船が被害にあったほか、漁場にがれきがたまってしまったりしたんだ。
被害の状況は、次のとおり。
区分 | 箇所数等 | 被害額(千円) | 備考 | |
---|---|---|---|---|
農業等被害 | 300件 | 2,110,000 | ||
農作物 | 101件 | 805,000 | ||
農業関係施設 | 199件 | 1,305,000 | ||
水産被害 | 26,377,000 | |||
水産関連施設 | 1,341か所 | 19,068,000 | ||
養殖水産物等 | 2,232トン | 670,000 | ||
漁船 | 873隻 | 6,639,000 | ||
農地等被害 | 4,358か所 | 230,258,000 | ||
農地 | 1,283か所 | 93,507,000 | A=5,991ha | |
水路 | 1,133か所 | 27,491,000 | ||
道路 | 894か所 | 2,966,000 | ||
ため池 | 745か所 | 23,611,000 | ダムを含む |
|
頭首工 | 59か所 | 3,125,000 | ||
揚水機 | 113か所 | 28,624,000 | ||
橋梁 | 4か所 | 84,000 | ||
湖岸堤防 | 2か所 | 3,000,000 | ||
農業集落排水施設等 | 105か所 | 22,431,000 | ||
海岸保全施設 | 20か所 | 25,419,000 | ||
林業等被害 | 735か所 | 2,362,000 | ||
森林 | 11か所 | 265,000 | ||
林産物等 | 39か所 | 146,000 | ||
林産施設等 | 52か所 | 1,162,000 | ||
林道 | 633か所 | 789,000 | ||
治山被害 | 113か所 | 14,253,000 | ||
林地 | 103か所 | 10,681,000 | ||
治山施設 | 10か所 | 3,572,000 | ||
合計 | 275,360,000 |

大型園芸ハウスの被災の様子

津波による農地の被災の様子

ため池堤体被災の様子

農業集落排水施設の被災の様子

次に、2つめの「原子力災害による影響」だけど、ポイントは3つあるんだ。

(1)避難区域の設定は、原発事故による避難区域の設定で、区域内の農地に立ち入れなくなったり、区域内の生産者が避難してしまったこと。
例えば、原発事故で避難指示のあった12市町村※1の総農家数は約14,600戸。震災前の県内総農家数 約96,600戸の約15.0% ※2になるんだよ。
※1 避難指示のあった(警戒区域・計画的避難区域・緊急時避難準備区域が設定された)市町村
田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村。
※2 一部の市町村では、避難区域の設定は一部地域に限られていたが、ここでは当該市町村の全体値で積算。

「(2)作付の制限や出荷制限」は、原発事故で広がった放射性物質の影響で、普通に生活できる地域でも、一部の地域では、お米の作付が制限されたり、野菜や果物、きのこなどについても、放射性物質の検査をして、基準値を超えてしまった場合には、出荷の制限がかかってしまったこと。
放射性物質の検査を継続したり、生産者の皆さんが作物が吸収しないよう対策をした結果、今は随分制限される地域も減ってきてるけど、一部ではまだ解除できていないんだ。
「(3)風評による影響」だけど、福島県で生産され、流通している農林水産物は、放射性物質を吸収しないよう対策をとり、きちんと検査をしている(※後述参照)から、安全なんだけど、それでも 一部の消費者(買う人)の中には、食べるのが不安なので“なるべく福島県産は買わない”っていう考え方の人もいるんだよ。
そのため、福島県産の農林水産物(商品)を店頭に置いてもらえなかったり、価格を低く抑えられたりしてしまっているんだ。
値段が安くなると、同じ数の農林水産物を売っても、売上げ(産出額)は減っちゃうよね。

以上のようなわけで、震災後、福島県の農林水産業の産出額(売上げ)は減少してしまったんだ。
でも、グラフをみるとわかるように、平成23年はとても下がってしまったけど、平成24年からは回復しつつあるようだね。
福島県の農林水産業の再生に向けて、生産者のみなさんは、関係者とともにがんばっているんだ。



※項目毎の四捨五入により年計と年の各項目の総和は一致しない。
出典:農林水産省 生産農業所得統計、生産林業所得統計報告書、海面漁業生産統計調査より作成

福島県の農林水産業の再生に向けてどんなことをしているの?



の4つのことをしているよ。

(1)生産基盤の復旧
まずは、壊れてしまった田んぼや畑、ダムや水路な、農道や林道、漁場・漁業生産関連施設等の復旧を進めているよ。
復旧に向けての取組は「農林水産業の復旧状況」のページをみてね。


(2)被災した農林漁業者への支援
○農業では、経営再開に向けて、農業者が共同で実施する復旧作業を支援しているほか、施設・機械等の導入に対する助成など、様々に支援しています。例えば、共同利用するカントリーエレベータや、園芸や畜産の施設のほか、新たな取組として、植物工場が作られたりもしているよ
○避難された農業者が、避難先で一時的に農業を始める場合にも、初期の経費など、支援しています
○林業では、林業者や木材産業事業者に対し、施設等の復旧・整備等を支援しています。森林の再生のため、森林整備と放射性物質の対策を一体的に推進しています。
○漁業では、沿岸漁業の操業再開に向けて、モニタリングの結果を踏まえながら、試験操業に取り組んでいます。
○農林漁業者が被った原発事故による損害に対する賠償が迅速かつ円滑に進められるように、支援しています。

(3)農林水産物の安全の確保
一方で、安全な農林水産物を出荷することが大前提になるよね。
そのため、農地や果樹の樹木の除染が行われてきているほか、農地にカリウム資材を入れるなど、作物が放射性物質を吸収しないよう対策がとられているよ。

表土の削り取り

反転耕
表層土と下層土を入れ替える

樹皮の洗浄
そして、安全性を確かめて、消費者に安心して食べてもらえるように、生産→製造→流通→消費の場面で、食品の放射性物質検査(モニタリング検査)を行っているんだ。
そして、その結果をHPなどを通じて、情報発信して、何が安全か分かるようにしているんだよ。「福島県農林水産物・加工食品モニタリング情報HP」、お米の全量全袋検査は「ふくしまの恵み安全対策協議会HP」
特に、主食であるお米については、県内でつくられた全ての玄米を検査する“米の全量全袋検査”を実施して、安全性が確認されたものには“検査済みラベル”を貼って販売するなど、安全管理を徹底しているんだよ。
食の安全・安心を確保に向けての取組は 「食の安全に関する取組」のページをみてね。